Architecture
細部にまでこだわった家づくりRCと木でつくった
四角い家
サイコロみたいな立方体
「最初のイメージは、芝生以外に何もない土地の上にコンクリートでできたサイコロみたいな立方体がぽんと置いてあるというようなものでした」と話すのはYさん。その立方体を「四角い家」とも表現して建築家に伝えたという。
Yさんのリクエストから現状のルービックキューブにも似た形状の家をデザインしたのは可児さんと植さんのお2人。「何度も模型をつくって提案をした中からルービックキューブのようにした案をすごく気に入っていただいた」(可児さん)そうだ。
RCに木をプラス
「コンクリートでできたさいころ」の中に木のボックスが挿入されているのはYさんのリクエストに応えてのもの。Yさんはコンクリート打ち放しの家に強いあこがれを持っていたが、一方で、冷たい印象ももっていたという。「そこに温かみが感じられる木をプラスしたらいい感じになるんじゃないかなと。勘ですけど」
現状の四角い家は設計案としては7案目。建築的合理性に、コスト、構造などを併せ考えて提案されたものだった。「Yさんの希望されている“四角い家”に必要最低限の屋内空間を入れています。圧迫感を感じさせないように空白というか余白を介して街とつながる方がいいだろうということで、RCのフレームの中に木でできた居住部分のボリュームが入っているというつくりになっています」(可児さん)
地面から浮かせる
住宅地の中でルービックキューブにも似た形状のY邸はそれだけで人目を引くが、もうひとつ周囲とは大きく異なる特徴がある。RCのフレームに収まった住居スペースが地盤面から浮いているのだ。
「計画では基壇状の敷地のどこに車を停めるかというのも大きなテーマでした。人の動きとの関係などを考えて基壇の一部を削って敷地の一番低いレベルに駐車スペースをつくりました。この配置を最大限に生かすために、最初は地面の上にどんと載せていたんですが、車の停め方と建物のあり方、街との距離感などを検討していくうちに地盤から1.4m浮かせるというところに落ち着きました」(可児さん)。基壇の一番低いところが道路から1.4m。そこからさらに1.4m浮かせて、段階的に街につながる現在のつくりになった。
細部にまでこだわる
「何回も模型をつくってもらってやり取りをした集大成がこの家で、めちゃくちゃ満足しているし、可児さんと植さんには自分の希望をすべてかなえていただいた」と話すYさん。我が家を「RCと木でできた四角い家」とする以外にも、随所にこだわりを発揮したという。
話をうかがった中で特に印象的だったのが、キッチンのシンクにまつわるエピソード。「本当はピン角が良かったんですが、実施図を見ると角の部分がR30mmだった。直線でピシッとなっているのが好きなので、これはないかなと」
そこで「業者さんが“こんなものを平気で納入していると思われたくない”という話になり」角をR10にできる研磨剤からつくってなんとか対応してくれたのだという。
「最高です」と何度も繰り返すほど我が家にほれ込んでいるYさん。「妥協することなくつくり上げた“最高の家”ですね」と振ると、「そうですね」と満面笑顔にして強く頷いた。
設計 建築設計事務所 可児公一植美雪
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 RC造
規模 地下1階地上2階
延床面積 126.22m2