Architecture

細部にまでこだわった家づくりRCと木でつくった
四角い家

100116_head

サイコロみたいな立方体

「最初のイメージは、芝生以外に何もない土地の上にコンクリートでできたサイコロみたいな立方体がぽんと置いてあるというようなものでした」と話すのはYさん。その立方体を「四角い家」とも表現して建築家に伝えたという。

Yさんのリクエストから現状のルービックキューブにも似た形状の家をデザインしたのは可児さんと植さんのお2人。「何度も模型をつくって提案をした中からルービックキューブのようにした案をすごく気に入っていただいた」(可児さん)そうだ。


鎌倉の海から数分の敷地に、周囲の住宅とはまったく異なる佇まいで建つY邸。敷地はサーフィンをするYさんが海に近いことなどから気に入って購入した。基壇のいちばん低い部分を切り崩して駐車スペースがつくられている(写真右端)。

RCに木をプラス

「コンクリートでできたさいころ」の中に木のボックスが挿入されているのはYさんのリクエストに応えてのもの。Yさんはコンクリート打ち放しの家に強いあこがれを持っていたが、一方で、冷たい印象ももっていたという。「そこに温かみが感じられる木をプラスしたらいい感じになるんじゃないかなと。勘ですけど」

現状の四角い家は設計案としては7案目。建築的合理性に、コスト、構造などを併せ考えて提案されたものだった。「Yさんの希望されている“四角い家”に必要最低限の屋内空間を入れています。圧迫感を感じさせないように空白というか余白を介して街とつながる方がいいだろうということで、RCのフレームの中に木でできた居住部分のボリュームが入っているというつくりになっています」(可児さん)


Y邸はRCのフレームに木でできたボックス状の居住部分が挿入されたつくり。
Y邸はRCのフレームに木でできたボックス状の居住部分が挿入されたつくり。
奥に1階ベランダ。右は2階へと上がる階段。
奥に1階ベランダ。右は2階へと上がる階段。


躙り口のような浴室への入口。サーフィン後に、下の外部シャワーと浴室の温水シャワーで砂を落としてからお風呂に入る。
躙り口のような浴室への入口。サーフィン後に、下の外部シャワーと浴室の温水シャワーで砂を落としてからお風呂に入る。
手前が2階の玄関ドア。その隣に外から直接浴室に入れる入口がある。Yさんの希望でつくられた“サーフィン動線”だ。
手前が2階の玄関ドア。その隣に外から直接浴室に入れる入口がある。Yさんの希望でつくられた“サーフィン動線”だ。


地面から浮かせる

住宅地の中でルービックキューブにも似た形状のY邸はそれだけで人目を引くが、もうひとつ周囲とは大きく異なる特徴がある。RCのフレームに収まった住居スペースが地盤面から浮いているのだ。

「計画では基壇状の敷地のどこに車を停めるかというのも大きなテーマでした。人の動きとの関係などを考えて基壇の一部を削って敷地の一番低いレベルに駐車スペースをつくりました。この配置を最大限に生かすために、最初は地面の上にどんと載せていたんですが、車の停め方と建物のあり方、街との距離感などを検討していくうちに地盤から1.4m浮かせるというところに落ち着きました」(可児さん)。基壇の一番低いところが道路から1.4m。そこからさらに1.4m浮かせて、段階的に街につながる現在のつくりになった。


1階は地盤面よりも1.4m浮いている。そのため、家の下の地面も庭となって子どもたちの遊び場に。
1階は地盤面よりも1.4m浮いている。そのため、家の下の地面も庭となって子どもたちの遊び場に。

いまどき珍しい“原っぱ”のように自由に草花が生えるY邸の敷地。
いまどき珍しい“原っぱ”のように自由に草花が生えるY邸の敷地。

細部にまでこだわる

「何回も模型をつくってもらってやり取りをした集大成がこの家で、めちゃくちゃ満足しているし、可児さんと植さんには自分の希望をすべてかなえていただいた」と話すYさん。我が家を「RCと木でできた四角い家」とする以外にも、随所にこだわりを発揮したという。

話をうかがった中で特に印象的だったのが、キッチンのシンクにまつわるエピソード。「本当はピン角が良かったんですが、実施図を見ると角の部分がR30mmだった。直線でピシッとなっているのが好きなので、これはないかなと」


1階はいったん2階に上がってから階段で下る。手前のベランダ部分には将来、木製の居住スペースを増築することも可能だ。
1階はいったん2階に上がってから階段で下る。手前のベランダ部分には将来、木製の居住スペースを増築することも可能だ。
鎌倉の海は左方向に位置する。
鎌倉の海は左方向に位置する。
1階ベランダの床にはYさんの希望でステンレス製のファインフロアという製品が張られている。
1階ベランダの床にはYさんの希望でステンレス製のファインフロアという製品が張られている。


1 階のフリースペース。右手に寝室がある。
1 階のフリースペース。右手に寝室がある。

「シンクの角はR 30が一般的なんですが、業者の人になんとかR 10でできないかと相談したらできませんと言われて」と話すのは可児さん。「ピン角にしたら溶接の跡が出てしまうので、念のためそのサンプルもつくってもらった。業者さんは“溶接の汚さを見たらあきらめてR 30で納得してくれるだろう”という気持ちでつくってくれたようですが、サンプルを見たYさんから“そうですかー、じゃあこのピン角でつくってください”という返事をもらってしまった」

そこで「業者さんが“こんなものを平気で納入していると思われたくない”という話になり」角をR10にできる研磨剤からつくってなんとか対応してくれたのだという。


2階の窓からは鎌倉の海が見える。
2階の窓からは鎌倉の海が見える。
 
「床から生えているよう」とYさんお気に入りの柱。こちらは希望通りピン角に。「邪魔だけど最高に気に入っている」と話す。
「床から生えているよう」とYさんお気に入りの柱。こちらは希望通りピン角に。「邪魔だけど最高に気に入っている」と話す。
キッチンから見る。
キッチンから見る。
Yさんがこだわったキッチンのシンク部分の角は一般的な30Rではなく10R。
Yさんがこだわったキッチンのシンク部分の角は一般的な30Rではなく10R。
手前部分から左手にある玄関まで土間が続く。風水からキッチンは北側に配置した。
手前部分から左手にある玄関まで土間が続く。風水からキッチンは北側に配置した。


「30 Rにするくらいだったら汚くてもピン角のほうがいいと思ったんですね。人生ってけっこう妥協することが多いですが、この家だけは妥協せずにつくりたかった」(Yさん)

「最高です」と何度も繰り返すほど我が家にほれ込んでいるYさん。「妥協することなくつくり上げた“最高の家”ですね」と振ると、「そうですね」と満面笑顔にして強く頷いた。


Y邸
設計 建築設計事務所 可児公一植美雪
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 RC造
規模 地下1階地上2階
延床面積 126.22m2