Architecture
まるで登山道!犬専用階段も3つの庭が心地よさを生む
愛犬との生活をとことん愉しむ
光、風、緑を取り込む、贅沢な庭
新しく開発された住宅地で、ひときわ目を引くN邸。木製ルーバーや軒裏の木材がしっとりと落ち着いた雰囲気を放っている。もともとマンション暮らしだったNさん夫妻が、戸建てに住むことを考えたのは、2匹目のパピヨンを迎えたときだった。「壁紙や巾木、家具などがワンコたちの餌食になって(笑)、ボロボロになってしまって。ワンコたちがのびのび自由に動き回れて、私たちも心地よく暮らせる家が欲しいと思い、一軒家を建てることにしました」(ご主人)。
設計を依頼したのは、佐久間徹設計事務所。「以前、吉祥寺に住んでいて、佐久間さんの事務所の前をよく通っていたんです。カフェのようなちょっと変わった佇まいが気になっていて、ここなら面白いアイディアを出してくれるのではないかと期待して、飛び込んだのです」(ご主人)。
佐久間さんが提案したのは、3つの庭に囲まれ、光や風をふんだんに取り入れた住まい。1階の内部からはどこにいても緑が目に入り、常に自然が感じられる。3つの庭によってできた余白により、「家が四角くないところがユニークで気に入りました」と奥さま。
南側に設けた最も大きな庭は、リビングとフラットに続くデッキテラスに。木製ルーバーで囲い、安全なスペースとなっているため、犬たちがリビングと自由に行き来し、元気に走り回っている。
小さな犬たちが気持ちよく暮らせるように
「ワンコたちが快適に暮らせるように」をコンセプトに家造りがスタートしたN邸。「パピヨンは小さいので、長期的に考えると、階段は腰に負担がかかってしまうんです。そこで、ワンコたちのためのスロープをつけたいと要望を出しました」(ご主人)。
N邸にはなんと、人用の階段の脇に、登山道のような犬専用のスロープが設けられている。スロープの傾斜角度を決めるのに、何度も佐久間さんがモックアップを作り、犬たちが上り降りしやすい角度や足がかりのピッチを検証したという。その苦労の甲斐があり、犬たちは1階、2階を軽やかに行き来し、ストレスなく快適な様子である。
ほかにも、犬たちへの配慮が満載。造り付けの家具は宙に浮かせ、犬たちが下を通り抜けられるようにしたり、コンセントは高めに設置し、犬たちがいだずらできないようにした。また、巾木を付けず、壁は塗装に。フローリングの床には滑らない塗装を加えて傷をつきにくくするなど、犬たちと気持ちよく暮らせる工夫を施し、マンション時代の悩みを解消した。「多少は家具や建具の角をかじられたりしますが、木だとむしろ味が出る感じがして、全く気になりませんね」と笑うご夫妻。犬たちのいたずらを大らかに楽しんで見守っているようだ。
人が集まる家
2階には、会計事務所を営むご主人の事務所スペースがある。「仕事中は邪魔しないワンコたちですが、私の集中が緩んでふーっと息をついたりすると、その気配を感じ取ったワンコたちが下から駆け上がってきて、“遊んでるの?遊んで!”って甘えてくるんですよ」と目を細めるご主人。奥さまも、「最初は、1匹で留守番させるのがかわいそうと思って2匹目を迎えたら、かわいそうなのが2匹になっちゃって(笑)。4つの目で見つめられて、ますます出かけられなくなりました」と、お2人とも2匹の犬たちにメロメロである。
もともと旅行や自転車が趣味だったご夫妻だが、泊まりでの外出はめっきり減り、いまではホームパーティを開くことが多いという。「家を建てるときには人を呼ぶ発想はなかったのですが、この1年で20回以上、人が集まっていますね(笑)」とご主人。家を建てる前から勤めていた奥さまの職場が偶然近所になったこともあり、勤務先の人々をはじめ、SNSで知り合った犬仲間、マンション時代の管理組合のメンバーなどが気軽に集まるという。
明るくフレンドリーなNさん夫妻に惹かれ、また造り付けのベンチや畳の小上がりスペースなど居場所がたくさんある居心地の良さも加わって、人が集まってくるのだろう。何か楽しいことがありそうとわくわくし、また訪れたいと思うお宅である。