Architecture

まるで登山道!犬専用階段も3つの庭が心地よさを生む
愛犬との生活をとことん愉しむ

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光、風、緑を取り込む、贅沢な庭

新しく開発された住宅地で、ひときわ目を引くN邸。木製ルーバーや軒裏の木材がしっとりと落ち着いた雰囲気を放っている。もともとマンション暮らしだったNさん夫妻が、戸建てに住むことを考えたのは、2匹目のパピヨンを迎えたときだった。「壁紙や巾木、家具などがワンコたちの餌食になって(笑)、ボロボロになってしまって。ワンコたちがのびのび自由に動き回れて、私たちも心地よく暮らせる家が欲しいと思い、一軒家を建てることにしました」(ご主人)。

設計を依頼したのは、佐久間徹設計事務所。「以前、吉祥寺に住んでいて、佐久間さんの事務所の前をよく通っていたんです。カフェのようなちょっと変わった佇まいが気になっていて、ここなら面白いアイディアを出してくれるのではないかと期待して、飛び込んだのです」(ご主人)。

佐久間さんが提案したのは、3つの庭に囲まれ、光や風をふんだんに取り入れた住まい。1階の内部からはどこにいても緑が目に入り、常に自然が感じられる。3つの庭によってできた余白により、「家が四角くないところがユニークで気に入りました」と奥さま。

南側に設けた最も大きな庭は、リビングとフラットに続くデッキテラスに。木製ルーバーで囲い、安全なスペースとなっているため、犬たちがリビングと自由に行き来し、元気に走り回っている。


日当たりの良い南側の庭。リビングの延長として使用している。光が通る雨戸を採用し、いつも明るい。
日当たりの良い南側の庭。リビングの延長として使用している。光が通る雨戸を採用し、いつも明るい。
深いグレーの外壁に木製ルーバーや軒裏の木があたたかみをプラス。落ち着いた印象の外観に。
深いグレーの外壁に木製ルーバーや軒裏の木があたたかみをプラス。落ちついた印象の外観に。
植栽の囲いは犬が粗相やいたずらをしないように取り付けた。ベンチとしても活躍。
植栽の囲いは犬が粗相やいたずらをしないように取り付けた。ベンチとしても活躍。


小上がりの畳スペースから見た北西の庭。風が通り気持ちよく、夏はお昼寝にもってこい。
小上がりの畳スペースから見た北西の庭。風が通り気持ちよく、夏はお昼寝にもってこい。
小上がりの東側には北東の坪庭が。造り付けのテーブルの下は掘りごたつ状になっている。
小上がりの東側には北東の坪庭が。造り付けのテーブルの下は掘りごたつ状になっている。
リビングからも北西の庭が眺められる。造り付けのベンチが特等席。
リビングからも北西の庭が眺められる。造り付けのベンチが特等席。


LDKの北と南に庭の植栽が楽しめる。光がたっぷり入り、風も通る。人にとっても、犬にとっても心地よい空間。
LDKの北と南に庭の植栽が楽しめる。光がたっぷり入り、風も通る。人にとっても、犬にとっても心地よい空間。

犬用ベッドで寝ているのが先住犬のマコトちゃん(3歳、メス)。ソファの上で寝ているあいちゃん(同)は3か月遅れで家族に加わった。「2匹合わせて、“愛と誠”です。最近、知らない人も多くてね(笑)」(ご主人)
犬用ベッドで寝ているのが先住犬のマコトちゃん(3歳、メス)。ソファの上で寝ているあいちゃん(同)は3か月遅れで家族に加わった。「2匹合わせて、“愛と誠”です。最近、知らない人も多くてね(笑)」(ご主人)

小さな犬たちが気持ちよく暮らせるように

「ワンコたちが快適に暮らせるように」をコンセプトに家造りがスタートしたN邸。「パピヨンは小さいので、長期的に考えると、階段は腰に負担がかかってしまうんです。そこで、ワンコたちのためのスロープをつけたいと要望を出しました」(ご主人)。
N邸にはなんと、人用の階段の脇に、登山道のような犬専用のスロープが設けられている。スロープの傾斜角度を決めるのに、何度も佐久間さんがモックアップを作り、犬たちが上り降りしやすい角度や足がかりのピッチを検証したという。その苦労の甲斐があり、犬たちは1階、2階を軽やかに行き来し、ストレスなく快適な様子である。

ほかにも、犬たちへの配慮が満載。造り付けの家具は宙に浮かせ、犬たちが下を通り抜けられるようにしたり、コンセントは高めに設置し、犬たちがいだずらできないようにした。また、巾木を付けず、壁は塗装に。フローリングの床には滑らない塗装を加えて傷をつきにくくするなど、犬たちと気持ちよく暮らせる工夫を施し、マンション時代の悩みを解消した。「多少は家具や建具の角をかじられたりしますが、木だとむしろ味が出る感じがして、全く気になりませんね」と笑うご夫妻。犬たちのいたずらを大らかに楽しんで見守っているようだ。


数度の検証を繰り返し完成した犬専用スロープ階段。人用の階段も通常より緩やかな段差になっている。
数度の検証を繰り返し完成した犬専用スロープ階段。人用の階段も通常より緩やかな段差になっている。
1階と2階の様子がわかるこの位置は犬たちに人気。
寒い時期は、あいちゃん自らブランケットを持ってくるのだそう。「“あい(愛)の巣”と呼んでいます(笑)」(ご主人)
1階と2階の様子がわかるこの位置は犬たちに人気。寒い時期は、あいちゃん自らブランケットを持ってくるのだそう。「“あい(愛)の巣”と呼んでいます(笑)」(ご主人)
階段の下が玄関で、右奥のリビングへと続く。リビングの引き戸は開けっ放しで、常に犬たちが1階、2階を自由に行き来できるようになっている
階段の下が玄関で、右奥のリビングへと続く。リビングの引き戸は開けっ放しで、常に犬たちが1階、2階を自由に行き来できるようになっている


犬がいたずらしないように、コンセントの位置を通常より高めに設定した。
犬がいたずらしないように、コンセントの位置を通常より高めに設定した。
玄関脇にはお湯も出る混合水栓を設置。散歩から戻ると、犬の足をここですぐに洗えて便利。
玄関脇にはお湯も出る混合水栓を設置。散歩から戻ると、犬の足をここですぐに洗えて便利。
リビングとフラットにつながるデッキテラス。ルーバーでしっかり囲まれているため、犬が部屋から飛び出しても安全。リビングの造り付けのテレビ台(左奥)は宙に浮かせて設置。
リビングとフラットにつながるデッキテラス。ルーバーでしっかり囲まれているため、犬が部屋から飛び出しても安全。リビングの造り付けのテレビ台(左奥)は宙に浮かせて設置。


人が集まる家

2階には、会計事務所を営むご主人の事務所スペースがある。「仕事中は邪魔しないワンコたちですが、私の集中が緩んでふーっと息をついたりすると、その気配を感じ取ったワンコたちが下から駆け上がってきて、“遊んでるの?遊んで!”って甘えてくるんですよ」と目を細めるご主人。奥さまも、「最初は、1匹で留守番させるのがかわいそうと思って2匹目を迎えたら、かわいそうなのが2匹になっちゃって(笑)。4つの目で見つめられて、ますます出かけられなくなりました」と、お2人とも2匹の犬たちにメロメロである。

もともと旅行や自転車が趣味だったご夫妻だが、泊まりでの外出はめっきり減り、いまではホームパーティを開くことが多いという。「家を建てるときには人を呼ぶ発想はなかったのですが、この1年で20回以上、人が集まっていますね(笑)」とご主人。家を建てる前から勤めていた奥さまの職場が偶然近所になったこともあり、勤務先の人々をはじめ、SNSで知り合った犬仲間、マンション時代の管理組合のメンバーなどが気軽に集まるという。
明るくフレンドリーなNさん夫妻に惹かれ、また造り付けのベンチや畳の小上がりスペースなど居場所がたくさんある居心地の良さも加わって、人が集まってくるのだろう。何か楽しいことがありそうとわくわくし、また訪れたいと思うお宅である。


2階の事務所スペース。「社長みたいで面白いでしょ」と、壁ではなく中央に向かって座るご主人。
2階の事務所スペース。「社長みたいで面白いでしょ」と、壁ではなく中央に向かって座るご主人。
事務所の前のみ、ベランダを広めにした。「小さな椅子を出してビールを飲むのが心地よいひととき」とご主人。
事務所の前のみ、ベランダを広めにした。「小さな椅子を出してビールを飲むのが心地よいひととき」とご主人。
ロードバイクをディスプレイ。天窓からの差し込む光がスポットライトのよう。
ロードバイクをディスプレイ。天窓からの差し込む光がスポットライトのよう。


デッキテラスでのバーベキューが好評。日差しが気になるときはタープを張れば快適!
デッキテラスでのバーベキューが好評。日差しが気になるときはタープを張れば快適!

パーティのときは、広いカウンターの上にケータリングの食べ物や持ち寄ったドリンクがずらりと並ぶ。カウンターの下は、犬のケージとトイレが収まっている。「小上がりでは酔っぱらって寝ている人もいます(笑)」(ご主人)
パーティのときは、広いカウンターの上にケータリングの食べ物や持ち寄ったドリンクがずらりと並ぶ。カウンターの下は、犬のケージとトイレが収まっている。「小上がりでは酔っぱらって寝ている人もいます(笑)」(ご主人)

N邸
設計 佐久間徹設計事務所
所在地 東京都小金井市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 97.93m2