Architecture
狭小敷地を最大限にどこにいても心地いい
“ミルクカートン”の中の開放感
![狭小敷地を最大限に どこにいても居心地がいい “ミルクカートン”の中の開放感 狭小敷地を最大限に どこにいても居心地がいい “ミルクカートン”の中の開放感](https://img.100life.jp/2020/01/27155639/200203miy-1080x480.jpg)
大胆な発想のプランに驚いた
「通勤に便利かどうかが大事だったので、狭くても都心がいいね、というのがふたりの一致した意見でした」。
新宿の高層ビルが間近に望めるエリアに、宮本さんご夫妻は南向きの土地を見つけて購入。
「敷地面積44㎡、北側斜線制限のある土地をどう活かしたらいいか、半年程かけて毎週打ち合わせを重ねました」。
設計を担当したのは一級建築士事務所「.8 / TENHACHI」の佐々木倫子さん。妻・直子さんとは小学校からの幼馴染で、建築士である夫・将毅さんとは大学院の同窓だったそう。
「私たちのキューピットでもあるんです(笑)。当初、出してもらった別の2社のプランはどちらも同じような図面だったのですが、彼女が出してきてくれたプランが驚きで」。
そのプランはまず、「ガレージなし、バルコニーなし、玄関なし」というもの。
「ガレージはなくてもいいし、バルコニーも、夜洗濯物を室内干しする私たちには合っていました。でも玄関なしというのは想定していませんでしたね(笑)」。
誕生したのはガルバリウム鋼板のファサードを持つ、牛乳パックのような箱型の“ミルクカートンハウス”。無駄を削ぎ落としながら、開放感と広がりが最大限に感じられる空間が、そのパックの中には広がっていた。
![ロフトを設けた2階のLDK。トップライトから明るい光が入る。壁は9㎜のラーチ合板を仕上げに張り、クリアなウレタン塗装を施した。](https://img.100life.jp/2020/01/27155429/200203miy-001-683x1024.jpg)
![ミルクカートン(牛乳パック)のような外観。正面には屋根からつなげてガルバリウム鋼板を斜め張りに。技術が必要とされる職人泣かせの仕上げ。](https://img.100life.jp/2020/01/27155436/200203miy-002-683x1024.jpg)
![室内の内装は白、木目、グレーで統一。隣家の視線を避けるため、LDKには横長の窓を少し高めの位置に設けた。壁のウレタン塗装は友人に協力してもらい、DIYで。家全体を3日間で塗装した。](https://img.100life.jp/2020/01/27155443/200203miy-003-1024x683.jpg)
ロフトを2カ所設けて4層に
玄関という明確な区切りのない1階は、土足のまま入ってもいいモルタル敷きの土間。そこに、白い箱に囲まれるように水まわりが設置されている。
「壁を設けるのではなく箱にすることで、現しの天井がそのまま奥まで続いていきます。それによって連続性が生まれ、奥行きが感じられるんです」。
その白い箱の上は、なんとベッドルーム。
「建ぺい率、容積率から計算すると、ここには65㎡までしか建てられないはずなんです。そこを71㎡迄取ることができたのは、延床面積から外すことができるロフトを設けた結果です」。
1階の水まわりの上と2階のLDKの上にロフトを設け、4層の構造にすることで広さを確保。階段は1階から北側を回り込んで2階に到達する設計で、斜線にかかる空間が活かされている。
「佐々木さんは、“空間に高低差の抑揚のある方がいい”ということと、“長くいる空間に贅沢な高さがあるといい”ということを提案してくれました。だから寝るだけの寝室は天井が低いのですが、それでもセミダブルベッドを2つ置ける広さがあるので快適です」。
土間やLDKの天井高に対して、ベッドルームはコンパクトに。メリハリのある空間が、無駄なく生活にフィットする。
![玄関を入るとすぐに現れる土間は、多目的な使用が可能。現在は、ニットデザイナーである直子さんの仕事場でもあり、スタジオとして貸し出すことも。](https://img.100life.jp/2020/01/27155452/200203miy-004-1024x683.jpg)
![水まわりを収める白い箱は、PORTER’S PAINTSのザラザラ感のある白い塗料を選び、ふたりで塗装した。貸しスタジオに対応するため、ロックのできるガラス戸を設置。](https://img.100life.jp/2020/01/27155459/200203miy-005-683x1024.jpg)
![白い箱の中にはゲスト用の洗面と、こちらの家族専用の洗面&ランドリー&バスルームのふたつのブースが。洗面台の天板はグレーのフレキシブルボードにウレタン塗装をかけた。](https://img.100life.jp/2020/01/27155506/200203miy-006-683x1024.jpg)
![木と白い壁に挟まれ2階へ。オランダ人のX線写真のアーティストALBERT KOETSIERの写真を飾る。](https://img.100life.jp/2020/01/27155513/200203miy-007-683x1024.jpg)
![階段にも天窓を設けて明るさを確保。右手がベッドルームへの入り口になっている。](https://img.100life.jp/2020/01/27155522/200203miy-008-683x1024.jpg)
![階段側からベッドルームを見る。手前のカーテンの奥には分電盤があり、収納としても使用。](https://img.100life.jp/2020/01/27155529/200203miy-009-1024x683.jpg)
![スポットライトが幻想的。ベッドに入る時間に差があるためロールカーテンを。](https://img.100life.jp/2020/01/27155535/200203miy-010-1024x683.jpg)
![照明選びは、佐々木さんにも相談して特にこだわった。こちらはヨーロッパから取り寄せたPLUMEN。](https://img.100life.jp/2020/01/27155542/200203miy-011-1024x683.jpg)
![コストカットのため、木釘と丸棒の組み合わせで取り付けた階段の手すり。これも大工さん泣かせだったそう。](https://img.100life.jp/2020/01/27155550/200203miy-012-1024x683.jpg)
白、木目、グレーで空間を統一
LDKに到達すると、トップライトから落ちてくる光に包まれる。壁材のラーチ合板の木目と、キッチンや収納棚の白、光に囲まれたナチュラルで居心地のいい空間が広がっている。
「リビングが小上がりになっているのも落ち着けますね。ここでゴロゴロしている頻度が高いです(笑)。小上がり下には収納や本棚も設けてくれました」。
小上がりがあることで、キッチン台からテレビ台へと天板が同じ高さでつながる。
「完全な造作だとコストがかかるので、引出しや扉、棚板などをIKEAで揃えて、それに合わせて設計してもらいました。クッキングヒーターや水栓などもパーツを選んで、はめ込んでもらいました」。
設備もインテリアも、セレクトには佐々木さんからの指令があったそう。
「白、木、グレーの3色で統一したい、と。だからオレンジだったIDÉEのソファーはグレーに張り替え、水栓も探しまわってやっと見つけたBRIZOの白を取り付けました(笑)。でも感覚が似ているので、私たちも全面的に信頼しているんです」。
小上がりから階段をあがると第二のロフトが。ここは将毅さんが籠って過ごすことが多い場所。
「狭小住宅にもかかわらず、色んな居場所があるのがうれしいですね。どこで何をするかというのは決めていません。その時々の気分で場所を変えられて、どこにいても気持ちがいい。贅沢な空間ができたと思っています」。
![キッチンから小上がり側のテレビ台まで、フレキシブルボードにウレタン塗装をした天板がひとつながりに。オーダーして造った白い鉄製の片持ち階段でロフトにあがる。](https://img.100life.jp/2020/01/27155558/200203miy-013-1024x683.jpg)
![IKEAの引出しに合わせて設計したキッチン。“この空間のイメージにぴったりだった”toolboxの吊り戸棚も採用。](https://img.100life.jp/2020/01/27155605/200203miy-014-1024x683.jpg)
![ロフトには愛読するマンガを揃え、リラックスタイムを楽しんでいる。「暖かいので、冬は特にお気に入りの場所です」。](https://img.100life.jp/2020/01/27155613/200203miy-015-1024x683.jpg)
![ロフトからリビングを見る。たくさん持っている本を収納するスペースも工夫してもらった。ソファーはIDÉEのAO SOFA。](https://img.100life.jp/2020/01/27155620/200203miy-016-1024x683.jpg)
![佐々木さんおすすめmenuのBollard Lamp。コードの使い方でライトの向きが変えられる。](https://img.100life.jp/2020/01/27155628/200203miy-017-1024x683.jpg)
![木口を見せるデザインが特徴的。モダンさの中に自然な風合いが感じられる。](https://img.100life.jp/2020/01/27155635/200203miy-018-1024x683.jpg)
![将毅さんは病院の設計を担当する建築士。休日は自転車に乗り、ふたりで都内のあちこちを回るのが楽しみだそう。“色と木口の出ているところが空間にぴったりだった”ダイニングテーブルと、椅子はHAYのもの。小上がり下には本棚も設けられている。](https://img.100life.jp/2020/01/27155422/200203-019-1024x683.jpg)
宮本邸
設計 一級建築士事務所「.8 / TENHACHI」
所在地 東京都渋谷区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 71㎡