Architecture
スタイルの違う2軒の家ひとつの敷地に建つ
モダン邸宅と校倉造のアトリエ
そして次に同じ敷地内に建てたのが、角材を積み上げて作った校倉造のアトリエ。その後、3軒目の家を建てるのだが、その高床式の9坪ハウスが以前にここで紹介させてもらった建物だ。
大きなモダン建築と、小さな校倉造の家。
「家ってなんだろう、モダン建築とはどういう意味を持つものなのか、この別荘を設計し、深く考えるようになりました。そして、図面を引いて設計する建物ではなく、大工さんと一緒にカラダでサイズ感を感じながら家を作ってみたくなって、同じ敷地内に校倉造の家を建てたんです」
もちろんクライアントに提案する時には、きちんと図面を引いて、模型を作る。けれど、自分のための家は、材料を発注するために簡単な図面を一枚引いただけで、あとは角材を一本一本積み上げ、カラダで家作りを体感しながら作っていったのだそうだ。
窓をすべて開け放てば、森の中にいる気分に。
フラットルーフの家の建具はすべて引き戸になっている。テラス側と、反対側の玄関側の引き戸を開け放てば、リビングにいても森の中でタープの下でくつろいでいる気分を堪能できる。
外回りはグルリと回廊で結ばれ、回廊のウッドデッキの下は収納スペースになっている。庭仕事に使うものや、車のタイヤなどは、ここにすっきりと収めることができる。
「父親がリタイアして引っ越してくることが決まり、9坪ハウスへと移りました。敷地内別居ですね。ただ、父親は不在のことも多く、いい季節になると友人が数泊、のんびりしにきますよ。うちらもお風呂の時にはこちらを使わせてもらっています」
杉材の角ログを使った校倉造のアトリエ。
校倉造のアトリエは、地元で生産された杉の角ログが使われている。
「4寸角の角材は、日本で多く流通しているサイズです。益子の大工は、寸・間といった日本の単位を使います。この単位で家を建てると、古い引き戸や窓ガラスなど、日本の建具を使いやすいというメリットもあります」
この家は、99%が木材でできているそうだ。
「家は、雨風をしのいで、家族や生活を守れるものであればいいと思う気持ちもあるんです。僕の子どもたちの世代が、この家を大事に使い続けてくれればうれしいですが、もし不要であれば、負荷をかけることなく朽ちて、この土地に戻っていけるようなものであればいいなと思っています」
いずれ自然に還ってゆく……。そんな儚さがあるから、この家がとても美しいのかもしれない。