DIY
ハンドメイドへのこだわり長屋門をDIYした仕事場と、
手づくりの暖かさの残る暮らし
武家の長屋門は漆喰壁だけれど、民家は板張りが基本。相馬宅の長屋門は板張りで、屋根は藁葺きだったが、20年ほど前に立派な瓦葺き屋根に葺き替えられたそうだ。相馬宅は、その長屋門を通った先に、家族で暮らす母屋がある。
ここに越してきたのは6年前。広い仕事場を確保するために、千葉の住宅街から、紀恵さんの実家の近くで住まいを探したのだそう。
「2007年の夏に、実家から通いながら、仕事部屋を作り、母屋の修繕を始めました。けれど考えていたよりも時間がかかってしまい、未完成のまま2008年の春に生活を始めました。住みながらだと、さらに大工仕事に時間がかかってしまうんですよね。靴作りの仕事と住まい作りの両立は、なかなか難しかったです」と笑う。
オーダーを受けてから靴を送り届けるまで、3年もかかっていたことがあったそうだ。
「もちろん、3年かかりますが大丈夫ですか?と伺いますが、それでもお待ちいただけると返事をしてくださるお客様はほんとうにありがたいです。今は1年待ちまで改善されました。それでも長いですけれども……」
手仕事の暖かさを大切にする暮らし。
相馬家のライフスタイルには、どこか懐かさを覚える。昭和30年代から40年代くらいの、まだ手づくりの暖かさが残っていた時代。
「昔はあたり前だった、手でモノを作って売る、そんな生活をしたいんです」
大量生産のモノに簡単に頼らず、ハンドメイドへのこだわりを大切にしながら丁寧に暮らしている。
収納には、大小様々な行李(こうり)が使われている。洋服の収納はもちろん、仕事場の細々とした道具の整理にも行李が使われている。なんと、バイクの荷台にも荷物入れも行李。
「行李は骨董市などで手に入れています。使い勝手のいい小さい行李のほうが値段は高めですね」
相馬さんの靴づくりは2000年に始まったそう。靴の底は、自転車の古タイヤが使われている。ブリキのチリトリも手仕事で作った。仕事場も相馬さんの手づくり。
「仕事場の床材は、なんとヒノキです(笑)。最初に作り始めた場所だったので、高い材料を贅沢に使えました。小窓や外壁は大工さんにお願いしましたが、あとは自分で作りました」
「幸いなことに、地震の影響はさほどではなかったです。瓦も落ちませんでした。ただ残念なことに、今も放射能には悩まされています。ガンマ線測定器を買って、日常的に測っています」
相馬家で一番困っているのは、ストーブや風呂を焚くための薪の入手だそうだ。
「外に積んであった薪を燃やした灰はかなり高い数値が出てしまったので、それからは安心して燃やせる薪を探しています。今年は外国産の製材屑を仲間と買ってみました。数日前にその薪が届いたのでさっそく燃料にしたのですが、薪を使うと暖まり方が違いますね。灯油ストーブよりずっと暖かいです」
人懐っこくて取材スタッフの後をずっとついてきた猫のミケちゃんも、薪ストーブの前で幸せそうに丸くなっていた。