DIY

土間のある家手づくり家具のぬくもりと
ユニークな土間のある暮らし

土間のある家 手づくり家具のぬくもりと ユニークな土間のある暮らし

マンションから戸建に転じた気持ち

中央線の主要駅からモノレールが伸びた先にある、緑が多くのどかなエリア。大通りから少し入った閑静な場所に、家具職人の鈴木良彦さんと妻の章子さんが暮らす家はある。

「最初は戸建を買うつもりはあまりなくて、中古のマンションを買って好きなようにリノベーションしようと思っていました」と話す鈴木良彦さん。結婚して約2年、それまで住んでいた古いマンションからの引っ越しを考え、軽い気持ちで不動産屋に行ったそう。色々調べるうちに「マンションを買っても管理費などのコストがずっとかかる。それに土地を持っておけば、将来子どもが生まれたら財産として残せるかなあ」と戸建に気持ちがシフトしてきたそう。妻の章子さんは「そのとき見ていた物件の間取りに、あまりワクワクしなかったというのもあります」と話す。

色々回って土地を探した末、夫婦それぞれの通勤が可能で、落ち着いていながら新しさや今後の発展が感じられるこの地に家を建てることを決めたそうだ。「南側に影になるような建物がなくて、日当りが確保できるのも気に入ったポイントです」(良彦さん)。


大きな掃き出し窓から明るい日差しが入る土間のリビングダイニング。奧の壁にはチョークで落書きが出来るチョーク塗料を塗った。色はクレイブルー。ブラインドのオレンジとのコントラストが鮮やか。
大きな掃き出し窓から明るい日差しが入る土間のリビングダイニング。奧の壁にはチョークで落書きが出来るチョーク塗料を塗った。色はクレイブルー。ブラインドのオレンジとのコントラストが鮮やか。

絶対欲しかったのはのびやかな土間

そしてものづくりを生業とする家具職人のこだわりが詰まった家づくりが始まる。良彦さんがまず絶対条件として出したのは、土間をつくることだった。
「外みたいな中、っていうんでしょうか。カフェやガレージのように屋内にいながら外とのつながりを感じられる場所が欲しかったんです」。

建設会社から最初に提案されたプランでは、土間は冷えるから区切った方がいいと言われ、1階の1部屋だけが土間になっていたそう。「そうではなく、ワンルームみたいな空間に広々とした土間をつくりたかった。打合せを何度も重ねて、今の形になりました」。玄関から続く広い土間をリビングダイニングにして、一段あがったキッチン、様々な用途に使えるセカンドリビングを設けた。「当初は1階部分全部が土間でもいいぐらいに思っていたのですが、今の形にしたことで段差によるリズムが生まれてよかったですね」。

こだわって完成させた土間はご夫婦のお気に入りの場所に。「少しぐらい汚れても気にならないのもいいですよ」(章子さん)。


階段上から土間を見る。屋外と屋内が融合した独特の空間。
階段上から土間を見る。屋外と屋内が融合した独特の空間。
自邸のために良彦さんがデザインしてつくったソファー。腰が当たる部分にふくらみをつけているので座り心地抜群。
自邸のために良彦さんがデザインしてつくったソファー。腰が当たる部分にふくらみをつけているので座り心地抜群。
多肉植物を眺めながら一服。天井には換気装置が。
多肉植物を眺めながら一服。天井には換気装置が。


このままカフェが出来そうな空間の1階。
このままカフェが出来そうな空間の1階。

家具職人の夫による贅沢オーダーメイド

章子さんのゆずれない願いは、キッチンのカウンタートップを木にすることだった。つくったのは、もちろん良彦さん。「引き渡しの時は人工大理石のカウンタートップだったのを取り払って自作しました。仕事で無垢材のキッチンカウンターをつくることはなかったのですが、自分の家で実験台のようにやってみて、使いながら経年変化を見ていこうと思いました」と良彦さん。

鈴木邸には他にも、良彦さんがつくったダイニングテーブル、ソファ、食器棚等が配され、ご夫婦の暮らしぶりにぴったり寄り添う家具たちが居心地のよさを与えてくれる。

さらにアンティークの小物や2人で手をかけて育てたグリーンなど、好きなものに囲まれた暮らしを満喫している。


黄色を取り入れた明るい印象のキッチン。この家のカラーコーディネートの決定権は章子さんにあるそう(笑)。キッチンカウンタートップには章子さんが好きなアメリカンチェリーを用いた。
黄色を取り入れた明るい印象のキッチン。この家のカラーコーディネートの決定権は章子さんにあるそう(笑)。キッチンカウンタートップには章子さんが好きなアメリカンチェリーを用いた。
夫婦でコーヒーを楽しむ。キッチンカウンター前面には自分たちで白いブリックレンガを貼った。
夫婦でコーヒーを楽しむ。キッチンカウンター前面には自分たちで白いブリックレンガを貼った。
セカンドリビングには良彦さんが見習いの頃に作った思い出のソファーテーブルが。脚には“挽物”という技法を用いている。
セカンドリビングには良彦さんが見習いの頃に作った思い出のソファーテーブルが。脚には“挽物”という技法を用いている。
2階の一室の壁には小さい額が沢山。夫婦揃ってなぜか好きで、見つけるとついつい買ってきてしまうそう。
2階の一室の壁には小さい額が沢山。夫婦揃ってなぜか好きで、見つけるとついつい買ってきてしまうそう。

自らの手をかけて住空間を進化させる

家を建てて約半年。家具やお気に入りの小物を少しずつ揃えてきた。「マンションに住んでいた時に比べて、家に帰ってくるのが断然楽しみになりました」と2人は声を揃えていう。

「実はまだまだ手をかけたいんです。次は外にデッキをつけて土間とセカンドリビングを行き来できるようにしたい。本棚やCDラックも作らないと」と楽しそうに話す良彦さん。生まれたてのこの家は、これから先も夫婦の愛情を受けて育っていくのだろう。


重厚なメタリックのスイッチはスラップトーン社製。普通のスイッチだったのを付け替えた。
重厚なメタリックのスイッチはスラップトーン社製。普通のスイッチだったのを付け替えた。
リビングの一角で癒しを与えてくれる多肉植物たち。手前の木の植木鉢は家具工房のオリジナル製品。
リビングの一角で癒しを与えてくれる多肉植物たち。手前の木の植木鉢は家具工房のオリジナル製品。
ネットで見つけたアンティークのジュエリーボックス。塗られていた緑色の塗料を剥がしてリメイク。
ネットで見つけたアンティークのジュエリーボックス。塗られていた緑色の塗料を剥がしてリメイク。
愛車はワーゲンのクラシックカー。修理がつきもので日によって調子が違うが、手をかけて乗るのが楽しいそう。
愛車はワーゲンのクラシックカー。修理がつきもので日によって調子が違うが、手をかけて乗るのが楽しいそう。


家具工房オリジナルの子ども用椅子。
家具工房オリジナルの子ども用椅子。

こちらの食器棚は元は古い桐箪笥。古き良きレトロさは残しつつ、使い勝手を熟考して良彦さんがリメイク。
こちらの食器棚は元は古い桐箪笥。古き良きレトロさは残しつつ、使い勝手を熟考して良彦さんがリメイク。
良彦さんが働く「注文家具工房ハンマーヘッド楽具」では、無垢材の優しい質感を生かしたオーダーメイド家具などを製作。
良彦さんが働く「注文家具工房ハンマーヘッド楽具」では、無垢材の優しい質感を生かしたオーダーメイド家具などを製作。