DIY
美術作家のスタイルのある暮らしアトリエ→台所→風呂小屋と、
広がる住まいに完成図はない
「近隣に気兼ねすることなく電動工具が使える場所を探していたら、ここに辿り着きました。それでも一番近いお隣の家の犬の遠吠えが聞こえますから、僕の使う工具の音も聞こえているでしょうけれど、問題はないようです(笑)」
東京から住まいとアトリエをこの場所に移したのが1999年。700坪ある土地に、平屋のプレハブ小屋を建てた。その後、キッチンの建物、作業小屋、風呂の小屋と、仲田さん自らの手で必要に応じて小さな小屋を建て、敷地の中にそれらが点在する今の姿になっている。
このアトリエから生活がスタート。
「家を建てる土地は実家のある那珂市で探しはじめたのですが、探していくうちにどんどん山のほうに足が向いて、この場所の雰囲気が気に入って結局ここに決めました。木を切り、親戚にブルドーザーで整地してもらいました。最初に建てたのが、今はアトリエとして使っているこのプレハブの建物です」
鉄骨組の平屋のプレハブを業者に立ててもらった後の増築や改築は、すべて仲田さん自ら金づちをふるったもの。
「その当時は寝袋で寝て、焚き火で炊事をし、水は山のふもとから汲んでくる生活でした。荷物をどかしながら断熱材と床を貼るのは大変でしたね(笑)」
次に建てたのが台所小屋。
アトリエを建ててから、2年半たって井戸を掘る。飲料用には適さない浅井戸だけれど、洗い物には充分に使える。井戸から台所小屋に水道管を敷き、ここで炊事ができるようになった。
「料理の煙がアトリエにこもるのが嫌で、台所を作ろうと思い立ったんです。最初はドアもなかったのですが、大きな庇を作って今の形になっています」
作業小屋と風呂小屋。
3番目にできたのが溶接などの作業をするための小屋。奥にはストックルームもある。そして1年半前にできたのが風呂小屋だ。
「風呂は家の近くの温泉施設に行ってましたが、東日本大震災で被災した施設が相次いで温泉難民になってしまって……。やはり風呂も家にあったほうがいいな、と(笑)」
初めてブロックを積み、カマドを作ったそうだ。焚き口がある分、床が上がり、眺めのいい風呂ができあがった。
一番新しい母屋。
昨年、長男の安里くんが誕生。住居兼アトリエとして使っていた場所には作品があるのはもちろん、床に鉄片やクギが落ちていることもあるので、ここでの子育ては大変だろうと、新たに母屋を建てることを決意。
「この建物だけは益子市の知人の大工さんと一緒に作りました。けれど母屋に水場がないのはやはり嫁には不便なようで、テラスがある場所を台所に変えようかとも考えています」
同時に、今使っている浅井戸では水質、水量に限りがあるので、水道水を引きたいとも考えているそう。
「水道管が通っている場所から家まで100m近くあります。その距離を自費で引くとなると金額がかさみそうなので、自作のパイプでなんとかならないか思案中です」
日々変化していく仲田さん宅がこれからどうなっていくのか、ご本人もわからないという。“好きじゃないものは置きたくない”という仲田さんならではのこだわりのセンスで作られた空間が、今後どんなふうに変わっていくのかとても楽しみだ。