Family
海辺の家で紡がれる家族の時間生活を区切る扉は最小限
家族が伸びやかにつながる家
![海辺の家で紡がれる家族の時間 生活を区切る扉は最小限 家族が伸びやかにつながる家 海辺の家で紡がれる家族の時間 生活を区切る扉は最小限 家族が伸びやかにつながる家](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor.jpg)
「海の近くの家」が欲しかった
海と山の自然に囲まれ、どこかしらゆったりとした時間が流れる神奈川県葉山。堀金伸一郎さん・久美さん夫妻は、2012年にこの地に家を建てた。「ふたりとも海辺の出身ではないのですが、家を建てるなら海の近くがいいなあと思っていたんです」とご夫妻は話す。
伸一郎さんはフリーの映像カメラマンで、海外ドキュメンタリーやCF撮影を手がけ、世界中を飛び回る日々。久美さんもテレビ番組制作の仕事をしており、夫妻揃ってクリエイティブで多忙な仕事をしているが、家に帰ってくると心からリラックスできると言う。8歳になった息子の拓(ひらく)君も、近所に住む子ども達と外で遊んだり、家の中を駆け回ったり、伸び伸びと成長している。
「私は都心に電車通勤しているのですが、片道1時間の車内は、行きも帰りもちょうどいい仕事の時間になりました。座ってパソコンを開いて頭を整理するんです。この家に引っ越した時に、帰りはちょっと贅沢してグリーン車を使うぞ!と決めたんですよ(笑)」と話す久美さんの言葉に、仕事と住居の良い関係を考えさせられる。
![陽の光と風が心地よい1階のダイニングキッチン。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_001-700x467.jpg)
![ウッドデッキに座れば、時間を忘れてゆったりとくつろげる。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_002-350x233.jpg)
![2階ベランダに出れば、葉山の太陽と風を心地よく感じる。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_003-350x233.jpg)
扉はトイレとバスルームの2つのみ
「大きな吹き抜けで家全体がつながっていること、扉がトイレとバスルームの2カ所にしかないことがうちの特徴です」と話す久美さん。堀金邸に足を踏み入れてまず感じるのが、広い空間がもたらす開放感、そして清々しい陽の光と風だ。「1階も2階も南側に大きな窓を設けているので、日差しと風がふんだんに注ぎ込んで、季節やその日の天候を感じ取れるんです」(伸一郎さん)。
2階は吹き抜けの周りを廊下でぐるりと回れる構造で、ベッドを置いたスペースと多目的スペースが両端にある。1階には6畳の畳の間もあるが扉はなく、堀金邸には「個室」と呼ぶものがひとつもない。
「ここはテレビを見る部屋、あっちは子どもが勉強する部屋、と部屋で生活を区切りたくなかったんです。寝る場所も、2階のベッド、畳の間、多目的スペースの3カ所から日々の気分によって選んでいます」(伸一郎さん)。堀金邸ではテレビさえも移動式。各自が見たい場所に持っていって観るというスタイルだ。
![2階の端のベッドを置いた寝るスペース。ここにも扉はない。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_007-350x525.jpg)
![空間がひと続きなので、オーディオを置いた1階から、家全体に音楽が流れる。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_010-350x525.jpg)
無垢の木+アイアン+漆喰
堀金邸の床は全て無垢材。肌触りがよく温かいため、冬でも裸足で過ごすことが多いという。「湿気や温度によって木が収縮・膨張して、板と板の間の隙間が大きくなったりもします。ですが、床が生きているこの感じも自然素材の家ならではかなと思って、家族で楽しんでいます」と伸一郎さんは笑う。
無垢材に見事に調和しているのが、黒いアイアンの階段の手すりや扉の取っ手。鉄ではあるが無機質ではなく、温かみすら感じるこれらのアイアンワークは、藤沢の工房につくってもらったそう。「紙粘土で見本をつくったりイラストを書いて、僕の頭の中にあったイメージを形にしてもらいました」(伸一郎さん)。
職人気質の伸一郎さんは手先が器用。それが最大限に発揮されたのが、自ら塗った漆喰壁だ。「壁全体を漆喰にしたかったのですが、職人さんにお願いするとかなり費用が高くなってしまう。つい『僕がやります』と口がすべってしまって(笑)」と話す伸一郎さん。材料、道具は自分で揃え、塗り方も独学だという。作業は2カ月以上にも及んだ。「時期は真冬。寒い中1人で黙々と作業をしました。よーく見ると、最初の方に塗った部分は粗かったりもするのですが、とても気に入っています」(伸一郎さん)。湿気を自然にコントロールしてくれる漆喰壁のおかげで、堀金邸では夏場のエアコンが必要ないそうだ。
無垢の木・アイアン・漆喰がつくりあげた空間に彩りを添えるのは、仕事や旅行で世界の国々を訪れ、連れて帰ってきた異国の小物たち。一つ尋ねれば思い出話が返ってくるアイテムが、家のあちこちにさり気なく置かれている。
![見た目も楽しい郵便ポストの裏側。郵便物はたまると押し出されて下に落ちるしくみ。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_013-350x233.jpg)
![鉄の質感と柔らかい曲線が印象的な階段の手すり。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_014-350x233.jpg)
![くぐり戸の向こう側は畳敷き。伸一郎さんいわく「くぐり戸のアールのついた部分の漆喰塗りが特に難しかった」。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_015-700x1050.jpg)
![裸足でいるのが気持ちいい堀金邸。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_016-350x233.jpg)
![家族旅行で行ったバリ島で買った鳥の形の凧。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_017-350x233.jpg)
![思い出がつまった異国の置物たち。久美さんはテレビ番組の取材で、南米やアフリカなど世界各地を旅したそう。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_018-350x233.jpg)
![伸一郎さんの実家にあった古い振子時計。「音がうるさいのと時間がなかなか合わないので、動かさずインテリアにしてしまいました(笑)」(伸一郎さん)。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_019-350x525.jpg)
![壁にうつる影も楽しめる真っ白な漆喰の壁。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_020-350x233.jpg)
![CDラックの上の帽子はモンゴルから、ピアノの上の絵はタンザニアからやってきた。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_021-350x233.jpg)
![三角形の収納棚は、伸一郎さんの実家で使われていたもの。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_022-350x525.jpg)
![玄関先に置かれた謎の置物は、伸一郎さんが昔から持っていたそう。「近所の子どもたちが面白がってます」(久美さん)。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_023-350x233.jpg)
朝が待ち遠しい家
伸一郎さんの毎朝の習慣はヨガとジョギング。「朝日を浴びながらヨガをしたり、海岸沿いを走ると最高に気持ちがいいんです。楽しみながら続けられているのは、葉山の地とこの家のおかげかもしれませんね」と教えてくれた。
葉山に家族が伸び伸びと暮らせる家を建て、もうじき4年になる堀金家。「8歳の息子が自分の部屋を欲しがり始めたので、そろそろどこかを区切りますかね」と、久美さんはこの家の「これから」を考え始めていた。
![南側に張り出した大きなウッドデッキ。驚くことにこのウッドデッキと左に見えるウッドフェンスも伸一郎さんの自作。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_024-700x467.jpg)
![デレク・ジャーマン(イギリスの映画監督・作家・園芸家)がつくったドライな感じの庭が好きだという伸一郎さん。「それをイメージして植栽をえらびました」。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_025-350x233.jpg)
![2階の吹き抜け周りにつくりつけられた書架は、家族3人でシェアして使う。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_026-350x233.jpg)
![果物は常に欠かさない。「近所の方からもらうことも多いんです」(久美さん)。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_027-350x233.jpg)
![吹き抜けに下げたのは、存在感のある大きめの裸電球。](https://img.100life.jp/2015/12/151214_hor_028-350x233.jpg)