Family
家族のライフステージを視野にフレキシブルに住まう
現代版・縁側のある暮らし
日当たりのよいあたたかな家
「もともとは祖父母が住み、母が育ったところなんです」。飯田朋子さんがご主人の晃弘さんと長女の夏乃香(かのか)ちゃん、次女の南々星(ななせ)ちゃんとともに暮らすのは、都心からも近く、早くから東京のベッドタウンとして発展してきた地。祖父母が亡くなるまで3年ほど同居していた家の隣のスペースに、昨年4月、家を建てた。「昭和の古い家だったため、天井が低く、暗くていつも電気をつけていました。冬は寒くて、白い息が出るほどでした」と笑う晃弘さん。新築するにあたってのご夫妻の希望は、“日当たりの良いあたたかな家”だった。
1階のリビングダイニングは、南側の大きな開口部と吹き抜けにより、採光たっぷりの開放的な空間に。冬の陽射しもさんさんと降り注ぎ、「晴れた日は、冬でも床暖房は必要ありません」と朋子さん。希望どおりのあたたかく快適な生活を手に入れた。
また、建築家からの提案で設けたのが、南側一面の掃き出し窓とフラットにつながる縁側。将来、南側の隣家が3階建てになる可能性を考慮し、できるだけ隣から建物を離すためであった。2階のベランダの幅と同じサイズで造られた広々とした縁側は、子どもたちが遊び、家族が見守る、そして豊かな時間を運んでくれるスペースとなっている。
家族の気配を感じて暮らす
飯田さんご夫妻がもうひとつこだわったのは、“どこにいても声が聞こえるようなオープンな家”。「いくつもの個室に分けるのではなく、子どもたちが元気に走り回り、視界に入らなくても気配を感じられるような家にしたかったんです」(朋子さん)
2階は可動式の間仕切りを設置し、普段は部屋を区切らず使用。ダイニング上部の大きな吹き抜けが1階と2階をつなぎ、1階で家事をしていても、2階で遊ぶ子どもたちの様子がなんとなく感じられるようになっている。
また、キッチンはコミュニケーションがとりやすい対面式に。リビングや縁側でくつろぐ家族との会話を楽しみながら料理をつくる朋子さん。
家族のつながりを常に感じられるオープンな空間は、心地よい安心感をもたらしてくれる。
掃除のしやすさも重視
共働きの飯田さんご夫妻にとって、いかにラクしてきれいさをキープするかは大きなテーマ。「前の家がゴチャゴチャしていたので、新しい家ではなるべく物は仕舞い、“見た目すっきり”が目標でした」(朋子さん)
玄関脇の土間収納をはじめ、リビングやキッチン、各部屋には大型の収納を造りつけ、大容量の収納を確保した。家電類はあらかじめサイズを図って建築家に伝え、適材適所の収納を実践。“隠す収納”で、すっきりとした空間となっている。
また、置き家具を最小限にしているのも掃除がしやすいポイント。段差のないバリアフリーということもあり、ロボット掃除機もスイスイ動き回る。「掃除をするのは“ルンバ”なんです」と晃弘さんが笑う。
清潔感あふれる真っ白なキッチンは、メンテナンスのしやすさから既製品をセレクト。カウンターを一段高くすることで、調理中の手元やシンクの中を上手に隠せるように配慮されている。
将来を見据えた長期的な視点
会社こそ異なるものの、高齢者の介護事業に携わっているご夫妻。「高齢になって生活がしづらくなり、困っている家庭を間近で見てきました。そのため、将来を見据えた設計にしようと思ったのです」(朋子さん)。
高齢になったときには、1階で生活が完結できように考慮。段差をなくし、トイレやバスルームなどのドアは引き戸で広めに設計するなど、バリアフリーを意識した造りに。また、1階のリビングは和室に替える可能性も視野に入れ、収納は押し入れに変更できるように考えられている。
家族の成長に伴い、住まい方も変化していく中で、ライフステージに柔軟に対応できるような造りにこだわった飯田さんご夫妻。
「母が通っていた小学校や中学校に娘たちが通学することになるのは不思議なものですね」と感慨深げに話す朋子さん。祖父母の時代から次世代へ、思い出とともに家族がつながる家では、夏乃香ちゃんと南々星ちゃんがのびのびと駆け回り、可愛らしい笑い声が響いていた。
設計 Fit建築設計事務所
所在地 東京都西東京市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 110.81m2