Green
新築を昔懐かしくDIY木と植物を愛する
温もりと風情に満ちた家
建て売りをアレンジ
田園地帯に開発された郊外の住宅地。冬枯れの落葉樹の庭が目を引く家は、「kitokusa」として活動するランドスケープガーデナーの夫とプランツスタイリストの妻、1歳の長女が暮らす小林邸。
「ふたり揃ってもの作りが好きなので、賃貸だと好きなように家をいじれないと思い、分譲を選びました。建て売りですが、自分たち仕様に変えられるかと思って」と妻・恵さん。
おふたりの仕事柄、メインに考えたのは庭。それまでは仕事で何度も造園を経験していたが、自分たちの庭をつくり上げるのは初めてだった。ふたりが描いたプランを夫・陽一郎さんがほぼひとりで着工する形で、新生活がスタートした。
森の散歩道のような庭
「もともと田んぼだった土地で雨が降ると大変なので、アプローチにはオーストラリアのユーカリを使って枕木を敷きました。フェンスはメッシュでできていたものを外し、支柱の木を立てて柵を新たに設けました」。
最初に植えたのはネズミモチの木。恵さんの好きなジューンベリーや、アカシデ、コナラなどが生い茂る庭は、小さな森のよう。「外構と植栽を主人が行い、下草や花などを私が育てています。主人にはこだわりがあるので、家で活けようと、枝をちょっと切ったりすると怒られてしまうんですよ(笑)」。
リビングの前にはウッドデッキも設置し、時間があるときは小さなテーブルを出してランチタイムも。枯れ葉が敷きつもった小道の先には、ブランコがかけられて、森の中の散策路風。
「私が教室で使う花や植物を育てたり、観葉植物のベースにするための缶を錆びさせたり、仕事に活かせるものもお庭で生み出していますね」。恵さんは自宅でフラワーレッスンも開催。庭で育った植物や近所の雑草、那須から仕入れる無農薬の花などを使って、味わいのある作品づくりを提案している。
土間風アトリエをDIYで
仕事にも活用できるアトリエを設けるため、1階の和室は夫がDIY。畳をはずし古い足場板を敷いて、土足であがれる土間のような空間にリフォームした。
「障子や襖も外しました。あとは壁紙をはがしてペンキ塗りを私が担当。押し入れだったところはディスプレイできる棚に作り替えました。季節毎にアレンジを変えて楽しんでいます」。
木とガラスのショーケースは、益子の仁平古家具店のもの。木を素材とした素朴なインテリアと、枝や木の実など天然の素材を使ったディスプレイ、サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリの芳香が、穏やかで豊かな空気感を生み出す。
「立ち枯れたような雰囲気、枯れ木の風合いが好きなんです。以前、花と雑貨のお店を任されていたことがあり、ディスプレイはその時に学びました。お店と違って売るためではなく、自分の好きなようにできるのが嬉しいですね」。
古道具に彩られたリビング
庭に面したリビングやダイニングキッチンも、そんな恵さんの思いが溢れた場所。学校の工作室の机や化学室の戸棚などを、テーブルにしたり食器棚に使ったり。「古道具のお店で見つけたものを置いています。特に古い椅子が好きで、一体何人住んでいるの? と言われるくらい、見つけるとつい買ってしまって」。
最初に椅子好きになったのも奈良の三坂堂で見つけた学校の椅子がきっかけとか。「どうして惹かれるのかわからないのですが。木の色とか形に魅力を感じますね」。食器類も1点ずつ温もりのある作家ものばかり。メイプルの汁碗など木の器も愛用し、その素材感を楽しんでいる。
そんな恵さんが家族で休暇を過ごすのは、自然の豊かな那須。毎年必ず出かけているとか。「お店を回るのもいいですが、森や林の散策が目的なんです。夫は木の樹形が好きですが、私は雑草が好きで活け方のヒントを探したいので、行くと行動は別々になります。それぞれ気になるものを探して写真を撮ったりしていますね」。
小林邸には一昨年、季杜音(きとね)ちゃんが誕生した。妊娠、出産で中断してしまったリビングの壁をグレーに塗り替えるのが、今の課題。「黒板を張って子供がお絵描きできるようにするのもいいかなと。あとはデッキにパーゴラを立てて、ハンモックをつけたいですね」。お子さんの成長とともに、また楽しみと味わいが増していくに違いない。