グリーンカーテンの下で朝食を
イギリスのノーマン・フォスター、フューチャーシステムズといった錚々たる未来派モダン建築事務所で仕事をした経験を持つ、建築家の熊木英雄さんの自邸に伺った。
ゆったりとした敷地に、美しい曲線を描きながら対角線状に建つ平屋建築は、英雄さんのお母様が所有していた土地に5年前に竣工。
「母が丹精込めて育てている薔薇や桜の木を大切に残したいと思いましたし、母もそれを望んでいました。曲線の家は、どの部屋からも美しい庭が見えます。壁に添って風がスムーズに流れるので、風通しを好む植物のためにも好都合でした。窓を開ければ、家の中も気持ちのよい風が通り抜けます」
曲線の家にしたのには、さらに理由があったそうだ。
「自分の家で思う存分実験がしたかったのです。曲線の家は建築費が2割程度割高になりますし、ヨーロッパは曲線にポジティブですが日本では躊躇する傾向があるのでなかなか浸透しないのです。ならば自分で作ってみよう!と」
抑えられる部分ではお金をかけずに、曲線による価値を存分に盛り込んだ家が完成したそうだ。
初夏から夏にかけて、南側のテラスに緑のカーテンが出現する。
「最初の2年間はゴーヤを育てていたのですが、たくさんゴーヤができすぎて、ご近所に分けても余ってしまうんです。それがもったいなくて、3年目からはスネイルフラワーに変えました。繁殖力が旺盛で、伸びすぎた蔓を定期的にカットするのが大変ですが、葉が密に茂りますし、カタツムリのような形の花がとても可愛いらしいです」
この緑のカーテンがあるおかげで、夏にもテラスで食事を楽しむことができるのだそう。
「今日は撮影のためにビニールプールを外に出していますが、普段は緑のカーテンの内側に入れています。直射日光を避けた場所でプール遊びができるのも、緑のカーテンのおかげです」
曲線が空間をゆるやかに分ける
カーブした躯体は端から端まで見通すことができない。視線の先がつねに変化するので、この先はどうなっているのだろうというワクワク感が生まれる。死角ができるので、間仕切りをしなくても、ゆるやかに空間を分けることができる。
「家族の気配をいつも感じることのできる家を作りたかったんです」
ブルー、イエロー、ピンクと、ビタミンカラーが白の空間の中で生かされている。緑のカーテンごしの光のグラデーションも美しさも、曲線の躯体のなせる技。
今後は、子どもの成長に合わせて、増築の計画もあるそうだ。