Green

高台から緑豊かな公園を望む 緑の専門家夫妻が建てた
星型の実験住宅

高台から緑豊かな公園を望む 緑の専門家夫妻が建てた 星型の実験住宅

吹き抜けから星空も楽しめる

荒木敬司さんはガーデンデザイナー、幸恵さんはフラワーアーティスト。ご夫婦ともに緑に縁の深い仕事に携わっている。そして7歳の禅くんとの3人家族だ。
家は「谷戸」と呼ばれる起伏のある地形の高台に建つ。

家はなんと星のカタチ! 俯瞰して見るとカタカナの“オ”に近い形をしている。


この星型の家には、建物と建物に挟まれた5つの三角形の庭を含む、東西南北、様々な環境の庭がある。この環境の違う庭こそ、荒木邸が星の形になったヒミツが隠されている。オーストラリア原産の植物、暖かい場所で育つディクソニアというシダの仲間、サボテンや多肉植物、保湿のためのマットと共に地植えする食虫植物などなど、庭の環境を違いを活かした植物の実験場になっている。その育成結果が敬司さんの仕事に生かされているのだ。

なんといっても高台からの眺めが素晴らしい。リビングの窓の正面に緑たっぷりな公園が見える。取材に伺ったのは冬だったけれど、四季折々の緑の変化が楽しめるとのこと。
高さ約5mのリビングの吹き抜けを生かしたハイサイドの窓からは、星空も楽しめるのだそう。

窓の外に公園の景色が広がる。ダイニングテーブルは敬司さんが作ったもの。サペリというアフリカ産の銘木にアイアン作家の脚を組み合わせた。
窓の外に公園の景色が広がる。ダイニングテーブルは敬司さんが作ったもの。サペリというアフリカ産の銘木にアイアン作家の脚を組み合わせた。
複雑な星のカタチの角度が豊かな奥行き感を生む。
複雑な星のカタチの角度が豊かな奥行き感を生む。
窓の内と外、遠景の公園が、三層の豊かな緑の景色を作る。
窓の内と外、遠景の公園が、三層の豊かな緑の景色を作る。
テラスの外に大谷石を敷いた。ここから見える庭はアガベを中心とした植え込み。
テラスの外に大谷石を敷いた。ここから見える庭はアガベを中心とした植え込み。
「以前は店舗を構えていたのですが、家の居心地が良すぎて、今は家でフラワーアレンジメントの制作しています。ワークショップやイベントを行ったり、『輪(りん)』(https://www.instagram.com/hananomiserin/)で販売もしています」
「以前は店舗を構えていたのですが、家の居心地が良すぎて、今は家でフラワーアレンジメントの制作しています。『輪(りん)』は、ワークショップやイベントを行ったり、オンラインショップで販売もしています」
幸恵さんが仕事で使うドライフラワーのストックの棚も敬司さんのDIY。下の箱はキャベツボックス。
幸恵さんが仕事で使うドライフラワーのストックの棚も敬司さんのDIY。下の箱はキャベツボックス。
約5mある吹き抜けが気持ちいい。壁に飾っているのはアガベの大きな花のドライ。
約5mある吹き抜けが気持ちいい。壁に飾っているのはアガベの大きな花のドライ。
ローテーブルは敬司さんのハンドメイド。庭の鉄柵は鉄の作家さんにお願いして作ってもらったもの。
ローテーブルは敬司さんのハンドメイド。庭の鉄柵は鉄の作家さんにお願いして作ってもらったもの。

光あふれる明るいキッチン

星型の荒木さんの住まいは、キッチンに立つと、庭をはさんでリビングが見える。リビングのテーブルにいる家族の様子を見ながら料理ができる。

リビングから数段上がったところに洗面があり、その奥にバスルームがある。お風呂に入りながら庭を眺めることもできる。
星型の平面図の複雑さに加え、スキップフロアの空間の変化が楽しい。

正面がキッチン、左側がリビング。幅3mのステンレスの天板のゆったりとしたキッチンは、手前がキャンティレバーになっている。
正面がキッチン、左側がリビング。幅3mのステンレスの天板のゆったりとしたキッチンは、手前がキャンティレバーになっている。
窓越しにリビングが見える明るいキッチン。料理道具をかけている棚板はDIYで。
窓越しにリビングが見える明るいキッチン。料理道具をかけている棚板はDIYで。
食器棚はオープンに。DIYで棚板を増やしている。
食器棚はオープンに。DIYで棚板を増やしている。
1階と2階の間に洗面室。右側に開いた隙間からリビングが見える。
1階と2階の間に洗面室。右側に開いた隙間からリビングが見える。
玄関はガラス戸。1階の床はモルタル。サーマ・スラブ(蓄熱式暖房)で冬は優しい暖かさ。
玄関はガラス戸。1階の床はモルタル。サーマ・スラブ(蓄熱式暖房)で冬は優しい暖かさ。

吹き抜けを囲んでひとつにまとまる家

寝室や子ども部屋に扉がなく、吹き抜けを通して、ひとつの大きな空間になっている。ドアがあるのはトイレと浴室だけ。収納にもドアがなくカーテンで仕切っているので、ものの出し入れがしやすい。

「設計は前田工務店にお願いしました。友人に“きっと前田工務店が好みの家を建ててくれると思う”、とご紹介いただきました」
前田工務店は、建築士、そしてカメラマンという3名体制で設計を担当。
「設計図ができあがるまで、念入りに打ち合わせをしました。『魔女の宅急便』の家のような、忍者屋敷のような、吹き抜けとスキップフロアのある家が希望とお伝えしました。そして様々な環境の庭で植物の生育の実験をしたい、という希望があることもお話しました。そしてできあがったのがこの星型の家です。公園を望む高台の土地も探していただきました」

古材はあえて使わなかったのだそう。
「住むうちに長い時間をかけて古材へと変化する楽しみを残したいと思いました」

敷地は谷を見下ろす擁壁の上にある。南側は高低差があるが、北側は敷地とフラットにつながっている。外壁は「そとん壁」と呼ばれる自然素材を使っている。
敷地は谷を見下ろす擁壁の上にある。南側は高低差があるが、北側は敷地とフラットにつながっている。外壁は「そとん壁」と呼ばれる自然素材を使っている。
2階の吹き抜け下からリビングを見下ろす。
2階の吹き抜け下からリビングを見下ろす。
2階には2箇所、1階を見下ろせる場所があり、それぞれ違った見え方を楽しめる。
2階には2箇所、1階を見下ろせる場所があり、それぞれ違った見え方を楽しめる。
階段の踏み板の隙間から見える1階と2階のドア2つはトイレ。それぞれのドアにリースを飾る。
階段の踏み板の隙間から見える1階と2階のドア2つはトイレ。それぞれのドアにリースを飾る。
階段の下を有効活用した靴入れはDIYで製作。
階段の下を有効活用した靴入れはDIYで製作。
2階は右側に寝室、左側に子ども部屋、正面にワークスペースがある。個室や収納には扉がなく、間仕切りはカーテンのみ。2階の床は杉材のフローリング。
2階は右側に寝室、左側に子ども部屋、正面にワークスペースがある。個室や収納には扉がなく、間仕切りはカーテンのみ。2階の床は杉材のフローリング。
リビングの上の橋状になった場所がワークスペース。正面に薬師池公園が広がる。新緑の季節は最高の眺めになるそう。
リビングの上の橋状になった場所がワークスペース。正面に薬師池公園が広がる。新緑の季節は最高の眺めになるそう。
造作デスクは正面と右側にも窓がある明るい環境。
造作デスクは正面と右側にも窓がある明るい環境。