Green
花と緑に囲まれてオリジナルの感性を
家族で表現する家
花との生活を愉しむ
坂の上の陽だまりに佇む家。花生師として活動する岡本典子さんが家族と暮らす家は、いつもグリーンや花で満たされている。
「お花がない生活は落ち着かなくて、考えられません。花中毒ですね」
玄関先の花壇に始まり、廊下、リビング&ダイニング、トイレ…、どこも植物に彩られている。しかし、ただ華やかなだけではない。洗練された、創造性豊かな空間が、そこには広がっている。
「私が選ぶお花は、ぱっと見てきれいなものというより、アースカラーなどの地味なものが多いですね。姿のいい花よりも、少し茎が歪んでいるものの方が動きがあって面白いし、咲ききった時の美しさではなくて、やがて枯れて朽ちていく、その過程に花の色気を感じます」
アンティークを活かして改造
そんな岡本さんの感性で満たされた家は、5年前に購入した中古物件に、少しずつ手を加えていったもの。まず玄関では、ヨーロッパ調の重厚な木製ドアが出迎えてくれる。
「アンティークショップを廻って見つけたドアに、外側は黒、内側は明るさが出る白で、わざとクラックが入るように塗装しました。夫がDIY好きなので、とても助かっていますね」
リビングに入るドアもアンティーク。朽ちて錆びつき、腐食した雰囲気が、この家のインテリアや植物とよくなじむ。端材は、これもDIYで壁に取り付け、子供用の本棚として利用した。
「使い込まれた扉が好きで、ネットなどで探して買いためています。古いものと花との組み合わせに魅力を感じますね」
DIYで漆喰の壁に
アンティークショップで買った、パンをこねるための台をテーブルに。美容院で使われていたというキャビネット、モデルの友人からゆずってもらった、塗装の剥げ落ちたテーブルなどに、花やグリーンをデコレーション。アンティークの時計や照明器具も、経年変化の趣を添える。
「壁は普通のクロス貼りが嫌で。夫にクロスの上から漆喰を塗ってもらいました。ペイントは雑でもいいんです。でこぼこした感じの方が、味わいが出ると思います」
とはいえ、その出来栄えは、プロの職人さんが「素人とは思えない!」と言ったほど。完成度の高い手作業が、味わいと温かみを醸し出している。そして壁面や天井、部屋のコーナーなど、至るところを生花やドライを使い、オリジナルの感性でコーディネート。どこを切り取っても絵になる空間だ。
家族でつくりあげる家
「この家を選んだ理由のひとつが、いじりがいがある、ということでした。まだ作業途中なのですが、地下室や屋根裏部屋があるので、そこを改装していきたいと思っています。特に地下は涼しいので、これからの節電を考えると、花を移動してディスプレイルームにしてもいいですね」
現在は、2階のベッドルームに、少しずつ木材の床を敷きつめている。
「高台にあり、2階の窓からの見晴らしがいいので、これを活かさないのはもったいないなと。だからここを、子供中心にみんなで集える、第2のリビングルームにしたいと思いつきました。床を敷いたら、黒のペンキで少し剥げた感じを残しながら重ね塗りしていくつもりです」
作業には、陸翔くん、ことりちゃんも参加。家づくりに参加することが、子供たちにとってもよい経験となり、思い出となる。
「うちは花を中心とした生活をしていますが、私が好きだからといって、子供にそれをすすめることはしたくないんです。私たちがやっていることを見て、子供自身に生活を楽しむ気持ちを、肌で感じてほしいと思っています」
自由な発想を取り入れて
今、岡本さんは赤ちゃん連れでも参加できるワークショップを開催している。
「子供が小さいと余裕がないけれど、そんな中でもお花を楽しんでもらえたらうれしいという気持ちでやっています。それは、特別な日に豪華なお花を買ってきて活けるということではないんです。日々の暮らしの中で、毎日1本でも気に入ったお花を取り入れてもらえたなら、それが本当の贅沢だと思うんです」
日常の中のちょっとしたアイデアが、生活に彩りを与える。岡本さんのリビングでは、ラナンキュラス、スカビオサなど存在感のある花から、パセリやケールなどの野菜類も、素材として立派に活躍。
「野菜も鑑賞用として楽しんでいます。花瓶もミルク瓶だったりピッチャーだったり。構えてやる必要はないんですね。身近な食器や素材を使って取り入れるだけで、生活が豊かになると思います」
苔を敷きつめたガラスのトレーの上に、お菓子を載せてお客さんをおもてなし。自由な発想で生活を愉しむ。そんなライフスタイルの悦びが伝わってくる。