Hobby
趣味を堪能するガレージを併設何気ない日常が愛おしい
型に嵌らないミックススタイル
趣味を共有する幼なじみが設計
「子供の頃からいつも一緒で、聴いてきた音楽、観てきた映画、趣味も同じなんです」。と語るのは住宅や店舗の設計、オリジナル家具の販売を行う「HOUSETRAD」代表の水野了祐さん。4年前に完成した家は、幼なじみである同社デザイナーの細田邦彦さんが設計を担当した。
「テイストは分かっているので、細かいところは任せました。土間と、趣味のための部屋としてのガレージ、ルーフバルコニーを設けたいということと、リビングの床をヘリンボーンにすることだけを伝えました」。
ミッドセンチュリーやアイクラーホームズを好むふたりが完成させた空間は、洗い出しの土間に足を踏み入れた瞬間から、モダンなのにどこか古く懐かしく、あたたかな雰囲気が漂う。
趣味にふけるガレージ
「まず玄関を入ったところが狭いのは嫌なんです。各個室は小さくていいから、玄関や階段などの共有スペースを広くしたい、というのが僕らの共通の考えでした」。玄関の先には幅広で余裕のある階段、左手にはガラスとコンクリートブロックで仕切られたガレージが。「バイクのカスタマイズをしたり、ラジコンを作ったり、レコードを聴いたり。ガレージは自分だけの聖域ですね」。
水まわりは1階に。ひとつのスペースにバスルーム、トイレ、洗面、ランドリー、そしてクローゼットまでも集約。「その方がこもった感じがしないし動線がよいと思って。外出するときも帰宅したときも、ここを通ればすべてリセットできる。無駄がなくて快適です。これでベッドルームが併設できれば完璧ですね」。黒のタイルで統一した空間が、広がりと奥行きを感じさせている。
多様な文化をミックス
ガラスブロックから光が差し込む階段を上がり、2階のリビング、ダイニング、キッチンへ。ミッドセンチュリーにアジアやアフリカなどの民族調も加わった独創的な空間が広がる。「型にはまった感じが好きではなくて、どこか崩してみたくなるんです。色々なものをミックスしたスタイルが好きですね」。
ヘリンボーンの床は、一般的な細長の形状をあえて短くした。「昔からヘリンボーンが好きなのですが、それだと古いイギリスっぽい雰囲気になってしまう。少しカジュアル感を出したかったですね」。
表の通りに面した開口部は控えめに設置され、プライバシーが確保されている。「窓はあまり大きくする必要はないと思うんです」と設計の細田さん。「外の眺めがよければ大きくしてもよいけれど、そうでもないのなら壁を設けて、そこに好きな絵でも飾った方がいいと」。ソファーに座った位置から、目線の先に向いの家の緑が見える開口部は、外からの視線を遮りつつ、室内に圧迫感を生まない計算がされている。
モールディングが施された壁、段差のある天井。重厚なインテリアに多国籍の雑貨が飾られたリビングは、書斎のような落ち着いた雰囲気。「構造的に必要だった梁の部分にラワンを貼って、立体感を出しました。モールディングは、光の反射で出る陰影がおもしろいので、よく取り入れます」(細田さん)。縦型のブラインドを通して差し込む光も、存在感のあるインテリアを照らし出す。
当たり前の日常を刻む家
「田舎育ちなのでアウトドアが楽しめるようにしたいというのがあり、3階にはルーフバルコニーが外せませんでした。バーベキューをしたり、ビニールプールを出したり、夏は子供がテントを張ってそこで寝たりしています」。水野邸は、奥様と園児、小学生のお子様ふたりの4人家族。家族みんなの暮らしも大切にされている。
「キッチンカウンターは、忙しい朝などにも家族でちょっとしたやり取りができるスペースです。妻も仕事をしているので、重宝しています」。郵便受けを設置していない玄関では、郵便物が届くと土間にポンと投げ落とされる。敢えてそうしているのは、デザイナー細田さんの頭の中にインプットされたイメージからなのだそう。
「昔、映画でそういうシーンを観たのでしょうね。そんなワンシーンを大事にしたいと思うんです。スイッチも、触れるだけで点灯する今のパネルではなく、昔の上げ下げするタイプのものを採用しています。何気ない動作に味があると思うんです」。
どこか古く懐かしい感じがするのは、空間や形だけではなく、昔、当たり前だった日常のシーンが大切にイメージされているからなのかもしれない。「意味のないものを作るのが嫌なんです。家なのだから使い勝手がよく、心地よく生活できる場であってほしい」。かっこいいだけではない、家族の暮らしに寄り添った空間が広がっていた。