緑と暮らす心地よさ趣味を楽しむ都会のアトリエ併用住宅

緑と暮らす心地よさ趣味を楽しむ
都会のアトリエ併用住宅

シンプルモダンな陶芸のアトリエ

「陶芸を行うアトリエが欲しい」というご主人の強い希望で、アトリエ併用の住居を建てたFさん夫妻。自身の窯を持たれたご主人は、デザイン事務所を経営する傍ら、週末や平日の夜に作品づくりにいそしんでいる。

「ルーシー・リーが現れるようなアトリエを目指してほしいというリクエストだった」と話すのは、設計を依頼された設計事務所アーキプレイスの石井正博さんと近藤民子さん。ルーシー・リーとは、イギリスを拠点に活動した20世紀を代表する女性の陶芸家である。モダンで情緒豊かな独自のスタイルを築き上げ、日本にもファンが多い。
「陶芸の工房にありがちな土臭い和風の雰囲気ではなく、モダンで洗練されたイメージを意識しました」とは近藤さん。南側の大きな窓からたっぷり降り注ぐ光や緑も手伝って、明るくスマートなアトリエとなっている。


南側の庭に面した、1階のアトリエ。左側の赤いイスに座って電動ろくろを回し、作陶するそう。床のタイルや壁のレンガタイルもご主人のセレクト。

南側の庭に面した、1階のアトリエ。左側の赤いイスに座って電動ろくろを回し、作陶するそう。床のタイルや壁のレンガタイルもご主人のセレクト。

アトリエ内にある収納棚は全て造り付け。扉付きとオープン棚とで、見せる収納と隠す収納が絶妙なバランス。

アトリエ内にある収納棚は全て造り付け。扉付きとオープン棚とで、見せる収納と隠す収納が絶妙なバランス。

陶芸で使用する道具などを美しくディスプレイ。

陶芸で使用する道具などを美しくディスプレイ。

電気陶芸窯が2台。大型の窯は還元焼成も可能。煙突は不要で、適切な能力の換気扇を付ければ一般家庭でも気軽に設置できる。

電気陶芸窯が2台。大型の窯は還元焼成も可能。煙突は不要で、適切な能力の換気扇を付ければ一般家庭でも気軽に設置できる。

ご主人が生まれ育った佐賀県の土にこだわり、土を掘るところから行う。

ご主人が生まれ育った佐賀県の土にこだわり、土を掘るところから行う。

ご主人の作品。現在は、個展を開く腕前で、富山県のお店でも取り扱っているそう。

ご主人の作品。現在は、個展を開く腕前で、富山県のお店でも取り扱っているそう。

「若い頃に『大中』で購入しました」(奥さま)という中国の整理棚。ご主人の作品ともマッチする。

「若い頃に『大中』で購入しました」(奥さま)という中国の整理棚。ご主人の作品ともマッチする。


中央の吹き抜けでつながりを強めて

「生活の場は2階で完結するようにお願いしました」という奥さま。その要望に応えて、2階の南側にLDK、北側に浴室や洗面などの水回りと寝室とを配置し、中央の吹き抜けを中心に回遊性をもたせた。

子供向けの教材などを手掛けるイラストレーターとしても活躍する奥さま。LDKの一角に仕事スペースを設け、お気に入りのものに囲まれながら仕事をしている。「煮物など料理をしながら仕事ができます。生活動線も考えられたワンフロアでの生活は、効率的で気に入っています」(奥さま)

また、「夫が1階のアトリエに引き籠ってしまわないように(笑)、それぞれが好きなことをしていても一体感を感じられるような造りを希望しました」と続ける。中央の吹き抜けをガラス貼りにしたことで、1階と2階とに離れていてもお互いの様子が見えたり、気配を感じ取れたりする。また、どこにいても声が届くという安心感もあると話す。

新築して飼い始めたという2匹の猫たち。自由に上下運動ができ、行き止まりがない回遊性のある造りは、猫たちにとっても居心地のよい空間となっているようだ。


玄関の扉を開けると正面に、磨りガラスの飾り棚が目に飛び込む。ご主人の作品が整然と並べられ、ギャラリーのよう。

玄関の扉を開けると正面に、磨りガラスの飾り棚が目に飛び込む。ご主人の作品が整然と並べられ、ギャラリーのよう。

玄関から吹き抜けホール、アトリエへと続く床は、同じタイルで統一されている。2階の生活の場に続く階段からはあたたかみのあるフローリングに。アトリエと住居空間で気分を変えている。

玄関から吹き抜けホール、アトリエへと続く床は、同じタイルで統一されている。2階の生活の場に続く階段からはあたたかみのあるフローリングに。アトリエと住居スペースで気分を変えている。


2階のLDK。山型に傾斜した天井がユニーク。真ん中で振り返るアメリカンショートヘアのアンちゃん(3歳・メス)は人懐っこく、ずっと撮影に付き合ってくれた。一方、今回、顔を見せてくれなかったブリテッシュショートヘアのソラちゃん(同)はシャイな性格だそう。

2階のLDK。山型に傾斜した天井がユニーク。真ん中で振り返るアメリカンショートヘアのアンちゃん(3歳・メス)は人懐っこく、ずっと撮影に付き合ってくれた。一方、今回、顔を見せてくれなかったブリテッシュショートヘアのソラちゃん(同)はシャイな性格だそう。

コンパクトなアイランドキッチンは部屋のサイズに合わせてオーダー。ダイニングテーブルもオリジナルでデザインし、家具職人が制作。イデーの椅子にかけられたカバーは奥さまのお手製で、猫の爪とぎ防止に。

コンパクトなアイランドキッチンは部屋のサイズに合わせてオーダー。ダイニングテーブルもオリジナルでデザインし、家具職人が制作。イデーの椅子にかけられたカバーは奥さまのお手製で、猫の爪とぎ防止に。

飾り棚の後ろ側が吹き抜け。右側の廊下の奥が寝室、左側が洗面や浴室へとつながる。デスク部分は奥さまの仕事スペース。

飾り棚の後ろ側が吹き抜け。右側の廊下の奥が寝室、左側が洗面や浴室へとつながる。デスク部分は奥さまの仕事スペース。

ロフトは“離れ”のようなイメージで和室にした。「こういう場があるとほっとする」と奥さま。ゲストルームとしても使用。

ロフトは“離れ”のようなイメージで和室にした。「こういう場があるとほっとする」と奥さま。ゲストルームとしても使用。

「マイフェイバリットコーナーです」と奥さま。仕事中は収納の扉を開けて、お気に入りのものに囲まれることで集中できると話す。

「マイフェイバリットコーナーです」と奥さま。仕事中は収納の扉を開けて、お気に入りのものに囲まれることで集中できると話す。


左側が吹き抜けで、1階を見下ろすことができる。右側は1階とロフトへとつながる階段。

左側が吹き抜けで、1階を見下ろすことができる。右側は1階とロフトへとつながる階段。

寝室から洗面スペースを見る。左側中央が吹き抜け。

寝室から洗面スペースを見る。左側中央が吹き抜け。

色味を考慮しながら、いかに美しくバランスよく収納するか、奥さまの楽しみのひとつ。ゆとりをもって納めるのがポイント。

色味を考慮しながら、いかに美しくバランスよく収納するか、奥さまの楽しみのひとつ。ゆとりをもって納めるのがポイント。

2人が並んで使用できる広めの洗面スペース。立ち上がりの部分に貼ったモザイクタイルは、奥さまが選んだ。

2人が並んで使用できる広めの洗面スペース。立ち上がりの部分に貼ったモザイクタイルは、奥さまが選んだ。


フランス田舎風の庭と借景で緑を愛でる

近くには神田川が流れ、都会の住宅街とは思えない穏やかな空気が漂っている。F邸の南側には、隣家の緑豊かな庭が広がる。「この見事な景色をいかに活かすかが大きなテーマでした」とは建築家の石井さん。LDKの外には、隣地の緑に向かってウッドデッキを張り出し、景色を大きく取り込むように考慮した。テラスからはもちろんLDKからも、四季折々の自然を大迫力で楽しむことができる。

ウッドデッキかららせん階段でつながる1階のアトリエ前には、素朴で愛らしいフランス田舎風の庭が。ガーデニングが趣味という奥さまが、時間や手間を惜しまず手入れしている庭である。「以前住んでいたマンション時代からベランダでバラを育てていました。建ぺい率いっぱいに建てても、庭が予想以上に広く取れると聞いたときはとても嬉しかったですね」と満面の笑みを浮かべる。フレンチカントリースタイルの庭を得意とする『BROCANTE』の松田行弘氏に依頼し、現在も相談しながら庭造りを行っている。「いつもこの庭が眺められる夫のアトリエは、特等席ですね」と笑う奥さま。

好きなものに囲まれ、好きなことをしながら暮らすFさん夫妻。お互いを尊重し、ほど良い距離感で過ごすお二人は、心豊かな日常を愉しまれている。


隣家の庭は、撮影時は桜が満開だった。

隣家の庭は、撮影時は桜が満開だった。

LDKからフラットに続くウッドデッキ。空間が広く見える利点もある。

LDKからフラットに続くウッドデッキ。空間が広く見える利点もある。

板塀で囲まれたフランス田舎風の庭。「特にバラが好き。お手入れが大変なところが楽しい」(奥さま)と、土や肥料にこだわって育てているそう。

板塀で囲まれたフランス田舎風の庭。「特にバラが好き。お手入れが大変なところが楽しい」(奥さま)と、土や肥料にこだわって育てているそう。

「LDKから続くウッドデッキのらせん階段を下りれば、すぐに庭に出られるので便利です」(奥さま)

「LDKから続くウッドデッキのらせん階段を下りれば、すぐに庭に出られるので便利です」(奥さま)。

奥さまが大好きという『フィスバ』のカーテン。草花をモチーフにしたデザインと美しいグリーンに一目惚れしたそう。

奥さまが大好きという『フィスバ』のカーテン。草花をモチーフにしたデザインと美しいグリーンに一目惚れしたそう。


ガルバリウムサイディングと板張りのすっきりとした印象の外壁。大きく開閉できる玄関の扉は、丈夫で狂いの少ないスチールに板を貼ったもの。防火性も高い。

F邸
設計 設計事務所アーキプレイス
所在地 東京都杉並区
構造 木造(SE構法)
規模 地上2階
延床面積 99.73 m2