Hobby
緑と暮らす心地よさ趣味を楽しむ
都会のアトリエ併用住宅

シンプルモダンな陶芸のアトリエ
「陶芸を行うアトリエが欲しい」というご主人の強い希望で、アトリエ併用の住居を建てたFさん夫妻。自身の窯を持たれたご主人は、デザイン事務所を経営する傍ら、週末や平日の夜に作品づくりにいそしんでいる。
「ルーシー・リーが現れるようなアトリエを目指してほしいというリクエストだった」と話すのは、設計を依頼された設計事務所アーキプレイスの石井正博さんと近藤民子さん。ルーシー・リーとは、イギリスを拠点に活動した20世紀を代表する女性の陶芸家である。モダンで情緒豊かな独自のスタイルを築き上げ、日本にもファンが多い。
「陶芸の工房にありがちな土臭い和風の雰囲気ではなく、モダンで洗練されたイメージを意識しました」とは近藤さん。南側の大きな窓からたっぷり降り注ぐ光や緑も手伝って、明るくスマートなアトリエとなっている。







中央の吹き抜けでつながりを強めて
「生活の場は2階で完結するようにお願いしました」という奥さま。その要望に応えて、2階の南側にLDK、北側に浴室や洗面などの水回りと寝室とを配置し、中央の吹き抜けを中心に回遊性をもたせた。
子供向けの教材などを手掛けるイラストレーターとしても活躍する奥さま。LDKの一角に仕事スペースを設け、お気に入りのものに囲まれながら仕事をしている。「煮物など料理をしながら仕事ができます。生活動線も考えられたワンフロアでの生活は、効率的で気に入っています」(奥さま)
また、「夫が1階のアトリエに引き籠ってしまわないように(笑)、それぞれが好きなことをしていても一体感を感じられるような造りを希望しました」と続ける。中央の吹き抜けをガラス貼りにしたことで、1階と2階とに離れていてもお互いの様子が見えたり、気配を感じ取れたりする。また、どこにいても声が届くという安心感もあると話す。
新築して飼い始めたという2匹の猫たち。自由に上下運動ができ、行き止まりがない回遊性のある造りは、猫たちにとっても居心地のよい空間となっているようだ。











フランス田舎風の庭と借景で緑を愛でる
近くには神田川が流れ、都会の住宅街とは思えない穏やかな空気が漂っている。F邸の南側には、隣家の緑豊かな庭が広がる。「この見事な景色をいかに活かすかが大きなテーマでした」とは建築家の石井さん。LDKの外には、隣地の緑に向かってウッドデッキを張り出し、景色を大きく取り込むように考慮した。テラスからはもちろんLDKからも、四季折々の自然を大迫力で楽しむことができる。
ウッドデッキかららせん階段でつながる1階のアトリエ前には、素朴で愛らしいフランス田舎風の庭が。ガーデニングが趣味という奥さまが、時間や手間を惜しまず手入れしている庭である。「以前住んでいたマンション時代からベランダでバラを育てていました。建ぺい率いっぱいに建てても、庭が予想以上に広く取れると聞いたときはとても嬉しかったですね」と満面の笑みを浮かべる。フレンチカントリースタイルの庭を得意とする『BROCANTE』の松田行弘氏に依頼し、現在も相談しながら庭造りを行っている。「いつもこの庭が眺められる夫のアトリエは、特等席ですね」と笑う奥さま。
好きなものに囲まれ、好きなことをしながら暮らすFさん夫妻。お互いを尊重し、ほど良い距離感で過ごすお二人は、心豊かな日常を愉しまれている。





