Hobby
居住空間半分ガレージ半分の家 ミニマムデザインの家を
カスタマイズして暮らす
内と外をガラリと変える
大口邸の外観は、ガラス壁の上に黒い箱が載った、とてもミニマムな表現が印象的だ。しかし、家の半分を占めるガレージの上につくられた2階の居住スペースに上がると、180度印象が変わるような光景が目の前に広がる。
「外観はとてもモダンな佇まいですが、中はがらりと方向性を変えています。アンティークの家具や小物などを入れて、新旧を織り交ぜたものにしたいと思いました」と大口さんは話す。
個性を前面に出して
設計を担当した建築家の布施茂さんの住宅作品は、内外ともにモダンな表現で仕上げたものがほとんどだが、この家では内部は大口さんの個性でまとめられるよう、細部まではきっちりと納めずに全体構成のスタディに注力したという。
「インダストリアル」も家づくりの際のキーワードだったという大口さん。2階の住空間をカスタマイズすべく、家具や小物だけでなく内装材にもこだわり、ネットで探し出したものを自ら購入していった。
この床材とともに、布施さんが「どこから見つけてきたのか」と感心したもののひとつが、円いガラスのテーブルの脚に使われている重さ100キロほどもあるアイアンのプロダクト。約100年前にフランスでガス灯として使われていたものの地中に埋められていた部分だという。これを探し出したのにも感心するが、テーブルの脚に使おうというそのオリジナルな発想力にも驚かされる。
緑の眺望を生かす
空間の構成でポイントになったのは、大きいところでは2点あった。ひとつは、敷地の裏に林があるため、この緑の眺望をできる限り生かすこと。
「せっかく裏に緑があるので、これに沿ってできるだけ長い距離を取るようにスタディを行いました。はじめは裏表ともにガラス面だったのですが、コスト面とプライバシーを考慮して、裏側の肝心なところだけにとどめ、なおかつ、開けっ放しにしても内部が見えないような現在の構成に落ち着きました」(布施さん)
居住スペース半分ガレージ半分
もうひとつのポイントは、いかに住空間とガレージとを構成するかで、布施さんはこれがスタディのメインの作業になったという。
大口さんは「バイクが8台と車も2台あってどれも昔から思い入れがあるものたちばかりでなかなか手放せなかったんですね。しかも、どうしてもすべてを家の中に入れたかったので、居住スペース半分ガレージ半分ということになりました」と話す。
「バイクや車が好きだという気持ちはわかるので、ガレージ部分が日常の生活動線とどういうふうにからむように全体を組み立てたらいいのかというのはだいぶスタディしましたね」(布施さん)
「2柱リフトありきだったので車が上下する高さとかにうまく住空間の床レベルや視線がからむほうが面白いだろうということなどを考えて空間構成を詰めていきました」と布施さんは話す。
そして、リビングから見える自然に癒されるとも。「ここから見える緑は素晴らしいです。さらに、夏にはきれいな蝶も飛ぶし、夜はベッドに横になって上を見ると星も見えるんです」。寝ながらにして星が見えるというのはまったく考えていなかったというが、この意外な楽しみも加わって、「ここでの生活は最高」という大口さんの表現に少しも誇張はない、そのように感じた。
設計 布施茂/fuse-atelier+武蔵野美術大学布施スタジオ
所在地 千葉県袖ヶ浦市
構造 鉄骨造
規模 地上2階
延床面積 104.2m2