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ピロティと出窓でLDKが広々 サボテンとハンモックの
ある家で暮らす
![ピロティと出窓でLDKが広々 サボテンとハンモックの ある家で暮らす ピロティと出窓でLDKが広々 サボテンとハンモックの ある家で暮らす](https://img.100life.jp/2021/06/02101642/210607yam-1080x480.jpg)
敷地は小田原の海の近く
山口邸の敷地は小田原の海から歩いて3、4分ほど。漁港もすぐ近くに位置するこの場所は敷地近くで道路が行き止まりになっていて歩行者しか通ることができない。小田原市内で高級住宅街といわれているエリアだが、車が通り抜けできないことからか相場よりも安めで手に入れることができたという。
奥さんのみづ江さんの姉の野地さんが夫の玉井さんとともに建築家であったため、設計は姉夫婦に依頼した。敷地を見た玉井さんは「袋小路ということでネガティブに取る人もいいますが、家の脇までしか車が入ってこないので子どもを道で遊ばせていても安心だし、角地というのもいいんじゃないかと思った」という。設計者の目からすると、正面に延びる坂道のその先に丹沢の山並みが見えるのも魅力的に映ったという。
![ゆるやかな坂道(歩道)の正面に立つ山口邸。1階の手前部分がピロティになっている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101121/210607yam-001-683x1024.jpg)
![玄関の奥に階段が見えるが、これは姿見に映ったもので、階段の実物は入って右側にある。](https://img.100life.jp/2021/06/02101126/210607yam-002-678x1024.jpg)
サボテンとこもれる部屋
みづ江さんは姉夫婦が手がけた建築を実物のほかにも本などで見ていたので設計は大部分をお任せでお願いしたというが、夫の洋平さんとともにこだわりの部分はしっかりと伝えた。
「わたしはとにかくサボテンが好きだからサボテンをたくさん置きたいということをまず伝えました。あとは好きにグリーンを置きたい。夫のほうは個室がほしいということで、この2つが大きかったと思います」
洋平さんは「こもれる部屋」を強く希望した。「広さはどうでもいいので、とにかく空間を全部遮断してくださいとお願いしました」
![キッチン側からリビング・ダイニングを見る。テレビの後ろに1階へ下る階段がある。「掃除しやすい部屋にしてほしい」とリクエストを出した洋平さん。「床が全部フラットで凸凹が何もないのでとても掃除がしやすい」という。](https://img.100life.jp/2021/06/02101132/210607yam-003-1024x683.jpg)
![階段側から見る。奥の窓は出窓になっていて右の寝室部分で左に折れながらつづく。](https://img.100life.jp/2021/06/02101138/210607yam-004-1024x683.jpg)
![2階の出窓は端から端までサボテンほかさまざまなグリーンが置かれていてどこにいても目に入る。グリーンの手前側にガラス戸があり閉めればサンルームのようになる。](https://img.100life.jp/2021/06/02101144/210607yam-005-1024x678.jpg)
ピロティと出窓
野地さんと玉井さんのお2人はサボテンを愛でる空間は2階のLDKとし、2階には他に寝室とバス・トイレを配した。1階は車を3台停めたいという希望があったため半分以上をピロティとしそのほかに洋平さんの個室と倉庫、トイレをつくった。
隣の家などは道路側に車を置くつくりだが、そうすると建物を建てるエリアが小さくなって床の広がりを取ることができない。そこでピロティ形式にして2階は建ぺい率いっぱいに床面積を取って広く使える空間にしたという。
ピロティとともにこの家の大きな特徴となっているのが全長で幅9mほどの出窓だ。出窓は一定の条件をクリアすれば床面積に入れなくてもよい。この丹沢の山並みに向けてに開けられた出窓が、ふつうに建ぺい率いっぱいにつくるよりも、2階に広がり感を与えている。
![2階のキッチン。タイルを使うのはみづ江さんの希望だった。キッチンのコーリアンの白にあわせて白いタイルにした。棚の上が神棚兼フィギュア置き場として使われている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101149/210607yam-006-1024x683.jpg)
LDKから寝室側にL字に曲がりながら続くこの出窓、室内側にもガラス戸を設けてサンルームのようにしている。このスペースにサボテンとそのほかのグリーンを置いているためLDKにいればそれらをつねに間近に感じることができる。このスペースにはまた120mm角の斜材が入っていて空間の大きなアクセントになっているが、これは下の隅柱を省くために必要なものだったという。
「1階ピロティの隅の柱を無くすためにトラスを組んでいます。このトラスをよけて窓をつくると小さな窓をいくつもつくることになってしまうのですが、窓を外に押し出して出窓にしたので窓自体を大きく取ることができました」(玉井さん)
![奥のスペースは将来子ども部屋にすることを考えていているという。斜めにかけると美しいというハンモックはコロンビア産のもの。](https://img.100life.jp/2021/06/02101154/210607yam-007-683x1024.jpg)
![出窓の部分が断熱層の役割を果たしているため「わりと気温が一定していて、寒い暑いのストレスがあまりない」という。](https://img.100life.jp/2021/06/02101201/210607yam-008-678x1024.jpg)
![寝室がキッチンの奥に見える。](https://img.100life.jp/2021/06/02101206/210607yam-009-683x1024.jpg)
![出窓の部分を介して手前の寝室とキッチンとがつながっている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101212/210607yam-010-683x1024.jpg)
ハンモックを吊るす
1階をピロティとしまた出窓をつくることで2階の広さを十分取ることができたため、みづ江さんがサボテンを置くこととともにこだわったというハンモックも余裕をもって吊るすことが可能になった。
「子供を産むまでハンモック研究会というのを10年ぐらいずっとやっていて、サボテンはその研究目的でメキシコにいったときに魅力に取りつかれてしまったんです」(みづ江さん)
![LDKと寝室は隣接しているが「落ち着いた寝室と開放的なリビングとはっきりと異なる場所をつくりなおかつぐるりと回っていくようにして距離感を出しました」(玉井さん)。寝室の壁には夫妻ともに好きなマンガや単行本が大量に収まっている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101217/210607yam-011-1024x683.jpg)
![右はテラスへと上がる階段の途中に子どもたちの居場所としてつくられたスペース。](https://img.100life.jp/2021/06/02101221/210607yam-012-683x1024.jpg)
![LDKと階段側をゆるく仕切るカーテンは安東陽子さんのデザイン。LDK側は鮮やかなブルー系の色が使われている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101227/210607yam-013-683x1024.jpg)
![階段の先にはテラスが設けられている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101233/210607yam-014-683x1024.jpg)
![プール遊びのできるテラスもリクエストのひとつだった。右方向の正面には丹沢の山並みが見える。](https://img.100life.jp/2021/06/02101237/210607yam-015-683x1024.jpg)
玄関に入る前から家のなか
2年ほど前に竣工した山口邸。洋平さんは2階のLDKについて「くつろぐことを考えたときに、ここはいろんな場所で横になれる。以前住んでいたアパートではくつろげる場所はだいたい決まっていたんですが、そこでごろごろしたりあそこでごろごろしたりというのができるんです」と話す。
洋平さんに念願だった個室について聞くと、「こもれるだけでなく使いやすく、とても気に入っている」という。さらに続けてこんなことも話してくれた。「アパート暮らしが長かったので余計感じるんだと思いますが、車でピロティのところまでくるともうすでにそこが家のなかという感じがするんですね。それでドアツードアでそのまま自分の部屋に入れる。部屋までがずっとフラットなので、そのすごいスムーズな感じがとても心地いいですね」
![階段下には姿見が斜めに設置されていて、2階からでも玄関先の様子がわかる。](https://img.100life.jp/2021/06/02101243/210607yam-016-1024x683.jpg)
![右が洋平さんの個室。階段の下は本などの収納棚になっている。手すりはペーパーコード巻き仕上げ。](https://img.100life.jp/2021/06/02101249/210607yam-017-683x1024.jpg)
![洋平さんが「とても使いやすい」と話す1階の個室。テーブルが入口から奥の壁まで続く。](https://img.100life.jp/2021/06/02101254/210607yam-018-683x1024.jpg)
話しかけられやすい家
家の前にはサボテンやアガベを植えたロックガーデンがつくられているが、これが家族だけでなく家の前を通る人たちの目も楽しませているようだ。
「越してきたばかりの頃に、散歩しているおばあさんが庭をよく見てくれていて“いつも楽しませてもらっています”と話しかけてきましたね」と洋平さん。みづ江さんは「サボテンが花が咲くのを知らない人が多くて、花を見て驚かれて“お花咲きましたね~”とかもよく言われます」と話す。
洋平さんは「話しかけられやすい家になっている」というが、これはロックガーデンをつくっただけでなく、1階をピロティにして街に対してオープンなつくりにしたことも大きく作用しているのだろう。
![サボテンやアガベなどが植えられたロックガーデン。手前にあるのは小田原の海などで拾ってきた流木。サボテンなどが近所の人とのコミュニケ―ションのきっかけになることが多いという。](https://img.100life.jp/2021/06/02101259/210607yam-019-1024x678.jpg)
![寝室の下のハンモックがかけられた1階のスペースは将来の増築にも対応できるつくりになっている。](https://img.100life.jp/2021/06/02101303/210607yam-020-1024x683.jpg)
![ピロティの天井には波板が使われている。奥に見える山並みを意識したものという。](https://img.100life.jp/2021/06/02101309/210607yam-021-1024x678.jpg)
![駐車に邪魔となるためピロティの右隅の柱を取っている。道路との境界をあいまいにしているので敷地内をショートカットして通っていく人が多いがこれは建築家が意図したことという。車は右奥から進んでくると敷地の右側で行き止まりとなる。](https://img.100life.jp/2021/06/02101516/210607yam-022-1024x681.jpg)
![みづ江さんのお気に入りのスペースはやはりサボテンとハンモックのある2階のLDK空間。子どもたちが走り回れる広さがあるのも気に入っているという。](https://img.100life.jp/2021/06/02101521/210607yam-023-1024x683.jpg)
山口邸
設計 玉井洋一+野地智美
所在地 神奈川県小田原市
構造 木造
延床面積 119.24㎡