Hobby
好きな本を眺めて暮らすさりげのないたたずまいに
こだわりをこめて。
こう語るのは、Kさん。出版社勤務の雑誌編集者だ。2世帯住宅の2、3階部分に、奥さんと生後7カ月のお子さんとともに3人で暮らしている。2階は、間につくられた中庭で、LDKと本のスペースに分かれる。本のスペースではLDKと中庭に向かって大量の本がきれいにディスプレイされ、2階にいればどこからでも本を眺められる。本好きにとってはたまらないつくりだ。
2人の思いが込められたコレクション
今は育児休暇中の奥さんも編集者で、夫婦揃っての大の本好きだ。「つねに本が見えるのは幸せ」という奥さんにとって、本は、精神安定剤みたいに、ちょっと心を落ち着かせてくれる存在。「迷ったり落ち込んだりした時には、本の世界に少し浸りたくなりますね」。また、「仕事で疲れている時は小説を読みたくなったりとか、逆に仕事でアイデアがほしい時には全然違う分野の写真集を見たりとか、とにかく自分にいろいろヒントをくれる、一番身近な友だちみたいな感じ」だという。
一方、Kさんは、読むのも好きだが、モノとしての本にもすごく興味があって、買っただけで満足してしまうこともしばしばだという。「たとえば、阿部公房とか中上健次とか好きな作家は、全集を買っちゃうんです。全然読まないのに」。しかもそれらの多くは、すでに文庫でも揃っているものだという。好きなシリーズを集めるのも好きで、新潮社の「とんぼの本」や作品社の「日本の名随筆」などのシリーズ物は本棚で多めのスペースを占めている。2人それぞれの思いのもと集められた本たちは、心地の良いスペースを与えられてわが場所を得たりといったところだろうか。眺めるほうもなぜか自然と心地が良くなってしまう。
緑には来年チャレンジ
「緑が見える家」も家づくりの際のテーマだったが、緑は、今年は芝だけにとどまった。来年の春からは中庭にプランターを並べて緑を楽しむつもりだ。「子どももいますし、家庭菜園ではないですけども、プランターを置いたりしたいと思っていて、あと、今年はできなかったんですが、ゴールドクレストを置いてクリスマスの飾り付けをしたりしたいなと思って」と奥さん。1階に住まわれているKさんのご両親が花や草木に詳しいので、知恵を借りながら中庭の“緑化”を進める予定だ。
空間のコーディネーションにもこだわる
LDKの空間にとてもフィットした家具たちは、2人でコーディネートしたもの。リビングのソファは以前からもっていたイデーの製品だが、張り地はこの空間に合うように色を変えて張り替えた。「床がナチュラル系の色で壁が白なので、じゃあ何色がいいだろうと」考えてネイビーにした。そのソファの脇に置かれたクッションはマリメッコの布を買ってつくられたもの。こちらも「周りの色とのバランスで、ちょっと赤っぽい挿し色があるといいかなと」赤系の鮮やかな色に。
ダイニングのテーブルはランドスケーププロダクツ、椅子はグラフのもの。キャスター付きのベンチ兼用の収納は、家を施工した工務店の方に製作をお願いした。さらに、向かいの本のスペースの椅子とテーブルは、バウハウス出身のマルセル・ブロイヤーがデザインした作品を無印良品がリプロダクトしたもので、廃番になるというので慌てて購入したもの。さりげないたたずまいの中に、実は2人のこだわりがさまざまに込められているのだ。
「お茶の時間に友たちを呼んで、5人、6人来るとわりといっぱいな感じになるんですが、子どもたちはすぐ庭や階段で遊び始めて」。本やパーティ好きな大人だけでなく、子どもたちもワクワクさせる空間のようだ。
設計 flathouse
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地上3階
延床面積 145.8m2