Hobby
窓一面の水平線海とアートと暮らす
ギャラリーのような家
「実は海遊びはやらないんですが(笑)、せっかくこの辺りに住むなら、海の見える家で暮らしたいと思って、建築家の榊田倫之さんと一緒に土地を探しました。逗子の辺りで、海が見えて、かつ“変態物件”が建てられるユニークな場所となるとかなり難儀しました」と宙司さん。個性のある建物を建てられる土地の条件として、区画整理された住宅用地ではなく、立地そのもののポテンシャルが必要だということで意見が一致していたそうだ。
5年かけて土地を探し、購入してからもさらに2年半の月日をかけ、この春ようやく竣工。たくさんの思いが詰まった念願の家が出来上がった。
家具やオブジェは、同世代の日本の作家のものを。
内田家の2階にあがった瞬間、歓声を上げずにはいられない絶景が広がる。床から天井まで、リビングの端から端まで使った大きな窓の向こうに水平線が広がる。テラスに出れば、潮風と空の高さと、裏山の森の緑まで堪能できる。
豪華な家がまったく嫌味に感じないのは、内田夫妻とほぼ同世代の、日本の作家の家具やアート作品がたくさん使われているせいだろう。ちなみに、大きなグリーンのソファも、ダイニングテーブルの近くに置かれたパープルのソファも、家具デザイナーの藤城成貴さんの作品。
「藤城さんがIDEEに在籍していたころからのファンで、今回念願かなって家具をオーダーすることができました」と宙司さん。
1階はあえて閉じた空間に。
2階に上がった時の水平線の風景がドラマティックに感じるのは、1階を中庭に面した閉じた空間にしてあるから。ほんとうは目の前に海があるのだけれど、あえて1階からは見せない。
「この家を設計してくださった建築家の榊田倫之さんは、現代美術作家の杉本博司さんが設立した『新素材研究所』の所長も務めていらっしゃいます。普段は美術館やギャラリー、店舗の設計に携わっていますが、ここが記念すべき住宅第1号物件です。榊田さんの建築理念を住宅で再現するには、うちでは1階と2階のフェーズをきちんと分けることがマストだったのだと思います」
オープンハウスの際には、1階のギャラリーに杉本博司さんの作品を飾り、プレスデーを設けたそうだ。
「今、スタジオとして使っている場所は、壁にモクを張り、作品を展示できるギャラリーとして使えるように設計しました。ギャラリーを訪れたお客様が外から直接入れるように入り口も作ってあります」
医療器具をデザインとアートの力で生まれ変わらせる『Supporter Exhibition』を企画し、今年の2月に『トーキョー カルチャート by ビームス』で展覧会を開催した宙司さん。この家も、アートを楽しめる空間として、多くの人に利用してもらいたいと考えているそうだ。
「ゆっくりくつろいで欲しいので、テーブルの周りのイスをソファにしました。チェアだと長時間座っていると疲れてしまうので。ソファで食べるのにテーブルをちょうどいい高さにするために、キッチン側の床を下げてもらいました」と和香子さん。立って料理を作るのにも、ソファで料理を食べるのにもちょうどいい高さのテーブルにするために、床で調整するという驚きのアイディア。
ワインクーラーつきの冷蔵庫は、お客様に気兼ねなく開けて飲んでもらえるよう、家族で使う冷蔵庫はパントリーの中に別に用意。
海沿いのお宅で管理が大変な点は、やはり嵐の翌日の潮のケアだそう。
「ガラスに潮がついてしまうので、高圧洗浄機で洗っています。手の届くところは自分で拭けますが、届かないところは業者さんにお願いします。あとはトンビの落とし物(笑)。これも高圧洗浄機でビューッと流しちゃいます。植物も傷みやすいので、この環境で生きていけるものをランドスケープデザイナーの団塚栄喜さんに相談して選んでもらい、合わせてテラスのデザインもお願いしました」