Outdoor
パリ郊外のガラス職人の家光と緑が充満する
パリ郊外の一軒家
一軒家だからからこその、スペースと庭
パリに隣接する小さな市、マラコフ。メトロでパリ市内にアクセスできる便利さと、芸術家ゆかりの街モンパルナスに近いことから、アーティストやクリエイターが多く移り住んでいる。ガラス職人のリュック・ジェンソレンさんもそんな一人。生粋のパリっ子でありながら、パリでは稀な一軒家暮らしにこだわる彼は、2006年に蔦の絡まるこの家を購入した。妻と2人の子供たちと、快適に暮らすためだ。
「妻と一緒に物件を見に来た時は、現在の姿からは全く想像もできないひどい有様でした。内部は4世帯に分割されていて、各部屋は小さく暗く状態も悪かった。庭も荒れ放題。それでも十分なスペースと緑豊かな環境を見込んで、すぐに購入を決意したのです。躊躇はありませんでしたよ」
と、リュックさん。
なんでも、古い一軒家を安く購入して自力で美しく作り変えるのは、リュックさんが父親から学んだライフワークなのだそう。経験のない人にはボロ屋同然の物件でも、小さい頃から父親のやることを見て育ったリュックさんには、可能性の塊に見えたというわけだ。
楽しみながらDIYをフル活用
家の購入が決まるや否や、自ら改装工事の図面を引き、プロに依頼して配管や壁の取り壊しを含む大工事に着手した。9ヶ月間にわたるこの工事中に、リュックさん自身もガラス扉やウッドデッキを自力で設置。
「大枠の工事さえ完了していれば、あとは住みながら手を入れて暮らしやすく作ってゆけばいい。工事に対するこんなスタンスも、小さい頃からずっと親のやることを見て育った影響です。つまり慣れているのですね。アパルトマン暮らしですか? 若い頃に経験しましたが、私のメンタリティーには合いません。自分の上下に別の誰かが暮らしているなんて、考えられませんよ(笑)」
購入から12年。現在の住まいを見渡すと、家選びの鍵となった「スペース」と「緑」が存分に活かされていることがよく分かる。
壁を極力取り除き、実現した広い間取り。庭のウッドデッキに面した外壁と、リビングとベッドルームに挟まれたミニパティオの外壁も取り壊し、すべてガラス張りに作り変えた。こうすることでダイナミックな開放感と、採光を手に入れている。天井に設けた明かり取りの小窓も、小さいことのようだがこれがあるとないとでは大違いだ。
ボーダーレスなライフスタイル
庭は全面ウッドデッキにし、リビングからの高さを統一した。こうするとこで家の中と外の境目がなくなり、 広いリビングがさらに広がる。春から夏にかけての数ヶ月間は、ガラス張りの開閉を開けっ放しにすることが多い。そうすると家の中と外が一つになって、気持ち良く放たれた視界の先に鬱蒼とした緑が続く・・・
「夏は家の中よりも、庭で生活する時間の方が多いのですよ。まず庭のテーブルで朝食をとりますし、ランチもディナーも、デスクワークをすることだってあります。友達を招くホームパティも、もちろん庭が会場です。ウッドデッキでバーベキューをするのを、みんな楽しみにしています」
リュックさんの暮らしを見て気づくことは、「住まいに求める “自分の優先事項”を、明確にもつことの重要さ」だ。彼にとってはまず一軒家であること。そして十分なスペース、自然光、緑があること。1910年の建設以降、数世帯が住み、しまいには4分割されたりもした古い一軒家が、リュックさんの手によって持ち味を最大限に引き出され、誰もが羨む快適な住まいに生まれ変わっているのだから。
「現代人は忙しい毎日を送っているからこそ、住まいには自分が本当に納得できる快適さを求めたいものです。私達家族は、今の暮らしがとても気に入っています」