Outdoor
都市でコテージの快適さを両サイドのインナーテラスが
心地よい風を運ぶ家
2つのハンモックが揺れる
庇の深いインナーテラスがリビングの両サイドにあり、窓を全開にすると、心地よい風が部屋の中を吹き抜ける。まるで南の島のコテージにいるような気持ちよさ。西荻窪の住宅街の只中に建つ家にいることをしばし忘れてしまう。
若井 現さん、麻紀さんご夫妻はインド洋に浮かぶモルジブ島が大好きで、幾度となく訪れているそう。家を建てるならば、モルジブのコテージにいるように過ごすことのできる場所にしたいと考えていたとのこと。
「自分の家に居ながら、非日常を感じられる家にしたいと思っていました。ハンモックはマストです(笑)。それも2箇所」
インナーテラスとは、外にあるけれど屋根があり、家の中のように使える空間のこと。オレンジ色のハンモックはインナーテラス、つまり外にあるのだが、反対側にかかる白✕茶のハンモックは家の中の窓際にある。
家の外も中も曖昧な空間が、リゾートの気持ちよさにつながっている。
そしてこのインナーテラスのおかげで、外の視線を気にせず、窓を開け放つことができる。
「住宅地なので周囲に家は建っていますが、カーテンがなくても問題ありませんでした」
リビングに段差をつけ、視線を高く
若井邸のリビングには段差が設けられている。段差をつけることで、視線が上がり、お隣の児童館の白い壁が見える分量や緑と見上げる空の配分が見事に調整されている。この段差は家族やお客様が集まるダイニングテーブルの椅子の役目も果たしている。
若井邸の住宅街にありながらリゾートの心地よさを実現したのがニコ設計室。
「クルマでよく通る道に素敵な家がありました。そのお宅の設計がニコ設計室だったんです。雑誌を見ても目に留まるのはみんなニコ設計室の作品。これはお願いするしかない、と。ニコ設計室の西久保毅人さんは、ほんとうにたくさんのアイディアを考えてくださいました。家の真ん中にバルコニーを作る案もありました」と現さん。
「家を建てている最中にインナーテラスの設計変更がありました。お隣の建物の目隠しにもなる壁を作り、その上部は空間を開けました。壁が連続することで、より内と外の境界が曖昧になり、良かったと思います。臨機応変に柔軟に対応してくださって、それが家を楽しめる結果につながり、ほんとうに満足しています」
外壁材を家の中に自在に取り込む
若井邸の面白さは、壁や床に、外壁にも使える素材をいくつも使っている点にもある。
リビングのシポロールの黒い壁は、そのままインナーテラスまでつながり、中と外をより曖昧にしている。
リビングの半分以上の面積の床にはフレキシブルボードという外壁材を使っている。壁材を床に使うおもしろい試みだ。
1階のバスルームに使った凹凸のある外壁材はジョリパッド。夜、ライトをつけるとさらに陰影の表情が豊かになるのだそう。
「窓から降る雪を眺めながら、熱いお風呂に入った時、家を建てて良かったと心から思いました」と現さん。
大好きなモルジブのコテージのような家が、都会にありながら、多忙な毎日の疲れを癒やしてくれている。