Outdoor
漫画の世界にも通ずる住空間リビングが外にあって、
直接空を望める家で暮らす
![DSC7181 DSC7181](https://img.100life.jp/2019/08/08182304/DSC7181-1080x480.jpg)
リビングを外につくる
中央線文化がいいと思って沿線で土地を探したという高橋さん。ゼネコンに勤務しながら“座二郎”というペンネームで漫画家としても活動している。高橋さんが「中央線の北側で西武線との間」で見つけたのは「安くて小さい土地」だった。
「最初は既存の古家をリニューアルしようと思っていたんですが、容積率が6割くらいオーバーしていてローンが下りなかった。では新築しようとなったんですが、容積率・建ぺい率通りに建てるとあまりにも狭くなってしまう。それで、半分冗談でリビングを外にして“こんなふうにすればつくれるけど”って絵を描いたら、奥さんが乗り気になってしまって」
![コンパクトな敷地に立つ高橋邸。2階の窓を通して中を覗いてみない限り、内部のつくりはうかがいしれない。](https://img.100life.jp/2019/08/08182601/DSC8004-1024x683.jpg)
その案は中庭部分をリビングにして大きく取り、かつ豊かな空間にして、残りはなるべくコンパクトに収めるというものだった。
「その一番最初の絵には、道路側に奥行きの浅い収納をつくってその中にテレビとかを収めている様がすでに描きこまれていました。リビングの機能はとにかくこの中庭側にぜんぶ収めるという考え方で、ピアノとかテレビや本棚といった、リビングをリビングたらしめるものはこの収納に入れていましたね。これでたぶんこの家は面白くなると思いました」
![2階から外部につくられたリビングを見る。左にダイニングキッチン。](https://img.100life.jp/2019/08/08182854/DSC7088-683x1024.jpg)
![2階からリビングを見る。左手が道路側で、1階の左手奥の部分が玄関。外部にも収納がつくられている。](https://img.100life.jp/2019/08/08182927/DSC7252-683x1024.jpg)
![玄関近くからリビングを見る。床は予算の関係で土間にしたができればタイルを敷きたかったという。](https://img.100life.jp/2019/08/08184725/20190728-_DSC7829-31-683x1024.jpg)
![1年を通してリビングとして使用するため床下暖房にすることにはこだわった。](https://img.100life.jp/2019/08/08183034/DSC7530-683x1024.jpg)
![ダイニングキッチン側からリビングを見る。正面と右手に収納がつくられている。](https://img.100life.jp/2019/08/08183107/DSC7408-1024x683.jpg)
![奥行きの浅い収納はガラス戸になっているためどこかウインドウディスプレイの趣も。この時代の暮らしの“標本”の陳列ケースのようにも見える。](https://img.100life.jp/2019/08/08183134/DSC7441-1024x683.jpg)
天井代わりに布をかける
この中庭=リビングに立って見上げると白い布が天井代わりにかけられているが、これをたたんでしまえば空が直接目に入ってくる。この気持ち良さは格別のもので、天窓レベルでは味わえないインパクトがある。天井代わりに布を張るというこのアイデアは高橋さん一家がキャンプ好きであることも関係があるようだ。
「家族でキャンプによく行くんですが、タープを張るのがすごく好きなんです。それで家でタープを張ったら面白いだろうなとずっと思っていました」。とても原始的・簡易なつくりで、日除けになりかつ風通しもあるという点が好きなのだとも。
![リビングから上を見上げると屋根がなく空を直接望むことができる。](https://img.100life.jp/2019/08/08183223/DSC7790-2-1024x655.jpg)
![キャンプのタープのように日差しと雨を防ぐための布を梁の後ろに収納。](https://img.100life.jp/2019/08/08183250/DSC7049-1024x683.jpg)
![屋根代わりの布を張るロープや金具などの道具は高橋さんが購入して据え付けた。](https://img.100life.jp/2019/08/08183308/DSC7005-1024x683.jpg)
![屋根代わりの布を収納するとリビングの空気感が一変する。](https://img.100life.jp/2019/08/08183334/DSC7071-1024x683.jpg)
リビングにいながらにして空を直接眺められる気持ちの良さはキャンプで味わう戸外の気持ちの良さと通ずる。「これだけ開口が広く取れると戸外の気持ち良さを満喫できるので、この家ができてからキャンプに行く気が起きないんですよ。なぜわざわざそんな過酷な環境のところにまで出掛けて行かないといけないのかと(笑)」
「外部につくられたリビング」ということでは暑さ、寒さが大丈夫なのか気になるところだが、「真冬は夜風が吹いたりするとちょっときついですが、陽が射している昼間は結構過ごしやすい」という。また「夏は上に布を張ってエアコンをかければリビングでもまったく暑くない」とのこと。
![リビングとダイニングキッチンが違和感なく連続・一体化しているが、片方が屋外でもう片方が屋内であることから他では味わえない不思議な感覚をおぼえる。](https://img.100life.jp/2019/08/08183442/DSC7722-1024x683.jpg)
![階段からダイニングキッチンを見る。](https://img.100life.jp/2019/08/08183518/DSC7356-1024x683.jpg)
![インテリアの色は奥さんのみのりさんが担当。徐々に高橋さん/座二郎の漫画の世界の色に近づいていったという。](https://img.100life.jp/2019/08/08183543/DSC7675-1024x683.jpg)
![ダイニングキッチン(左)とリビング。](https://img.100life.jp/2019/08/08183610/DSC7686-683x1024.jpg)
![浴室からリビング空間のほうを見る。](https://img.100life.jp/2019/08/08185117/2019DSC79691-683x1024.jpg)
漫画の世界と通ずる空間
高橋さんが日頃の設計業務で扱う建物はRCと鉄骨ばかりで木造の経験がなかったため、この家の設計では学生時代からの友人で建築家の鈴木理考さんに相談に乗ってもらうことに。「木造については予算の組み方からまったくわからなかったので相談させてもらって、実施設計と確認申請をお願いしました」
その鈴木さんが言うにはこの住宅自体が高橋さん/座二郎の漫画の世界に通ずるものがあるという。予算の都合で実現はできなかったが、初期案での中庭=リビングの周りを収納がめぐるつくりはまさしくモノが充満した座二郎の漫画の世界をほうふつとさせる。高橋さん自身も「モノがたくさん陳列されている感じがとても好きでそこにはけっこうこだわりましたね。色をたくさん使おうというのも決めていて、インテリアデザインをしている奥さんに色をたくさん使ってくれと頼みました」
![2階のコーナー部分は高橋さんがアクリル絵の具を使った作業の際に使う。収納部分にはライン照明が仕込まれていて、夜には奥の壁の色がボワーっと浮かび上がる。](https://img.100life.jp/2019/08/08183734/DSC7922-1024x683.jpg)
![地下鉄の東西線をイメージしてつくった作品。タバコのハイライトの包み紙を使っている。](https://img.100life.jp/2019/08/08183801/20190728-_DSC7752-1024x717.jpg)
![高橋さんがつくった年賀状。2017年と2018年のもの。2018年のほうにはすでにこの家の初期のイメージが描かれている](https://img.100life.jp/2019/08/08183938/20190728-_DSC7775-1024x717.jpg)
![1畳程度の高橋さんの仕事部屋。中の棚は自分で製作した。ピンクの扉は紙をコラージュした上に色を塗っている。](https://img.100life.jp/2019/08/08184025/DSC7977-1024x683.jpg)
![コンパクトな住宅ならではの工夫。トイレの扉を手前側まで引くと階段部分と仕切る間仕切りになる。](https://img.100life.jp/2019/08/08184045/DSC7982-1024x683.jpg)
![扉の表側は黒く塗られた上に紙がコラージュされている。](https://img.100life.jp/2019/08/08184125/DSC7985-1024x683.jpg)
![美しくデザインされた階段。鈴木さんの腕が振るわれた部分のひとつ。](https://img.100life.jp/2019/08/08184144/DSC7336-1024x683.jpg)
![空は直接見えるが家具をガラスを通して見るという逆転現象が不思議な感覚を生んでいる。](https://img.100life.jp/2019/08/08184227/DSC7937-683x1024.jpg)
![玄関近くの収納前につるされた緑。緑はこれから増やしていきたいという。](https://img.100life.jp/2019/08/08184249/DSC7869-683x1024.jpg)
非日常が家の中に
この家に住み始めてから5カ月ほど。屋根代わりの布を固定するロープや金具もいろいろ試して工夫をしているという。「ロープを止めておく道具はヨット用品です。ロープをぎゅっと押し込むとそれ以上引っ張っても動かないというもので、キャンプ用品と組み合わせて使っています」
お子さんは最初屋根のない家には大反対だったが、今ではそれが嘘のように楽しみながら暮らしているようだ。「この家は子どもは楽しいところが一杯あるので。走っても楽しいし、なんでそんなに取り合うんだろうと思うくらいハンモックでよく遊んでいますね」。日差しが直接入り込む環境でのハンモックはまた楽しさ倍増だろう。
奥さんは「外でくつろぐことは他の人にとっては非日常ですが、それが家の中でできるから楽しい」と話す。天気予報をいつも確認していないといけないし、布が帆のようにバタバタ揺れるから船のようでもあると話す高橋さん。「もう普通のマンションには暮らせないですね」と問いかけると笑いととともに「暮らせないですよ!」という返事が返ってきた。
![DSC7617](https://img.100life.jp/2019/08/08184353/DSC7617-1024x683.jpg)
高橋邸
設計 鈴木理考建築都市事務所+座二郎
所在地 東京都杉並区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 57㎡