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自分サイズの暮らしを探す1000坪の広大な敷地に建つ
9坪の小さな家

「自分の手で初めて設計したのがその別荘でした。この家とはまったく違う、大きなモダン建築です。しばらくそこに住んでいたのですが、リタイアした親が越してくる計画があったので、自分らしい身の丈にあった家を、自分の手で建てたくなったんです」
ここ益子町在住の若手大工と一緒に町田さん自ら金槌をふるい、約4ヶ月間の工期で家を完成させた。






杉林を切り開くことから自分で始める。
「自分で木を切り、重機で整地をするところから始めました。クライアントのための家なら基礎はしっかり作りますが、この家は敢えて簡単な基礎にしました」
4隅は30センチほど掘り下げて柱を立てているけれど、他の部分は、わずか10センチほどしか基礎が地面に埋まっていない。
「2010年の冬に完成したのですが、約1年後の3月に東日本大震災がありました。このあたりの震度は6弱。地震の時は家にいたのですが、すぐに外に出て、『すぐにこの家は倒れるな、まだ一年しか住んでないのにもったいないな』と思いながら呆然と揺れる家を眺めていました。けれど、大丈夫だったんです。揺られたことで、かえってドアの建てつけがよくなったほどでした(笑)」







“家”を問い直す。
狭い土地にギリギリ立てた都心の狭小住宅とは違い、町田さんの家は、“住まうこと”を見つめ直した結果の9坪の家。そこには様々な工夫が凝らされている。
「寝室として使っているロフトへは、ハシゴで登ります。子どもが登れるか心配しましたが、取り越し苦労でした。子どもの能力はあなどれませんね(笑)とても上手にするすると登っていきます」
2010年の完成から3年目を迎えた今、居住スペースを少し広げたいと考えているそう。
「今現在、風呂は親の別荘に入りに行っているので、こっちの家に風呂を作りたいと思っています。さらにはカマドのあるキッチンも作りたいですね。そして今のキッチンの場所をリビングにして、念願のソファを置きたいです」
気持ちの良い素材を吟味し、必要最低限のスペースで暮らす。“家ってなんだろう”を常に考える、建築家らしい住まい方がここにはある。