数々のロングセラーを生み出し、日本でも人気の高い北欧のモダンデザイン。中でもフィンランドのデザインは、長年使っても飽きのこないシンプルさや明るい色彩、また、美しくも機能的で使いやすいことなどから広く受け入れられている。
今回は、20世紀中頃に黄金期を迎えるフィンランドデザインの礎を築いたアルヴァ・ アアルトによるアルテックの家具や照明のほか、 カイ・フランクによるイッタラのテーブルウエア、マイヤ・イソラらによるマリメッコのプロダクトを紹介する。また、これらのプロダクツは、いま全国を巡回中の「フィンランドのくらしとデザイン」展でもモダンデザインの傑作として大きく取り上げられている。
アアルトによるアルテックのプロダクト
アルヴァ・アアルトは、フィンランドのモダンデザインを世界レベルに押し上げた、20世紀を代表する建築家。アルテックは、1935年にアアルトらによって始められたインテリアメーカーで、“ART”と “TECHNOLOGY”の融合をコンセプトに、モダニズムの追求を試みた。 積層合板の成形と曲げ技法の開発に取り組み、それがそのままデザインの特徴ともなっている。スツールやテーブルに見られるL字の脚は、“Lーレッグ”と呼ばれる世界で唯一の製法で、曲線のフォルムが美しい上に強度もある。また、照明は、上品で柔らかな光りを放ち、消した時もフォルムが美しいシェードデザインが特徴だ。
《ARMCHAIR 400 “TANK”》designed in 1936
《ARMCHAIR 41“PAIMIO”》designed in 1932
《STOOL 60・STOOL E60・CHILDREN’S STOOL NE60》designed in 1933
《CHAIR 611》designed in 1929
《TABLE 81B》designed in 1935
《SCREEN 100》designed in 1936
《UMBRELLA STAND 115》designed in 1936
《Hand grenade・Bilberry・Golden Bell・Beehive》designed in 1952,1950,1954,1953
カイ・フランクによるイッタラのテーブルウエア
カイ・フランクは機能的で美しい量産型食器を数多くデザインし、“フィンランドデザインの良心”と呼ばれる。イッタラは、1881年にスウェーデンのガラス吹き職人によってガラスメーカーとしてスタート。ガラス製品は、一般的に透明度を上げるために鉛を使うが、人体や環境に有害な鉛を使わずに透明度の高いガラスを作り上げている。カイ・フランクが「必要な装飾は色だけ」と言うように、機能美に優れたテーブルウエアの数々はシンプルなフォルムで、カラーバリエーションが豊富だ。
《Kartio》designed in 1958
《Teema》designed in 1981
マリメッコのロングセラープロダクト
大胆なプリントやカラフルな色使いのテキスタイルが特徴のマリメッコは、1951年創業のライフスタイルブランド。 1960年代には、ジャクリーン・ケネディがマリメッコのドレスを愛用していたことで広く知られるようになった。1964年には、マイヤ・イソラがマリメッコのアイコンとなる「ウニッコ(ケシの花)」をデザイン。この花柄プリントが、今日まで長く愛されるテキスタイルとなった。「大胆で個性的なデザイン」という理念のもと、インテリアやファッション、バッグなどさまざまなアイテムのプロダクトを展開し、常に斬新でコンテンポラリーなファブリックパターンを発表している。
《Pieni Unikko》designed in 1964
《Unikko》designed in 1964
《Tasaraita》designed in 1968
《Siirtolapuutarha・ Puutarhurin parhaat》designed in 2009
《Kivet・Pienet Kivet》designed in 1956,1958
《Rasymatto》designed in 2009
アアルトらを紹介するフィンランド展が全国を巡回中
今回紹介したアアルトらのプロダクトを含む、「フィンランドのくらしとデザイン」展が、青森県立美術館を皮切りに全国を巡回中だ(http://www.finland-design.com/about)。モダンデザインの黄金期を彩ったデザイナーやブランドのプロダクトをはじめ、絵画、文学、建築、工芸など多分野に及ぶ作品約350点を展示。アルテックのプロダクトなど、展示されている現行商品の一部は、ミュージアムショップで購入が可能だ。