Design

北欧のモダンデザイン −1−飽きのこない心地よさ
アアルト、カイ・フランク、マリメッコ

北欧のモダンデザイン ー 1ー 飽きのこない心地良さ アアルト、カイ・フランク、マリメッコ

数々のロングセラーを生み出し、日本でも人気の高い北欧のモダンデザイン。中でもフィンランドのデザインは、長年使っても飽きのこないシンプルさや明るい色彩、また、美しくも機能的で使いやすいことなどから広く受け入れられている。

今回は、20世紀中頃に黄金期を迎えるフィンランドデザインの礎を築いたアルヴァ・ アアルトによるアルテックの家具や照明のほか、 カイ・フランクによるイッタラのテーブルウエア、マイヤ・イソラらによるマリメッコのプロダクトを紹介する。また、これらのプロダクツは、いま全国を巡回中の「フィンランドのくらしとデザイン」展でもモダンデザインの傑作として大きく取り上げられている。


アアルトによるアルテックのプロダクト

アルヴァ・アアルトは、フィンランドのモダンデザインを世界レベルに押し上げた、20世紀を代表する建築家。アルテックは、1935年にアアルトらによって始められたインテリアメーカーで、“ART”と “TECHNOLOGY”の融合をコンセプトに、モダニズムの追求を試みた。 積層合板の成形と曲げ技法の開発に取り組み、それがそのままデザインの特徴ともなっている。スツールやテーブルに見られるL字の脚は、“Lーレッグ”と呼ばれる世界で唯一の製法で、曲線のフォルムが美しい上に強度もある。また、照明は、上品で柔らかな光りを放ち、消した時もフォルムが美しいシェードデザインが特徴だ。


青森県立美術館での展示風景

《ARMCHAIR 400 “TANK”》designed in 1936

アームチェア400 W770 D770 H650 SH370mm ¥493,500〜 アルテック東京オフィス
幅広の曲木によるアームチェアは、カンチレバー構造が特徴。力強いフォルムが戦車に似ていることから「タンクチェア」とも呼ばれる。

《ARMCHAIR 41“PAIMIO”》designed in 1932

アームチェア41(ブラック) W600 D800 H640 SH330mm ¥416,850 アルテック東京オフィス
曲線美が生かされたアアルトの代表作。大判の合板を曲げてシートを作るという斬新な発想を最新の技術で可能にした。


《STOOL 60・STOOL E60・CHILDREN’S STOOL NE60》designed in 1933

左からスツール60(ラミネートホワイト) φ380 H440mm ¥23,100 スツールE60(リノリウムブラック) φ380 H440mm ¥27,300 チルドレンズスツールNE60(リノリウムレッド) φ380 H380mm ¥27,300 以上アルテック東京オフィス
円い座面にL字の脚をネジ止めしただけのシンプルなデザインで、スタッキングも可能。3本脚の「スツール60 」、より安定性に優れた4本脚の「スツールE60」、子供用サイズの「チルドレンズスツールNE60」と多様に展開。


《CHAIR 611》designed in 1929

チェア611(ブラックウェビング) W485 D490 H800 SH450mm ¥72,450 アルテック東京オフィス
座と背に弾力性のあるウェビングテープを編んだ椅子。 曲げ木の技術が確立される前に作られたモデルのため、フレームは直線的。

《TABLE 81B》designed in 1935

テーブル81B(ホワイトラミネート) W1200 D750 H720mm ¥103,950 アルテック東京オフィス
ホワイトラミネートのシンプルな天板に、木肌が美しいバーチ材のLーレッグをセッティングしたテーブル。



《SCREEN 100》designed in 1936
 

スクリーン100 W2000 H1500mm ¥234,150 アルテック東京オフィス
ゆるやかな波をモチーフに、細長いパイン材を連結したパーティション。木材とは思えないほどの柔らかさが印象的。

《UMBRELLA STAND 115》designed in 1936

アンブレラスタンド115 W270 D230 H475mm ¥42,000 アルテック東京オフィス
積層合板を鋭角に曲げて三角形に仕上げた傘立て。バーチ材と真鍮トレイのコンビネーションが美しい。


《Hand grenade・Bilberry・Golden Bell・Beehive》designed in 1952,1950,1954,1953

左からハンドグレネード φ160 H440mm ¥39,900 ビルベリー φ180 H220mm ¥58,800 ゴールデンベル φ170 H200mm ¥39,900 ビーハイブ φ330 H300mm ¥99,750 以上アルテック東京オフィス
「ハンドグレネード」は、2つのシリンダーを組み合わせたシャープなデザインで接合部からもれる光が秀逸。「ビルベリー」はアシンメトリーなフォルムが特徴で、照らしたい方向に光を向けられる。「ゴールデンベル」はサヴォイレストランのためにデザインしたもの。「ビーハイブ」は、スリットからこぼれる光が印象的だ。


カイ・フランクによるイッタラのテーブルウエア

カイ・フランクは機能的で美しい量産型食器を数多くデザインし、“フィンランドデザインの良心”と呼ばれる。イッタラは、1881年にスウェーデンのガラス吹き職人によってガラスメーカーとしてスタート。ガラス製品は、一般的に透明度を上げるために鉛を使うが、人体や環境に有害な鉛を使わずに透明度の高いガラスを作り上げている。カイ・フランクが「必要な装飾は色だけ」と言うように、機能美に優れたテーブルウエアの数々はシンプルなフォルムで、カラーバリエーションが豊富だ。


カイ・フランク 《タンブラー・シリーズ》 現行製品(プロトタイプ1955年) 「フィンランド展」の展示品 ©Iittala

《Kartio》designed in 1958

左からカルティオピッチャー 950ml (アップルグリーン・ライトブルー・サンド)¥8,400 カルティオグラス(手吹き) 340ml レッド¥5,250 ダークライラック¥4,200 以上イッタラ GINZA
カイ・フランクによってデザインされた、素材と幾何学なフォルムのバランスが完璧のシンプルなグラス。トレンドを超越した伝説のデザインだ。

《Teema》designed in 1981

左から ティーマ プレート φ170mm ¥1,575 ティーマ スクエアプレート W160 H160mm ¥3,675 ティーマ ボウル φ150mm ¥1,890 以上イッタラ GINZA
1948年発表の「キルタ」を原型として、カイ・フランク自身がリデザインして1981年に発表した「ティーマ」は、円・正方形・長方形という3種類の基本的なフォルムで構成されたシンプルな器。


左から ティーマ ティーポット 1L ¥6,825 プルヌッカ ジャー  120mm ¥3,990 プルヌッカ ジャー 60mm ¥2,940 以上イッタラ GINZA
「プルヌッカ」は、ティーマと同じルーツをもつ保存瓶のシリーズ。2011年に「ティーマ」と同色で復刻した。


ティーマ マグ 300ml (ホワイト・ブルー・ブラック・ターコイズ・パールグレー・テラコッタ) 各 ¥2,100 以上 イッタラ GINZA


マリメッコのロングセラープロダクト

大胆なプリントやカラフルな色使いのテキスタイルが特徴のマリメッコは、1951年創業のライフスタイルブランド。 1960年代には、ジャクリーン・ケネディがマリメッコのドレスを愛用していたことで広く知られるようになった。1964年には、マイヤ・イソラがマリメッコのアイコンとなる「ウニッコ(ケシの花)」をデザイン。この花柄プリントが、今日まで長く愛されるテキスタイルとなった。「大胆で個性的なデザイン」という理念のもと、インテリアやファッション、バッグなどさまざまなアイテムのプロダクトを展開し、常に斬新でコンテンポラリーなファブリックパターンを発表している。


静岡市美術館での展示風景

《Pieni Unikko》designed in 1964

PCケース W360 H260 D30mm ¥9,975 オーブンミトン ¥2,520 ともにマリメッコ/ルック ブティック事業部
“小さなケシの花”と訳される「ピエニ ウニッコ」。PCケースはマリメッコファンの間で大人気!

《Unikko》designed in 1964

プレート W150 H120mm ¥2,310 コースター(4枚セット) W90 H90mm ¥4,725 ともにマリメッコ/ルック ブティック事業部
マリメッコを代表する「ウニッコ」のテーブルウエア。食卓のアクセントに使いたい。


《Tasaraita》designed in 1968
 

Tシャツ ¥9,450 マリメッコ/ルック ブティック事業部
キッズ、メンズ、レディスと揃う、タサライサ(横縞)の Tシャツ。ボーダーやドットなど幾何学パターンを得意とするアニカ・リマラのデザインで、ポップ過ぎない北欧らしいカラーパターンが魅力。

《Siirtolapuutarha・ Puutarhurin parhaat》designed in 2009

クッションカバー W500 H500mm ¥6,300 マウスパッド W220 H200mm ¥2,625 ともにマリメッコ/ルック ブティック事業部
「プータルフリン パルハート(最高の庭師)」と 「シィールトラプータルハ(市民菜園)」はともにマイヤ・ロウエカリによるパターンデザイン。繊細なタッチが大胆な柄を上品にみせる。


《Kivet・Pienet Kivet》designed in 1956,1958

ネクタイ ¥14,700 トートバッグ W540 H470 D180mm ¥9,975 ともにマリメッコ/ルック ブティック事業部
規則的に並ぶ石をデザインした「キヴェット」のネクタイ。トートバッグの「ピエネット キヴェット」は“小石”の意。ロングセラーのテキスタイルをファッションアイテムでさりげなく取り入れたい。

《Rasymatto》designed in 2009
 

ノートA5 ¥1,050 クッションカバー W500 H500mm ¥5,250 ともにマリメッコ/ルック ブティック事業部
注目の若手テキスタイルデザイナー、マイヤ・ロウエカリによる「ラシィマット(使い込まれたラグ)」は、カラフル過ぎず取り入れやすいパターンデザイン。



アアルトらを紹介するフィンランド展が全国を巡回中

今回紹介したアアルトらのプロダクトを含む、「フィンランドのくらしとデザイン」展が、青森県立美術館を皮切りに全国を巡回中だ(http://www.finland-design.com/about)。モダンデザインの黄金期を彩ったデザイナーやブランドのプロダクトをはじめ、絵画、文学、建築、工芸など多分野に及ぶ作品約350点を展示。アルテックのプロダクトなど、展示されている現行商品の一部は、ミュージアムショップで購入が可能だ。


アルヴァ・アアルト 《アームチェア「パイミオ」》 1932年
アルヴァ・アアルト美術館 photo ©Maija Holma / Alvar Aalto Museum
アルヴァ・アアルト 《スツールX600》 現行製品(原型1954年) ©Artek