Design
ミラノサローネ 2012 – 1 – 来場者を魅了した日本人建築家による
光のインスタレーション – 1 –
世界中のデザイン関係者が注目するビッグイベント、ミラノサローネ。今年は4月17〜22日の6日間、イタリア・ミラノ市のフィエラ(本会場)とフォーリ(市内会場)で開催された。今年も多数にのぼった展示の中から、いずれも、斬新なアイデアで注目を引いた日本の建築家の作品にフォーカスを当てて4回にわたり紹介する。
今回はSUPPOSE DESIGN OFFICE の谷尻誠さんに、ミラノサローネで行ったインスタレーション作品について話をうかがった。
インスタレーションのテーマは「Touch to turn light into delight」。3.11 を機に「灯りのあり方」や「人とのコミュニケーション」 、そして、「生きる喜び」とは何かを考えようとしたところから生まれたものだという。
変化しつづける作品
この作品のコンセプトは?
「僕たちが行ったインスタレーションは、来た人が会場をつくっていくというコンセプトで、アクリルの商品をつくったときの端材を通路以外の場所一面に張った水の中に置いていく。水は光を通しますが、透明度が高すぎて光らない。でも、水よりも透明度の低いアクリルを水の中に入れると光が反射してまるでアクリル自体が発光体のようなものになるというものです。実際は水の中も光が通っているんですが、アクリルを水に浸けた瞬間にはじめて発光する」
会場に来た人がつくるというのは?
「会場の外に山積みにされたアクリルの中から来場者がひとつ好きなものを選んで好きなところに置いていく。アクリルを置けば置くほど光が灯っていくので、どこで終わりなのか、完成がどういう状態なのかが分からない。作品というのは大抵の場合、完成したものを見てもらうものだし、変化するということもない。でも、このインスタレーションは来た人がつくっていくので、時間とともに会場の風景、つまり作品自体がどんどん変わっていくんですね」
状況を自身でデザインする
インスタレーションの周囲の壁の模様が幻想的ですが、この部分は何でできているんでしょうか。
「周りはアルミ蒸着フィルムと言ってアルミのシートですね。それを両面テープで貼り合わせて送風機で中に空気を送って膨らませています。空気で膨らませているので形が一定せずつねに変わっていきます」
このインスタレーションは、企画を先に立ちあげてから企業の協賛を募るという、通常とは違うプロセスでスタートしたようですね。
「ミラノサローネって、選ばれた人、依頼された人しか自分の作品を出品できないってみんな思っていますが、このインスタレーションでは自分たちでまず企画を立てました。それは仕事のスタンスも同じで、仕事が来る状況自体を自分たちでデザインしていかないと、今の時代、ダメなんじゃないか、そんなところからやってみたんですね」