Renovation
抜群の居心地の良さ実家の銭湯をリノベーション
好きなモノに囲まれた住まい
銭湯「源の湯」を住まいに改築
鈴木さんの住まいがあるのは、千葉市の街道沿いの町。かつては漁師町として栄え、海苔の生産などが盛んだったという。「僕が子どもの頃は、50メートルほど先が海岸でした。今は埋め立てで、海は3キロほど先になってしまいましたけれど」。
鈴木家はこの地で、四代にわたって銭湯「源の湯」を営んできたが、25年ほど前に廃業。その後、しばらく建物を人に貸していたが、約10年前に鈴木さん一家・4人家族の住まいにすることに。
このあたりの建物は強い海風をさけるため、間口が狭く奥に長いつくりになっていたという。銭湯も例外ではなく、「源の湯」は1階が女湯、2階が男湯というちょっと変わったつくりだった。その長い建物の手前半分を、住まいにリノベーションすることになったのだ。
「手前側は、まさにお風呂場だった場所なんです」とのことで、タイルやアルミの窓枠など、ところどころにかつての面影が残る。「設計士さんと相談しながら改築したんですが、もともと古いものが好きなので、楽しみながらざっくりと改築しました」。
広さを楽しむ玄関
存在感たっぷりの4枚の玄関ドアを入ると、広々とした玄関ホールに迎えられる。玄関と階段の一部はコンクリートの打ちっぱなしで、土間にはバイクが置かれ、靴がズラリと並ぶ。
バイク、ヘルメット、靴など、置いてあるものが個性となり、空間を彩る。「特にインテリアにこだわりがあるとかではないんですが、僕もかみさんもかわいいものが好きで、気に入ったものだけを置くようにしています。人からもらったもの、フリ―マーケットで買ったもの、粗大ごみとして出されていたのを拾ったものなど、自然に集まってきたという感じです」。
広い玄関ホールもまた、銭湯時代の名残だ。「お風呂屋さんだったので、玄関はもともと広かったんです。だから、そのままいかしました。ちょうど階段の始まるあたりが番台のあったところです」。
天井高4メートルのリビング
玄関ホールの先の扉の向こうには、光があふれるLDKが広がる。天井高4メートル以上の空間は、実際の面積以上の広さを感じさせる。
「リノベーションにあたって、この天井高をいかした開放感ある空間にしたいと思っていました」。できるだけ広い空間にするために、間仕切りなどは極力外し、壁には白いペンキを塗った。
キッチンは「床はコンクリート打ちっぱなしのままがいい」という妻のリクエストで、玄関から続く土間キッチンに。リビングダイニングとは1段下がっているため、ダイニングに座る子どもたちとの会話もスムーズ。高価なシステムキッチンではなく最低限のシンクをつくってもらい、ガスは五徳をふたつ並べたものと、シンプルなものにした。
アトリエは自分だけの空間
鈴木さんはふだんはモデルとして活躍するかたわら、「源七」という名前で革小物の作家としても活動している。「源七というのは、わが家の屋号なんです。銭湯は廃業してしまいましたが、名前は受け継ぎたいなと思って」。
革制作の場であるアトリエは、中2階の倉庫を自分の手で改造してつくったスペース。長身の源七さんはまっすぐ立てないほど天井が低いが、革や機材が使いやすくレイアウトされ、まるでコックピットのような機能的な空間になっている。「ここは家族の誰も入って来ない場所。まあ、夏暑くて冬寒いからというのもあるんですが(笑)」。
ユニークな柄とビビッドな色が特長の革小物は、使い続けるうちに味わいを増していく。作るのは主に、トレーやスイッチプレートなど、ふだんの暮らしの中で使える小物類。自宅のあちこちにも源七作品が使われていて、空間をよりいきいきと楽しいものにしているのが印象的だった。