Renovation
一軒家を自分好みに彩るヨーロッパへの思いに溢れた
アンティークの館
緑に包まれた洋館
ミモザ、キンモクセイ、サルスベリ…。木々が生い茂る美しいガーデンの奥に、ヨーロッパのアンティークを輸入販売する、門岡さんの館が構える。
「以前は社宅に住んでいたので、好きなものばかりで揃えるのは難しかったのですが、中古を買ってリフォームしたことで、アンティークへの思いが爆発しました」
毎年訪れるヨーロッパで、アンティークを買い付け。趣味が高じて自宅のショップやネットなどで販売するに至った。玄関の門扉を入ったところから、古い洋館を訪れた気分に包まれる。中国出身の芳(ファン)さんは、
「ほとんど私の趣味で。主人とふたりの息子は、私に合わせてくれている感じですね」
できるところは自らリフォーム
築20年以上の中古物件をリフォーム。この家に決めたのは、広々とした玄関が決め手だったとか。
「日本の家って、間口が狭いじゃないですか。ここは玄関前の廊下も、幅が1m80㎝以上あって、こんな広さはなかなかないな、と。一戸建てで育ち、キッチンは1階にあるのがいい、と言っていた主人もここを気に入って、購入することにしました」
リフォームにあたっては、業者にしかできないところは任せて、後は自分たちで手を加えていった。
「部屋中、絨毯が敷いてあったので、まず絨毯はがしから取りかかりました。後は壁のペンキ塗り。これも壁紙をはずすところからやりました。なるべく広く感じさせたいのと、後から変えることもできるという考えから、子供部屋以外はほとんど白で塗りました。手をかけた分、愛着を感じますね」
子供部屋は楽しい空間に
1階はショップとリビング&ダイニング、キッチン、バスルーム、中2階に子供たちのプレイルーム、2階に主寝室と子供部屋、仕事部屋、3階にアトリエ。それぞれの部屋に、芳さんが手を加えた。
「リビングは、ヨーロッパの雰囲気が出るように、壁にモールディングをつけてもらって、ペンキを自分で、あえて剥げた感じに塗りました」
ゴージャスなものが欲しい、と探して見つけたキャビネットには、アンティークの白の食器を陳列。豪奢な貴族の館のような雰囲気を与えている。庭の緑が一望できる子供たちのプレイルームは、まだ幼かったふたりの息子と一緒に飾り付け。手作りの旗が天井にはためく楽しい雰囲気の中に、蚤の市などで買ったオーナメントやボーリングのピン、1930年代フランスのテーブルなどが趣きを添えている。
「子供のベッドルームは強いカラーにしたいと思って、グリーンで塗りました。子供たちも気に入っていますね」
手作りの造りつけの棚も、アンティークの木の板を使ったというこだわりよう。そこに、子供が蚤の市で見つけたミニチュアのフィギュアや、ミニカーなどがディスプレイされている。
「小さいときから、ヨーロッパのアンティーク探しの旅をしてきたので、子供たちも興味を持つようになったみたいで。楽しんでくれているようですね」
ディテールに手を抜かない
2階のベランダの柵は、フランスの古いお城をイメージして特注で作ってもらったもので、苗字の頭文字Kをかたどったデザインが施されている。カーテンも、アンティークのレースを仕入れ、芳さんが自ら手作りしたのだとか。
「オーダーすると高いので、布ものは手作りしています。特にリネンが好きなので、シーツやベッドカバーなども作っています。洗ってそのまま使っても、しわがまた味になるんですよね」
朽ちかけた雰囲気のドアも、ほとんどが船便でヨーロッパから運んできたもの。バスルームの扉まで、アンティークにこだわる。
「日本とはサイズが違うので、なかなか難しいのですが。古いドアがあるだけで、雰囲気が全然違ってくるので、なるべく合うものを見つけてきて工夫して使っています」
アンティークへの尽きない思い
玄関のクラシックなランプから、階段の何気ないライト、フックなどの小物まですべてがアンティーク。豪華なキャビネットには、1点1点、ヨーロッパで見つけて持ち帰った、古い空き箱や香水瓶、ガラスの食器などが大切に飾られている。
「アンティークの中でも、特にフランスのデザインが好きですね。やわらかくて繊細で、色遣いもアジア人には発想できないものがあると思います」
芳さんの悩みは、電化製品が避けられないキッチン。オーブンレンジなどは、一体型にして、なるべくすっきりと隠すようにまとめた。
「電化製品が出ているのって、アンティークの館に似合いませんよね(笑)。冷蔵庫もできれば隠したいんです」
こだわりがつまった空間には、長年買い集めたお宝が収まり切らず、ショップへ流出。それでも、芳さんのアンティーク探しの旅は収まらない。
「今年もヨーロッパに買い付けに行きたいですね。アンティークの家がテーマですから」
まだまだ、古い時代へと進化をし続けていく。