Renovation
住まい+αを楽しむほしかったのは、
みんなが笑顔になれる場所
マンション探しの結果、戸建て志向に
浅草と上野の真ん中あたり。かっぱ橋商店街近くに建つ2階建てが、サノトモユキさんと牧島亜由美さんの住まいだ。「1年ほど前にふたりで暮らすことになって、家を探し始めたんです。当初は都心の駅近のマンションがいいかなと思っていました」と亜由美さんは話す。
しかし、いざ探し始めると、自分たちの予算では、狭くて二人では窮屈な間取りしか無理だということがわかってきたという。「もともと、友達も一緒にみんなで楽しく過ごすのが好きなのに、これでは人を招くのは難しいなと思い始めて、テンションが下がってきました(笑)」。
そこで、ふたりは住まいに求めるものを改めて見つめ直した。「彼はバンド活動をしていて、私は陶芸を続けている。そうした活動をもっと広げていけるようなスペースがほしい」(亜由美さん)。「好きなことを続けながら、多くの人と交流できる場があれば理想的」(サノさん)。こうして、もともと古いものが好きだということもあり、「マンションにこだわらず築年数の経った戸建てもいいんじゃないか」と考えが変わっていったという。
理想的なリノベーション物件に出会う
そうして出会ったのが、現在暮らす建物。「以前は本の装丁を手がける職人さんが住んでいたそうで、1階を仕事場に、2階を住まいにしていたらしいです。それをオーナーさんがリノベーションした状態で、ひと目見てここに暮らしたい! って思いました」(亜由美さん)。「床がモルタル仕上げの1階は、彼女の陶器を展示したり、ライブやワークショップをやったり、いろんな人に使ってもらえるスペースにできるなと直感しました。予算とのギャップは、1階をフリースペースとして友人や知人に使ってもらうことで埋められるかなと思いました」(サノさん)。
オーナーがリノベーションを依頼したのは、東京で開催されたリノベ関連の塾で知り合ったという、香川県在住のデザイナー・高橋めぐみさん。SOHOとして使うことを前提に、1階は多用途に使える空間に、2階はプライベートスペースとして、暮らしやすさも配慮したリノベーションが行われている。「昔の建物の味と新しいセンスのいいところどりなんです(笑)」とサノさんと亜由美さんが話すように、建物の持ち味を活かすリノベーションが行われていたのが、入居の決め手となったという。
古いものへの愛着を感じながら
1階にキッチンがあるため、ふだんの生活では、1階をLDKとして使っている。「ふたりとも、いちばん長くいるのが1階です。1年間暮らしてみて、冬はちょっと寒かったけれど、夏は通りに面した窓を開け放ってビールを飲んだり、なかなかです」(サノさん)。「私は料理が好きなので、家にいるときはほとんどこのキッチンで過ごす感じかな。遅くなっても、夕飯は必ず二人で一緒に作って食べるようにしています」(亜由美さん)。
靴を脱ぎ、急な階段をあがった先の2階は、もともと使われていた建具などがそのまま使われていることもあり、1階以上に懐かしい雰囲気。2つある部屋を寝室とリビングとして使っている。「2階の古い建具を見たときにいいなと感じたんですが、それがもともとあったものだということを知って、ますます愛着がわきました」(サノさん)。
出会いが増えて、生活も一変
当初から思い描いていた、1階を開放するプランも、スペースを「ニコツキ」と名付けて昨夏にスタート。「おひろめの時にミニライブをしたんですが、近所の方もたくさん来てくださって、『ニコツキ』のおかげですんなり地域にとけこめました」(サノさん)。
現在は、月に1度不定期で天然酵母パンや雑貨、古着、作家の手づくり作品までを幅広く扱う「ニコツキ市」を開いているほか、土曜日・日曜日を中心に、さまざまなワークショップや展覧会の場として開放している。「友達が友達を紹介してくれて、この場所に集まってくれる人がどんどん増えています。これまで自分が展示スペースを借りた経験もいかして、気軽に使ってもらえる場にできればと思っています」(亜由美さん)。
この家に暮らしてから、生活が一変したというふたり。「先日はここで味噌作りのワークショップをやったんです。みなさんすごく楽しそうで、一緒にものをつくることで一層仲良くなれるんだなと感じました」(亜由美さん)。「今後も、この場を通じて、たくさんの人と交流して、自分たちの活動の幅も広げていければと思っています」(サノさん)。