Renovation
フレンチシックに大改装アンティークを活かす
手作りアイデアに溢れた家
古びた雰囲気にリメイク
布小物作家の田中佳子さんが、インテリアに手を加え始めたのは、家を購入して10年程が経過した頃。家族が増えて一時考えた引越しを取りやめ、それならば自分好みの空間にしたい、と思うようになったことがきっかけだという。
「購入時は茶系のシックな空間だったのですが、少し明るくしたいと思って、生成りのナチュラルな感じにしていました。でも年齢を重ねるにつれて何か物足りなくなってきて。家具をグレーに塗り替えたりして少しずつ変え、だんだんとフレンチっぽい雰囲気になってきました」
最初に手を加えたのが、“いちばん初めに人が通る”玄関。一か所アレンジしてみたら止まらなくなってしまった。
「昔はアンティークの雑貨を買って揃えればいいと思っていたんです。でも、どんなに素敵なインテリアでも、空間がつまらなかったら台無し。ものを飾るためのベースが何より大事だということに気づきました」
ひと針ひと針手作業で作り上げる、田中さんの作品のように、味わいのある手作りの空間が生み出されていった。
一軒家なら好きなように替えられる
雰囲気を出すために、壁はビニールクロスの上から珪藻土を塗装。たったひとりで天井まで塗り上げた。桟も一度塗った後に色を落とし、わざと剥げかけた雰囲気に仕上げて、壁と天井をつないだ。
「1日あればひと部屋分、塗ることはできました。でも、天井まで塗った後はさすがに首が痛くて、動かなくなりましたね(笑)」
キッチンの棚は上から板を貼り、生成りからグレーにリペイント。キッチンまわりの壁や冷蔵庫の側面には、タイル模様のシートを貼って、無機質な雰囲気をカバーした。
「もともとインテリアコーディネーターの資格を取りたかったのですが、その当時は年齢が低すぎて取れなかったんですね。それからずっと引っかかっていたところがあって。今は自分の家だから好きなように手が加えられるのが嬉しいですね」
手作りのアイデアが満載
自ら空間をリメイクするだけではなく、家具も手作りに挑戦。アンティークのような存在感を醸し出すキャビネットや棚、テレビ台も実は田中さんが作ったものだという。
「理想通りのものがなかなか見つからなかったので、それなら作ってしまおうと。自分で作ればサイズも調整できますし」
自作の棚にディスプレイされているのは、陶器の食器やガラスの小瓶など、骨董市やアンティークショップをめぐって買い集めた雑貨たち。ブロカント(蚤の市)をのぞく時のような楽しさが溢れている。
「古いものに愛おしさを感じるんです。特に好きなのがアンティークの小瓶。見つけるとつい買ってしまいます。大きい家ではないので、小さいものを飾った方が圧迫感もないと思うんです」
庭で育てた植物をドライにしたものも、インテリア小物として効果を発揮。シェード替わりにドライフラワーを裸電球に巻き付けるなど、オリジナルのアレンジが空間を彩っている。
作品づくりを楽しむアトリエ
どこかノスタルジーを感じさせるインテリアは、田中さんの作品の感性とも共通する。2階のアトリエは、そんなもの作りへのこだわりが形になる場所。
「アンティークの布に、立体的なモノグラム刺繍を施す作品を主にしています。小さい時から手芸全般好きでしたが、特に刺繍が好きですね」
もともと和室だったアトリエは、襖の紙をはがして板を貼り、アンティーク風なホワイトにペイント。アンティークの棚や、ツーハンドルチェアなどとともに、シンガーの古い足踏みミシンが目を引く。
「母の代から使っているものですが、私も子供の頃からずっと愛用しています。鋳物って手入れをすれば長く使えるんですね。電動ミシンは自分の波長と関係なく進んでいくのが嫌なんです。足踏みのカタカタという音も好きで、楽しみながら踏んでいます」
夫や子供たちが出かけると、ひとり音楽を流しながら作品づくりに没頭するという田中さん。
「私の好きな空間にさせてもらっていますが、文句も言わないで受け入れてくれる家族には感謝していますね。家で仕事をする時間を楽しんでいます」
古いものに囲まれた空間に、穏やかな時間が流れていく。