Renovation

いきものに学ぶ暮らし ものづくり夫婦が見出した
生のままの居住術

いきものに学ぶ暮らし ものづくり夫婦が見出した ヤドカリに習う住居術。
稲村ヶ崎の海まで徒歩4分、江ノ電稲村ヶ崎の駅までは7分ほど、築年数49年、昭和の戸建てに暮らすのは瀬戸けいたさん、なおよさんご夫婦。住まいは50坪を超える庭があり、総床面積は102m2と余裕の空間が広がる。家主の瀬戸さん夫婦はこの地でデザインレーベル『seto』を手がけており、ここは住居兼仕事場。

「いろいろ探したんですが……結局ここ(鎌倉市内)に落ち着きましたね」

2006年に東京から鎌倉に移り、この物件は2011年から。前回も一軒家だが、今回も戸建てを選んでいる。それには理由があるのだろうか。

「家族との生活と仕事を切り離したくなかったんです。ここは工場に出す前のサンプルを作る職場であり、ショップも兼ねています。これらを両立するのは戸建てじゃないと無理。家を開くというスタイルも戸建てじゃないとできませんしね」


リビングの奥にはショップが見える。そこに隔たりはなく、家を開くスタイルが実践されている。
リビングの奥にはショップが見える。そこに隔たりはなく、家を開くスタイルが実践されている。
1Fのショップスペース。現在は予約制。 http://www.setodesign.jp/
1Fのショップスペース。現在は予約制。
http://www.setodesign.jp/
昭和の建築を活かし改修は一切ナシ。瀬戸流の住まい術です。
昭和の建築を活かし改修は一切ナシ。瀬戸流の住まい術です。


今年の流行予測に“家を開く”というものがある。自宅をショップとして開放するスタイルで、瀬戸さん夫婦はその先駆けとも言えるだろう。

「流行りかどうかはわかりませんが、ショップスペースは以前の家にも設けていました。僕ら夫婦はいきものから学んでものづくりをしています。住居に対しての考えも同じで、生のままの暮らしを実践しています。そして、この家に住むにあたっては、いきものに習い改修はほとんどしていません」

改修ゼロでも何かが違う瀬戸さんの住まい。いきものに学んだ住まいは、いわゆる昭和建築の趣とは異なる個性に溢れている。

「もし、そうした個性がこの家から出ているのであれば……。恐らく前職(イデー在籍時代)で得た経験かもしれませんね。展示会場ってそれこそ千差万別で、それでも“らしさ”というものは打ち出さないとならない。その時の癖みたいなものが抜けていないのかもしれませんね(笑)」


前職、イデー在籍時に手がけたスツール。その上ではしゃぐ愛娘たまちゃん。
前職、イデー在籍時に手がけたスツール。その上ではしゃぐ愛娘たまちゃん。
ダイニングスペースは食事だけでなく、時には打ち合わせスペースとしても使用している。
ダイニングスペースは食事だけでなく、時には打ち合わせスペースとしても使用している。
ユニークな造形のラグも瀬戸さんが手掛けた作品。不思議と昭和建築に溶け込んでいる。
ユニークな造形のラグも瀬戸さんが手掛けた作品。不思議と昭和建築に溶け込んでいる。
壁にかける絵、小物の刺し具合で昭和建築を楽しんでいるのがわかる。
壁にかける絵、小物の刺し具合で昭和建築を楽しんでいるのがわかる。


前職の経験、いきものから学ぶ住まい術。ここでの暮らしの最大のメリットとは何だろうか。

「海も山も近く、自然が豊かな鎌倉という土地柄が最大のメリットかもしれません。昼は子供と磯遊びをし、夕方には釣りをする。仕事をしながらこれらができるというのは都内では考えられませんし、僕らにとっては魅力です。古風だけど行き過ぎていない街の雰囲気もいい。子供が成長していく上でも理想的だと思いますよ」

ただ、一つ気になるのは仕事と生活が近いという点。メリハリをつけるのは難しいと思うのだが……。

「あえて線引きしていないんですよ。なおよが仕事をしている傍で子供は勉強したり、絵を描いています。いわゆる子供部屋というものも、うちでは存在していません。僕の作風にしてもそうで、子供のいたずら書きにインスパイアされたものがあるし、この距離感がメリハリ以上のものをもたらしてくれているんじゃないかな」


なおよさんの仕事場は2階。写真右手前の机は子供の勉強机としても使われている。
なおよさんの仕事場は2階。写真右手前の机は子供の勉強机としても使われている。
ミニチュアすっぽんを卓上で飼育中。いきものから学ぶ瀬戸さんならでは。
ミニチュアすっぽんを卓上で飼育中。いきものから学ぶ瀬戸さんならでは。
ツリーの飾りも子供と一緒にアレンジしたもの。既製品にはないユニークさが部屋を明るくしている。
ツリーの飾りも子供と一緒にアレンジしたもの。既製品にはないユニークさが部屋を明るくしている。
商品制作の過程で生まれた端材でつくった飾りは、子供たちとつくったもの。
商品制作の過程で生まれた端材でつくった飾りは、子供たちとつくったもの。
稲村ヶ崎の海で拾った石をオブジェに。工夫次第でインテリアは面白くなる。
稲村ヶ崎の海で拾った石をオブジェに。工夫次第でインテリアは面白くなる。


子供たちと日々接することで、仕事だけでなくインテリアの端々にユニークなアイデアがちりばめられている瀬戸さんの暮らし。いきものから学び、子供や自然から多大な恩恵を受けている。今すぐ鎌倉に移り住み即実践するのは難しいかもしれないが、素敵に生きるヒントは多い。

「古い住居をリノベーションする人は多いと思うんですが、大きな改修をせずに暮らす方法もあるんじゃないかと。物のレイアウトや装飾次第で個性は出せるし、子供がいれば一緒に楽しめると思うんですよね」

では最後に、この先の展望があれば一言。

「そうですね……。手付かず状態の庭の手入れをしたいですね。このスペースも工夫し甲斐があるんで、暖かくなったら子供と一緒にはじめたいです」


BBQや屋外ホームパーティーが楽しめる広い庭。今後はこの空間のアレンジに家族で挑戦。
BBQや屋外ホームパーティーが楽しめる広い庭。今後はこの空間のアレンジに家族で挑戦。
自宅から徒歩4分で稲村ヶ崎に。恵まれた好立地が羨ましい。
自宅から徒歩4分で稲村ヶ崎に。恵まれた好立地が羨ましい。