Renovation
いきものに学ぶ暮らし ものづくり夫婦が見出した
生のままの居住術
「いろいろ探したんですが……結局ここ(鎌倉市内)に落ち着きましたね」
2006年に東京から鎌倉に移り、この物件は2011年から。前回も一軒家だが、今回も戸建てを選んでいる。それには理由があるのだろうか。
「家族との生活と仕事を切り離したくなかったんです。ここは工場に出す前のサンプルを作る職場であり、ショップも兼ねています。これらを両立するのは戸建てじゃないと無理。家を開くというスタイルも戸建てじゃないとできませんしね」
「流行りかどうかはわかりませんが、ショップスペースは以前の家にも設けていました。僕ら夫婦はいきものから学んでものづくりをしています。住居に対しての考えも同じで、生のままの暮らしを実践しています。そして、この家に住むにあたっては、いきものに習い改修はほとんどしていません」
改修ゼロでも何かが違う瀬戸さんの住まい。いきものに学んだ住まいは、いわゆる昭和建築の趣とは異なる個性に溢れている。
「もし、そうした個性がこの家から出ているのであれば……。恐らく前職(イデー在籍時代)で得た経験かもしれませんね。展示会場ってそれこそ千差万別で、それでも“らしさ”というものは打ち出さないとならない。その時の癖みたいなものが抜けていないのかもしれませんね(笑)」
「海も山も近く、自然が豊かな鎌倉という土地柄が最大のメリットかもしれません。昼は子供と磯遊びをし、夕方には釣りをする。仕事をしながらこれらができるというのは都内では考えられませんし、僕らにとっては魅力です。古風だけど行き過ぎていない街の雰囲気もいい。子供が成長していく上でも理想的だと思いますよ」
ただ、一つ気になるのは仕事と生活が近いという点。メリハリをつけるのは難しいと思うのだが……。
「あえて線引きしていないんですよ。なおよが仕事をしている傍で子供は勉強したり、絵を描いています。いわゆる子供部屋というものも、うちでは存在していません。僕の作風にしてもそうで、子供のいたずら書きにインスパイアされたものがあるし、この距離感がメリハリ以上のものをもたらしてくれているんじゃないかな」
「古い住居をリノベーションする人は多いと思うんですが、大きな改修をせずに暮らす方法もあるんじゃないかと。物のレイアウトや装飾次第で個性は出せるし、子供がいれば一緒に楽しめると思うんですよね」
では最後に、この先の展望があれば一言。
「そうですね……。手付かず状態の庭の手入れをしたいですね。このスペースも工夫し甲斐があるんで、暖かくなったら子供と一緒にはじめたいです」