Renovation
楽しみながらリノベーション小物から空間まで、
“あるもの”を工夫して再利用
友達というのは石沢さんのカメラマン仲間のこと。家に招くときはその家族も一緒だ。多いときは4家族くらいが集まるという。「集まると、男が飲みながら料理を作って女の人はこのテーブルに座って喋っているみたいな感じで。子どもたちはリビングの方で遊んでいます」
0から作るより面白そう
数人でも調理ができる大きめのキッチンスペースとゆったりとくつろげるLDスペース。友人達と楽しく過ごせるスペースを実現した石沢邸は、中古の住宅を購入してリノベーションしたものだ。新築を選ばなかったのはコスト的なこともあったが、新築よりも改修の方に惹かれたのも理由のひとつだったという。
「たとえば柱とか、元からあったものを生かして空間をつくるのが、0からつくるよりも面白そうで…」。ダイニングテーブル近くの収納スペースは、以前出窓だったスペースを作り変えたもので、棚には撮影時に使用する小物などがディスプレイされている。テレビが置かれているスペースも、元は同じく出窓だったところだ。
玄関とダイニングを隔てる壁が途中で折れ曲がり斜めになっているが、この壁、実は中が階段室になっていて、これも空間デザインにうまく生かされている。石沢さん曰く、「新築だとこういうデザインってなかなか思いつかないかないですよね」
家具がきれいに見える家
リノベーションをする際には、「友達が集まりやすい家」とともに、「家具がきれいに見える家」というのも大きなテーマだったそうだ。建築家は、石沢夫妻がすでにもっていた家具がきれいに見えるようにその周囲の空間をデザインしていったという。
内装材には、石沢家の家具には木の素材感が合うとオーク材が選択された。竣工後に新たに加わった家具や家のそここに置かれた小物たちもそのオーク材にとても馴染んで違和感がない。
手作り感覚とリノベーション
家具同様、小物も年季の入ったものがほとんどだが、一部には手を加えてつくったものも。
テレビと同じ棚に置かれたフレームには、モダンアートのパピエ・コレ(コラージュの一種)のようなものが収まっているが、実はこれ、リビングに置かれたスパニッシュチェアの裏に貼ってあったペーパーを使って作ったもの。「椅子の革をメンテナンスするときにはがしたものを、なんかいいなあと思って再利用したもの」だという。
自分の手を動かしてモノを作るのが好きだという石沢さん。キッチンカウンター前の、革と未加工の木からなるシンプルな椅子もお手製で、ソファのクッションはミシンで自ら縫ったものだ。
「ありますね。これ使って作ったら面白いかなみたいな感じ。あるいは、あるものを工夫してなにか違うものにするというか。もったいないというのもあるんですけどね」
石沢邸に心地の良いリラックス感とともに漂うどこか楽しげな雰囲気は、小物の製作から家のリノベーションまで、楽しみながら行ったことから自然に醸し出されているものなのかもしれない。
設計 ファロ・デザイン
所在地 東京都世田谷区
構造 軽量鉄骨造
規模 地上2階
延床面積 119.5m2