Style of Life
好きなものと暮らす ナチュラルだから心地いい
光と風が流れる空間
行き止まりのない部屋を
回廊のようにめぐる
ファッションのメッカ、南青山の静かな路地裏に、アンティークバイヤーとして活躍し、ブームを広めた土器典美さんの自宅がある。夏みかんの木が茂る私道の奥、大きな木製テーブルが備えられた、オープンなエントランスが迎えてくれた。
「自分でラフな図を描いて、建築家の友人に頼んで設計してもらいました。第一は予算内でいかにやりたいことができるか。だから建材などにはこだわりませんでしたが、いちばんこだわったのは光と風、です。光が差さない、風が抜けない家というのは嫌だったんです」
1階は作家さんの展覧会を行うギャラリー「DEE’S HALL」。2階、3階が自宅で、中央の空間は1階から2階まで吹き抜けになっている。居住スペースはそのまわりをぐるりと取り囲むように、回廊状に設計。キッチン、リビング、バスルーム、ベッドルーム、仕事部屋、テラスなど、9つの空間をマス目に分けるように設計した。
空調の関係で仕事部屋とベッドルームだけはドアをつけたが、仕切りは最小限におさえられ、圧迫感のない、風通しのよい空間となっている。窓からは明るい日差しも差し込み、白い壁に反射する。
「窓も既存の安いアルミサッシです。でも、組み方を考えました」
整然とはめ込まれた正方形の窓枠は、四角い箱型の空間ともマッチ。採光を考えて、壁面全体に大きくはめ込むなど、自由にレイアウトをした。家というよりは、アトリエやカフェのような雰囲気だ。
「システムキッチンとか新建材とか、今のものの方が便利で使いやすいのでしょうけど、あまり好きではないんですね。あまりにも使いにくいのは困るけど、少しくらいの不便さはいい。その辺のバランスなんです。空間も、すごくスタイリッシュだったり超モダンな空間は、私にとってはリラックスできないんです。適度に散らかっていても許される、身の丈に合った感じがちょうどいいですね」
「家というのは、街並みにあったものでなければいけないと思うし、その土地の気候に合わせて建てるものだと思うんです。イギリスの家って閉鎖的でしょう? それはその土地に合っているからであって、日本は違います。日本にイギリス風を持ってきてもフィットしないんです」
湿気の多い日本だからこそ、息苦しさのない、開放的な住まいがふさわしい。この時期、土器さんは夜になるとキャンドルを灯して、テラスで過ごす。心地よい風が吹き抜ける中、お気に入りの時間が約束されている。