Style of Life
ものづくりへの思いを結集 光と風と緑。
自然を感じる邸宅
緑道沿いの景観を活かして
緑に囲まれた環境に佇む欧風の一軒家。雑貨や服飾などを扱うライフスタイルショップ「リュバンドティアラ」「ネニル」を営む金澤明美さんの自宅は、インテリア雑誌の1ページのように、洗練されていて美しい。
「緑道沿いに住みたくて、ずっと土地を探していたんです。家の前に公園、横に畑、裏に緑道のあるこの土地は、望み通りの場所でした」
借景を活かして家の造りはH型に。玄関を挟んで左手にアトリエなどの小部屋、右手にリビング、ダイニング、キッチン。中央の玄関を入ると、裏庭のテラスの向こうに、緑道のグリーンが広がっている。
「まわりの環境が変化することがないので、オープンな造りで、贅沢に景観が楽しめるようにしたいと思いました。テーマは光と風と緑。外からの光が各部屋に入って風が通り抜け、自然を感じられる、そういう家を造りたかったんです」
空間づくりの楽しさ
ウッドデッキの庭は、リビングに隣接したアウトドアリビングに。部屋と庭が一体となったスペースが、家に居ながらにして自然を感じさせてくれる。リビングは、玄関フロアからは2段ほど下がった位置にあり、そのせいか落ち着く雰囲気だ。
「なるべく広い空間に見せたかったので、天井を高くしようと思ったのですが、高さ制限があってダメだと言われて、“じゃあ、下げられない?”と。床も、広幅のものにして空間に広がりを感じられるようにしました。あとこだわったのは天然素材。床はパインの無垢材にオスモの塗装で体に優しいものを選び、壁は珪藻土にしました。自然のものを使うのが、自分の中の基本なんです」
家の設計にあたっては、ラフを描いてイメージを伝え、時間をかけてプランニングしていった。数々の自社店舗のデザインにも携わる金澤さんだが、空間づくりそのものを考えることが好きなのだという。
「店舗をもっとリアルにしたのが家。空間に彩りを添えたり、スパイスやエッセンスを加えたり、色々と考えていく作業は好きですね」
その原点は、子供の頃にあるという。
「両親が米軍基地の中でテーラーをやっていたんです。私もいつも基地の中で遊んでいて、アメリカ人のお家に遊びに行ったりしていました。そうするとお部屋の中を全部見せてくれるんですね。文化の違いも感じましたし、ペンキの匂いが漂って、彼らが家に手を加えながら暮らしていることもわかってきました。その経験が私の空間づくりを楽しむ感覚につながったみたいですね。小さい頃からインテリアの洋書を見たり、ブロックを使って家を作ったりして、空想していました」
アイデアを活かしてディスプレイ
そんな金澤さんの、空想好きが発揮されるのがアトリエ。アンティークの棚やランプなど、各国から買い集めたシャビーなインテリアや雑貨が散りばめられた小部屋で、商品としても立ち上げている革小物などを作る時間を楽しんでいる。
「平日は会社にいるので、ここで過ごす時間はあまりないのですが、家にいるときはよくアトリエを使います。ものづくりが好きなので、自分の家での仕事場として大切なお部屋ですね」
この日は、庭で育った植物のつるをランプシェードに巻いてアレンジしていた。少し手を加えることで、気分も変わるのだとか。そんなアイデアが、家中、至るところに満載されている。
「色々なものを飾って楽しめるように、ニッチもたくさん作りました。でもちょっと作りすぎたかな?」
アンティークのシャンデリアやキャビネット、チャーチチェア、ステンドグラス…。ヨーロッパを中心に、各国から買い集められた逸品も目白押し。年代を感じさせる重厚なインテリアが、空間に趣きを添えている。
家族の温もりを感じる家
2階は主寝室と、3人の子供たちの子供部屋。金澤さんは中学生から大学生まで、3人の姉妹の母親でもある。
「子供部屋はIKEAや無印良品で、私がコーディネートしました。子供は成長していくので、後から自分で好きなように替えられるのがいいんじゃないかと思って。案の定、最近は壁紙を貼り替えたい、と言っていますね」
主寝室の上には、夫の隠れ家スペースが。
「主人がひとりになれる場所が欲しいと言って、設けました。本を読んだり、音楽を聴いたり、主人にとっての大切な空間になっているようです」
白を基調とした主寝室のキャビネットの上には、夫からのプレゼントである手作りのアクセサリーハンガーが。海で拾ってきた流木を使って作られたもので、オブジェのように飾られている。そんな家族の愛情も、この家に温かさを与えているようだ。
ものづくりへの思い
「家を建ててからの10年は、子供が育っていく過程でしたが、これからは変わっていくでしょうね。これまでよりも、夫婦で過ごす時間が増えていくかもしれません。そうなると、家の様子も違ってくるでしょうね」
庭で植物の剪定をしながら、そう語る金澤さん。忙しい日々の中で、庭の手入れをする時間が、ストレスを解消してくれるのだとか。2年前、外からの目隠しのために設けたガーデンシェットやぶどう棚に、木漏れ日が降り注ぐ。
「家は3軒建てて成功する、と母から聞きました。ここは2軒目なのですが、確かに、今ならこうしたい、という思いもありますね」
仕事面では、ショップのお客さんの、こんな家に住みたい、という思いを活かしたモデルハウスやスタジオ計画も進行中。金澤さんの、空間づくり、ものづくりへの思いは尽きないようだ。