Style of Life
幅広い活動に、使い勝手のいい家生活から自然に生まれた
2つのリビング
夫の紘良さんは実家がお寺で、紘良さんは法事法要を行うとともに、お寺に付属する保育園の園長さんも務める。朝から夜の8時頃まで主に保育園の仕事をして帰宅した後には音楽活動も行っている。演奏と作曲を手がける音楽は、子供向けの音楽だが、大人もじっくり聴けて一緒に楽しめるものだ。
幅広い夫妻の活動と2つのリビング
親子で音楽を楽しむイベントなどに呼ばれるとライブを行う。「ライブが多いときは1週間に1回ぐらいあって、バンドメンバーがここに集まって平日の夜に練習をして土日にライブをやるような感じです」。バンドではチェロを担当し、メンバーの4人ともに演奏とともに歌を歌う。
お寺では本堂でライブが行われることも。海外アーティストがツアーのファイナルを行ったりもする。最近では、ジブリの映画『かぐや姫の物語』の主題歌を手がけた二階堂和美さんのライブも行われたという。
こうしたこの家の生活から「自然に生まれてきた部屋の配置」として、建築家の中佐さんが考えたのが、2つのリビングを廊下なしで子ども部屋と寝室でつなぐというものだった。紘良さんが音楽活動をするスペースは地下に納めた。2つのリビングは、ひとつが対外的な仕事などにも使用し、もうひとつが家族だけのもの。外部の人が訪れるほうのリビングは玄関を入ってすぐの奥に細長いスペースでキッチンも併設されている。
表側のリビングは、訪れた人たちとお茶を飲みながらくつろいでお話をしたりしたいということから、カフェみたいな感じのつくりにした。そういえば、キッチンカウンターはカフェのカウンターのようだが、部屋を大きく2つのスペースに分けるこの長いカウンターは、デザイナーなどと複数の人で雑誌作りなどの作業をすることも想定したものだという。
家のいちばん奥に配置されたもうひとつのリビングのほうは、対照的に、親子3人のためだけのこじんまりとした親密空間。部屋の隅に地下の音楽室へと降りる階段が配されたこのリビングには、壁際に置かれたベンチを囲むように大量の音楽CDを収納した棚とギターなどが置かれて、音楽の雰囲気にも包まれている。
仕上げにこだわる
部屋の配置は建築家にお任せだったが、仕上げにはこだわって具体的なリクエストを出した。
「けっこうやりにくい施主だったと思うんですが、雑誌や海外の写真集など膨大な資料を集めて渡しました。それで、こういう感じの壁にしてほしいとか。フローリングはこうだとか。さらに、汚れてもいいからとにかくベニヤに色を塗っただけにしてほしいとか」。お店のディスプレイなどを写真に撮ってきたものも参考資料として渡したという。
さらには、ヨーロッパに1年ほど2人で滞在し向こうのお宅にお邪魔した時の体験も活かされているという。「家の中にポップな場所があったりアクセントがあったりというのはすごく参考になってます」と紘良さん。
「ちょっと改造すると思いますが、息子がもっと大きくなったらそういうことが出来るかなと思っています」と紘良さん。「地域の方たちとコミュニケーションするというのが僕のひとつの仕事だしライフワークですが、その方たちが集まってこれる場所がこのあたりにはない。なので、そういう場所にできたらいいなと思っています」
設計 中佐昭夫+田中知博/ナフ・アーキテクト&デザイン
所在地 東京都町田市
構造 木造+RC造
規模 地上1階地下1階
延床面積 101.96m2