幅広い活動に、使い勝手のいい家生活から自然に生まれた2つのリビング

幅広い活動に、使い勝手のいい家生活から自然に生まれた
2つのリビング

「シンプルにつくってほしい」。それと、「僕らの生活を基盤にしてそこから自然に生まれてきた部屋の配置を考えてほしい」というのが齋藤夫妻からの建築家へのリクエストだった。

夫の紘良さんは実家がお寺で、紘良さんは法事法要を行うとともに、お寺に付属する保育園の園長さんも務める。朝から夜の8時頃まで主に保育園の仕事をして帰宅した後には音楽活動も行っている。演奏と作曲を手がける音楽は、子供向けの音楽だが、大人もじっくり聴けて一緒に楽しめるものだ。


玄関入ってすぐのリビング。感じのいいカフェのような空気感が漂う。

玄関入ってすぐのリビング。感じのいいカフェのような空気感が漂う。

アンティークのテーブルと椅子が並んでゆったりと落ち着いた雰囲気を醸し出している。

アンティークのテーブルと椅子が並んでゆったりと落ち着いた雰囲気を醸し出している。


幅広い夫妻の活動と2つのリビング

親子で音楽を楽しむイベントなどに呼ばれるとライブを行う。「ライブが多いときは1週間に1回ぐらいあって、バンドメンバーがここに集まって平日の夜に練習をして土日にライブをやるような感じです」。バンドではチェロを担当し、メンバーの4人ともに演奏とともに歌を歌う。

お寺では本堂でライブが行われることも。海外アーティストがツアーのファイナルを行ったりもする。最近では、ジブリの映画『かぐや姫の物語』の主題歌を手がけた二階堂和美さんのライブも行われたという。


キッチンのカウンター越しに見る。

キッチンのカウンター越しに見る。

こちらのテーブルは、イギリスの家庭で使われていたもので100年くらい前のものという。

こちらのテーブルは、イギリスの家庭で使われていたもので100年くらい前のものという。


妻の美和さんは、子育てのかたわら紘良さんとともに『BALLAD』という雑誌の企画・編集を行っている。発行はお2人が運営するsaticono-books。クオリティが高く、こだわりの雑誌作りが誌面からよく伝わってくる。2008年からスタートし、これまでに3冊を刊行。「子育てしながらだったので1年くらいかけてつくってもう1年で売ってというようなスパンで出しています」と美和さん。

こうしたこの家の生活から「自然に生まれてきた部屋の配置」として、建築家の中佐さんが考えたのが、2つのリビングを廊下なしで子ども部屋と寝室でつなぐというものだった。紘良さんが音楽活動をするスペースは地下に納めた。2つのリビングは、ひとつが対外的な仕事などにも使用し、もうひとつが家族だけのもの。外部の人が訪れるほうのリビングは玄関を入ってすぐの奥に細長いスペースでキッチンも併設されている。


お2人がつくった雑誌とCD。紘良さんはバンド以外でソロ活動も行っている。ソロではギターを弾くという。

お2人がつくった雑誌とCD。紘良さんはバンド以外でソロ活動も行っている。ソロではギターを弾くという。

オシャレなカフェのように、子供向けの海外の絵本などがきれいにディスプレイ。

オシャレなカフェのように、子供向けの海外の絵本などがきれいにディスプレイ。

リビングのコーナーには、海外アーティストとの記念写真や紘良さんの音楽イベントの際につくられた焼き物が置かれる。

リビングのコーナーには、海外アーティストとの記念写真や紘良さんの音楽イベントの際につくられた焼き物が置かれる。

美和さんは、晴都(はると)くんが座っているこのソファで「夜、好きな本を読んで静かな時間を過ごす」のが好きという。

美和さんは、晴都(はると)くんが座っているこのソファで「夜、好きな本を読んで静かな時間を過ごすのが好き」という。


「この配置は僕らの生活に密着していて、たくさんの友人が遊びに来たりとか打ち合わせやちょっとした仕事は表のリビングでやって裏のほうは私生活と明確に分かれていて、使い勝手がとてもいいです」と紘良さんは話す。

表側のリビングは、訪れた人たちとお茶を飲みながらくつろいでお話をしたりしたいということから、カフェみたいな感じのつくりにした。そういえば、キッチンカウンターはカフェのカウンターのようだが、部屋を大きく2つのスペースに分けるこの長いカウンターは、デザイナーなどと複数の人で雑誌作りなどの作業をすることも想定したものだという。

家のいちばん奥に配置されたもうひとつのリビングのほうは、対照的に、親子3人のためだけのこじんまりとした親密空間。部屋の隅に地下の音楽室へと降りる階段が配されたこのリビングには、壁際に置かれたベンチを囲むように大量の音楽CDを収納した棚とギターなどが置かれて、音楽の雰囲気にも包まれている。


家のいちばん奥につくられた家族だけのためのリビング。左の棚にはCDがぎっしりと詰まる。

家のいちばん奥につくられた家族だけのためのリビング。左の棚にはCDがぎっしりと詰まる。

ドラムを習っているという晴都くん。演奏する様子を紘良さんが後ろでやさしく見守る。

ドラムを習っているという晴都くん。演奏する様子を紘良さんが後ろでやさしく見守る。

奥のリビングから表側のリビングを見る。途中の子ども部屋にはアクセントとして黄色が塗られている。

奥のリビングから表側のリビングを見る。途中の子ども部屋にはアクセントとして黄色が塗られている。

地下室の紘良さん。ここで作曲も行う。「上から光が落ちてくるし潜って水中で作業をしているような気持ちになります」。

地下室の紘良さん。ここで作曲も行う。「上から光が落ちてくるし潜って水中で作業をしているような気持ちになります」。


仕上げにこだわる

部屋の配置は建築家にお任せだったが、仕上げにはこだわって具体的なリクエストを出した。

「けっこうやりにくい施主だったと思うんですが、雑誌や海外の写真集など膨大な資料を集めて渡しました。それで、こういう感じの壁にしてほしいとか。フローリングはこうだとか。さらに、汚れてもいいからとにかくベニヤに色を塗っただけにしてほしいとか」。お店のディスプレイなどを写真に撮ってきたものも参考資料として渡したという。

さらには、ヨーロッパに1年ほど2人で滞在し向こうのお宅にお邪魔した時の体験も活かされているという。「家の中にポップな場所があったりアクセントがあったりというのはすごく参考になってます」と紘良さん。


齋藤夫妻が出版している雑誌『BALLAD』。ヴィジュアルにも凝ってお2人のこだわりがよく伝わるつくり。

齋藤夫妻が出版している雑誌『BALLAD』。ヴィジュアルにも凝ってお2人のこだわりがよく伝わるつくり。

木のドアを入るとすぐリビングが現れる。

木のドアを入るとすぐリビングが現れる。

表側リビングの奥から玄関のほうを見る。

表側リビングの奥から玄関のほうを見る。

紘良さんの音楽活動を象徴するような入り口近くのモビール。

紘良さんの音楽活動を象徴するような入り口近くのモビール。

紘良さんは、朝の光の中、ここにヨガマットを敷いて体操をするのが好きという表。

紘良さんは、朝の光の中、ここにヨガマットを敷いて体操をするのが好きという。


ゆくゆくは表側のリビングをカフェにすることも考えているという齋藤夫妻。

「ちょっと改造すると思いますが、息子がもっと大きくなったらそういうことが出来るかなと思っています」と紘良さん。「地域の方たちとコミュニケーションするというのが僕のひとつの仕事だしライフワークですが、その方たちが集まってこれる場所がこのあたりにはない。なので、そういう場所にできたらいいなと思っています」


齋藤邸
設計 中佐昭夫+田中知博/ナフ・アーキテクト&デザイン
所在地 東京都町田市
構造 木造+RC造
規模 地上1階地下1階
延床面積 101.96 m2