Style of Life
ナチュラルに彩りをプラス屋根裏アトリエのある
創作空間に暮らす
自分で彩る白い箱
アクセサリー作家の柿岡さんが目指したのは、四角い白い家。
「初めは何もないシンプルな家にしようと考えました。そうしておくと、後からイメージを自分で膨らませていけると思ったんです」
白い箱のような空間は、柿岡さんが創りあげる作品のように豊かな感性にあふれている。
「1階は生活スペースなので、北欧っぽくすっきりとした感じにしましたが、2階のベッドルームと3階のアトリエは自分の好きなテイストにまとめました」
ナチュラルな白い空間に、アイアンの素材感を活かしたインテリア、長年買い集めたアンティークの雑貨などが、味わいのある雰囲気を醸し出している。
天然素材にこだわる
「家を建てるとき、最初に考えたのは“ゴミになる家”でした。断熱材も新聞紙がもとになっているものを使用してもらったんです」
化学的なものを含まず、燃やしても環境に影響しない素材を使うことが希望だった。
「特にエコとか考えているわけではないのですが、新築時の化学物質の匂いがダメなんです。だから天然素材にこだわって、壁には珪藻土、床は無垢のオーク材をすべての部屋で使いました」
外出先で頭痛がしていても、家に帰ってくると不思議と治ってしまうのだと言う。犬2匹、猫1匹を室内で飼っているが、匂いが感じられないのも自然素材のためかもしれない。
ペットと共存できる家
「犬との生活をメインに考えていて、犬仕様の家にしたい、というのもありましたね」
間取りは、散歩から帰ってきたときの動線や、犬や猫の動きやすさに配慮した。例えば階段の幅や高さ、トイレの置き場所…。
「バスルームはテラスに隣接させて、犬を洗ったらすぐにテラスに出られるように、と考えました」
リビングからも眺められるウッドデッキのテラスでは、オリーブやシマトネリコの木、クリスマスローズやミニバラなどを栽培。開口部も大きく取られていて、入浴しながらグリーンを眺め、露天風呂気分を味わうことができる。
「家と外との境目を取り払いたいと思ったんです。家にいても風を感じられたり、外とのつながりを感じていたいなと。扉を開けてお風呂に入っているときは、解放感があって気持ちがいいですよ」
都心にありながら、まわりはお寺の多いのどかな環境。境内の緑も借景になり、静かでゆったりとした時間が流れていく。
金属の無骨さを添える
「1階ですべての生活を終えるつもりで考えていて、2、3階はプライベートな空間、極端に言えばなくてもいい空間と思っていました」
とはいえ、壁に造りつけたニッチ、タイル貼りの洗面など、建築当初から自分のイメージこだわってプランニングされたことが伺える。
「洗面コーナーは清潔感がありつつ、古びた感じを出したいと思いました。蛇口もアンティーク風のものを探したのですが、いぶしたゴールドだと狙いすぎかなと。自然に見えるシルバーにして取りつけてもらいました」
ドアは一部をくり抜いてすりガラスをはめ込み、階段の鉄製の手すりには木を貼り合わせた。
「手に触れるところは温かい素材がいいなと思って。細かいところに注文をつけたので、職人さん泣かせでしたね。基本的にはナチュラルが好きなのですが、そこに金属が組み合わさっているような、どこか無骨な雰囲気が好きなんです。家具なども空間に似合うものを古道具屋さんなどで見つけて揃えました」
アンティークの白い棚や、木の台に錆びた金属の脚を組み合わせた机。そこに柿岡さんのオリジナルの作品や、その材料などが彩りを添えている。
アトリエで自分をリセット
「仕事は2階のベッドルームか、3階のアトリエで行います。巾着に素材を入れて、いつもお気軽に持ち運んで作業をしていますね」
屋根裏部屋のような3階のアトリエは、天窓から差し込む日差しが温かい。
「天然石や皮、シルクなどの自然素材、自分で染めたリボンなどを使って、アクセサリーを創っていきます。最近はモロッコ風に、色を加えたものが多いですね」
傍らにはいつも絶やさないという生花が。アンティークのキャビネットや、母の代から使っているというミシンなどが、漆喰の空間に溶け込む。
「アトリエを持てたことは幸せです。平日は会社で仕事をしていますが、ここで作業をする時間は気持ちががらっと変わるんです。アクセサリー制作は、私にとって自分をリセットする時間になっていますね」
自分の感性で統一した空間が、創作への意欲を生んでいるようだ。