透明感のある美術館のような空間アート感覚漂う家でカフェを開く

透明感のある美術館のような空間アート感覚漂う家で
カフェを開く

「どちらかというと生活に建物を合わせるのではなくて、建物に私たちが合わせる」。そういうつもりで家づくりに臨んだと話すのは竹内邸の奥さん。 

美しい空間がほしかったという奥さんはこう続ける。「その空間の中にいて自分たちが幸せになれるというか。空間からもらえるエネルギーというのがすごくあると思っているので、そういう空間の中にいたいっていう思いがありましたね」 


右が入口。取材にうかがったのが日曜だったためカフェを営業中であった。入ってすぐ目の前にあるテーブルにはお菓子やコーヒーを入れる道具一式ほかさまざまなまものがセンス良く配置されていた。

右が入口。取材にうかがったのが日曜だったためカフェを営業中であった。入ってすぐ目の前にあるテーブルにはお菓子やコーヒーを入れる道具一式ほかさまざまなまものがセンス良く配置されていた。


アトリエかつカフェでもある美術館のような空間

しかし、こういう強い思いがありながらも、デザインに関しては、建築家の坂野さんに任せて、細かな要望は出さずに、「アトリエ、カフェ、美術館のような空間」を実現してほしいということをメインでお願いしたという。

竹内邸は1階がその「アトリエ、カフェ、美術館」を兼ねた空間になっているが、建築家に任せる夫婦の姿勢は徹底していて、1階と2階をそれぞれ何に使いたいという要望さえも出さなかったという。「作業をする場所が必要なこととカフェをやるというのをお伝えして、1階と2階をどうしてほしいというのはまったく言ってなかったと思います」と竹内さん。


奥さんは、この場所に立って外を眺めるのが好きという。

奥さんはこの場所に立って外を眺めるのが好きという。

階段前から見る。左の、キッチンなどの入る楕円形スペースの上はバルコニーで、上の窓を通して公園の風景を眺められる。

階段前から見る。左の、キッチンなどの入る楕円形スペースの上はバルコニーで、上の窓を通して公園の風景を眺められる。


空間を“仕上げる”小物たち

1階は楕円状につくられたキッチンなどの周りをカフェとアトリエとダイニングを兼ねた空間が囲んでいるが、同じ美術大学出身で映像やデザインを手がけるお二人の美意識によって独自の世界へと仕上げられている。

空間全体からは心地の良い軽やかさと透明感のようなものが感じられるが、それらは建築とともに、家具や空間のそこここに置かれている小物たちの存在がとても大きいように感じられるのだ。小物たちのほうの選択は奥さんが主に担当されたという。

デザインを手がけるお奥さんの選択眼は繊細かつ的確だ。「基本的には、好きなモノを集めた感じですね。1点ですごいインパクトのあるものとかではなくて、集まった時に全体の雰囲気が出来上がるようなものを選んでいます」


奥さんのお母さんがつくられたシュトーレンなどが入ってすぐのところに並べられていた。

奥さんのお母さんがつくられたシュトーレンなどが入ってすぐのところに並べられていた。

外には公園が広がる。正面の大きな木はサクラの木。

外には公園が広がる。正面の大きな木はサクラの木。
 

りんごのケーキの周りには、公園で集めた木の実がかわいらしく配置されていた。

りんごのケーキの周りには、公園で集めた木の実がかわいらしく配置されていた。

楕円形スペースに開けられた小窓からコーヒーを入れる竹内さんを見る。

楕円形スペースに開けられた小窓からコーヒーを入れる竹内さんを見る。

ペルーという豆でいれていただいたコーヒーは格別の味わい。カップとソーサーは作家もので、選択眼にセンスが光る。

ペルーという豆でいれていただいたコーヒーは格別の味わい。カップとソーサーは作家もので、選択眼にセンスが光る。

スコーンの入れられたボウルのそばにクルミの実がさりげなく置かれていた。

スコーンの入れられたボウルのそばにクルミの実がさりげなく置かれていた。

カフェのメニューも、この空間にマッチしたテイストで手書きでつくられている。

カフェのメニューも、この空間にマッチしたテイストで手書きでつくられている。


ふだんは作品制作の場

お二人ともにメインの仕事を他にもっているため、1階でのカフェの営業は日曜のみ。カフェ部分はふだんは奥さんの陶器などの作品制作に主に使われているという。「土をこねたりとか、妻の作業場みたいになっているんですね。私の方は作業スペースはいらないので奥のほうでやったりしています」と竹内さん。

細々したモノが多く置かれているが余計だと思われるものは一切ない、そんな印象の空間は、なるべくシンプルにするというコンセプトが徹底されている。ライティングレールさえも、邪魔に感じられるという理由で採用されなかったというが、こうしてつくり上げられた空間は作品制作においてもとてもいい具合に作用しているようだ。

「ボーっとできる空間なので、そういう時にいいアイデアが浮かんだりしますね」と竹内さん。制作時にこの空間に触発される感じがあるという奥さんは「わたしは環境からすごく影響を受けるタイプなので、この空間のあり方は重要ですね」と話す。家具や小物たちによって自分たちで空間に施した最後の仕上げは、カフェのためだけでなく、自分の制作のためでもあったわけだ。


しっかりしたつくりの木の階段が安心感を与える。右下が奥さんの作業テーブル。

しっかりしたつくりの木の階段が安心感を与える。右下が奥さんの作業テーブル。

公園から見て右側の壁面。チェストの上の窓からもサクラが見える。

公園から見て右側の壁面。チェストの上の窓からもサクラが見える。

奥さんの作業テーブルの上には、制作中の、フランスの伝統菓子の中に入れる陶器の人形が置かれていた。

奥さんの作業テーブルの上には、制作中の、フランスの伝統菓子の中に入れる陶器の人形が置かれていた。

2階の正面(公園)側壁面につくられた洗面スペース。右に置かれているのは洗面ボウル。

2階の正面(公園)側壁面につくられた洗面スペース。右に置かれているのは洗面ボウル。


サクラの中で…

取材時にコーヒーをいただいたが、ペルーという豆をひいて入れてくれたそのコーヒーの味は格別だった。カフェを開く前に1年間コーヒーの入れ方を研究したという竹内さん。いただいたコーヒーは、えぐみを出さない方法で入れたものだという。コーヒーでは今まで味わったことのない軽やかな透明感が空間の印象と絶妙にマッチして、口に含んだ瞬間に至福の感覚が訪れた。

公園に開かれたカフェは、公園の散策につかれた身体を休めるのにちょうどいいが、ここを訪れた人は空間とコーヒーに醸し出しだされるこの軽やかな透明感に大いに癒されるに違いない。


2人が望んだ美術館のようなスペースに、奥さんの好きな小物たちを配置してつくられた軽やかな透明感漂う空間には、訪れた人に癒しを与えるようなやさしさが感じられる。

2人が望んだ美術館のようなスペースに、奥さんの好きな小物たちを配置してつくられた軽やかな透明感漂う空間には、訪れた人に癒しを与えるようなやさしさが感じられる。


家の前には立派なサクラが立っていて、サクラの季節に入口の戸を開けるとその中にいるような感覚があって素晴らしく、夜には夜桜も楽しむことができるという。

陽気が良くなってサクラの咲く頃になったら、また訪れて美味しいコーヒーをいただきながらこの軽やかな透明感のある空間を堪能してみたい。そのように思った。


カフェの名前はOeuf(ウフ)。仏語で卵の意味で、キッチンなどを囲む壁の形から命名された。日曜の11~17時が営業時間。

カフェの名前はOeuf(ウフ)。仏語で卵の意味で、キッチンなどを囲む壁の形から命名された。日曜の11~17時が営業時間。

サクラの木の脇から見る。2階の左側は外部テラスになっている。

サクラの木の脇から見る。2階の左側は外部テラスになっている。


竹内邸(ウフ)
設計 フラットハウス
所在地 東京都三鷹市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 79.36 m2