Style of Life
古い家とアンティークの融合空間と日常を愉しむ
天性の感性が冴える
古いものの趣きを活かして
人気カフェのオーナー&シェフとして活躍するロシャン・シルバさん。アパレルブランドの立ち上げで来日。今や空間のデザイナーとしても、服やアロマなどオリジナル商品の開発でも注目されている、まさに衣・食・住のスペシャリスト。その自宅に伺うと、カフェと同じくヨーロッパの田舎を思わせる素朴で穏やかな空気が流れていた。
「古いものが好きなので、家も店舗も探したのは古い物件でした。木の持つ味わいや香りが好きなんです」。
日本の住宅の趣きを残しながら、自ら手を加えられるところは加えて、ヨーロッパのアンティークを中心にインテリアをコーディネート。1歩足を踏み入れると東京ではない異空間に迷い込んだよう。
味を引き出すDIY
「イタリアのパヴィアに住んでいたことがあるのですが、そこのおばあさんの家が、味があって素敵だったんです。東京に来てもその雰囲気を大事にしたいと思いました」。スペイン人の父とスリランカ人の母を持ち、イタリアで育ったシルバさん。古いものを大切にし、豊かな生活を楽しみたいというDNAは身体中に流れている。
「でもイタリアは僕にとっては色的に少し強いかな。もう少しシンプルな方がいいと思いました」。リフォーム、DIYで誕生した空間は、やさしい光と空気感が全体を包み込む。
「1階の廊下には光が差すように、テラスにつながる壁と、2階の床に窓を取りつけました。階段の壁にはディスプレイスペースが欲しいと思って、穴を開けて棚を作りました」。暗い廊下が続く空間だったと思われる1階が、この改築とアンティークの調度品によって、光が通り抜ける洋館のような雰囲気に。
「昔の家の造りって面白いし、和風の空間も残したいと思って」。2階のリビングはあえて砂壁を残し、天井も昔のままに。ガジュマルの木とペルシャ絨毯、フランスのアンティークのベッド…。無国籍に取り入れられたインテリアが不思議となじんで、癒しを感じさせる独特の空間になっている。自分で黒くペイントしたという窓枠や鴨居なども、家全体のアクセントとなりつつ温かさを添える。
幸福に包まれる食卓
「どこかで学んだわけでもないし、センスですね」と言うのは妻の裕子さん。「コーディネートのバランスや抜き方が普通の人と違う。感覚が飛び抜けているなと思います」。素材や色、形の選び方から合わせ方まで、シルバ邸を真似しようとしてもなかなかそうはいかない。
「大事にしているのは素材ですね。家具も食器も生地も、素材に対する思い入れは強いです」。シルバ邸では食器もすべてアンティーク。18、19世紀のものを普段使いしている。「使わないものは買いません。その代わり、どんなものでも壊れたら修繕して長く使います。子供たちも小さいときから当たり前にアンティークを使っているので、何が本物かが分かっているようですね」。
天井を壊し、梁をむき出しにしたダイニングは、アンティークのベッドカバーを使ったというカーテンを通して、やさしい光が食卓に届けられる。
「ここでいつも、家族みんなで食事をする時間を大切にしています」。料理は裕子さんがつくるスープや煮込みなどの家庭的なもの。毎朝、シルバさんがカフェで焼きあげるパンも食卓を飾り、暖かなムードが漂う。
心地よい空間を求めて
「好きな物を大事にして心地よさを求めてきたら、今の生活につながってきた感じですね。仕事に関しても、今何が流行っているかとリサーチをしたわけではないんです。やりたいことをやってきたら、どんどん広がってきました」。
そしてとうとう、今度はホテルをプロデュースすることに。「宮古島の近くに島を買ったんです。今、空間からすべてを自分でプランニングしているところです」。
何風というのではなく、心地よいと感じるホテルがシルバさんの目指すものだとか。「幼い頃、漠然とホテルをつくりたいと思ったことがあって。今考えると、これまでやってきたことが全部つながっている気がしますね」。
「この空間はどうしたらもっと素敵になるんだろう」といつも考えてきたというシルバさん。ご自宅もそんな作品のひとつのように思えた。