暮らしのデザインを楽しむライフスタイルが充実人が集まる、風通しのいい家

暮らしのデザインを楽しむライフスタイルが充実
人が集まる、風通しのいい家

環境と地形を活かしたオープンな家

「この土地を見つけてひと目惚れ。衝動買いしてしまったんです」

桜とけやきの並木の連なる、のどかな住宅街の突き当たり。広々としたスペースを挟んで、N夫妻の家はある。

「目の前のこの謎のスペースもいいし、奥に向かって扇形に広がる、高低差のある土地もいい。南側に広く面しているので、日当たりもよくて、庭づくりも楽しめる。私たちにとって、まさに願ったり叶ったりの土地だったんですね」

設計は、調べに調べた結果、矢作昌生建築設計事務所に依頼。施主のライフスタイルに興味を持ってくれると感じたことが、その理由だ。

「とにかくうちは人がよく集まってくる家でパーティも多いので、自分たちの性格的にも人が集えるオープンな空間にしたいというのが希望でした。私たちの生活を知って、私たちにベストなものを作ろうとしてくれる、そういう建築家さんを探していたんです」


大きな窓から日差しが降り注ぐ。

ガレージから庭に続く階段。高低差を活かした造り。


リビングダイニングには、天井まで大きく設けられた開口部。目の前には並木道が広がり、窓を開け放てば、夏でも冷房がほとんど必要ないという、風通しのよさだ。

「デザインありきだと、利便性の上で家主が我慢しなければならないことが多いですが、それは嫌でした。使いやすさは確保しながら、私たちの持っている課題を、環境を活かしつつデザインで叶えていく、そんな家をリクエストしました」


なだらかなスキップフロアで、移動もスムーズ。

トイレ上のデッドスペースを活かしてオープンな小部屋に。


深い軒が日照を調節。夏は涼しく、冬は暖かい快適なリビング。

音楽関係の仕事に携わる奥さんの仕事部屋。ご主人も趣味でピアノを楽しむ。


有機物と無機物をバランスよく取り入れる

1階のガレージから、2階のベッドルームまで、土地の高低差を活かしたスキップフロア。各スペースを自由に行き来できる室内は、仕切りが少なく広々として、まさに人が集うのにふさわしい。リビングのテーブルをエクステンションして、訪れた友人に手料理をふるまったり、テラスや庭でバーベキューを楽しんだり。明るい日の差し込む空間で、夫妻の理想の暮らしが、日々繰り広げられている。愛犬のメリーが午睡する庭では、

「ちょうどフェンスが完成したところなんです。4.5㎝の角材を使って、すき間のあるルーバー状に柱をサンドイッチしてつくりました」

プライバシーを守りつつ、すき間があることで、光や風が抜けていくフェンス。これはなんと、奥さんの知美さんによるアイデアだ。部屋の中の木材とかぶらないように、材質も選び抜いた。


いつもリビングで過ごせるよう、仕事用の机はキッチンに隣接させた。

庭に面した1階の踊り場。デンマークのウェグナーの椅子が存在感を放つ。

天井は2階のベッドルームの床下部分にあたる。箱が乗っかっているような設計が面白い


念願のフェンスが完成。重さを感じさせないアイデアが秀逸。

ミニチュアブルテリアのメリーさん。15歳。庭での散歩と昼寝が大好き。


「家は落ち着く、和める空間であってほしいです。そのために木を使うのですが、多用すると野暮ったくもなってしまう。だから、木と鉄などといった、有機物と無機物をバランスよく取り入れることが大事だと思いますね」

2階のベッドルームは箱型になり、庭まで張り出しているような設計だが、その壁面にも木のナチュラルな雰囲気が活かされ、庭のグリーンとマッチしている。休日には庭に置かれたヴィンテージのテーブルでブランチをとるのが楽しみなのだそうだ。


60年代アメリカのヴィンテージもののテーブル、目黒の「アクメ」のソファなど、家具のブランド、国籍は多様。

69年1年間しか製造されなかったニッセ・ストリングデザインの”ストリング・コンティネント”。

曲線の美しさに惚れた、ハンス・オルセンの椅子。レアもの。


バスルームには、イルマリ・タピオヴァラの60年代ヴィンテージの椅子。

ご主人が趣味で始めた革細工のバッグ。1針1針、手作業で縫い上げる。


惚れ込んだものに囲まれて暮らす

こだわりは、家の設計だけではない。この家に何気なく溶け込むインテリアも、知美さんが選び抜いた逸品ばかりだ。北欧やアメリカ、オランダのヴィンテージの椅子やシェルフ、天童木工のテーブルなど、国籍は様々。

「どこの国だとか、ブランドだとか、年代だとか、こだわるわけではないんです。いいと思うものをひとつずつ集めていったら今のようになったという感じです。気に入るものが見つかるまでは、なくてもいい。その代わり、欲しいと思ったものはすぐに買いに走りますね」

スウェーデン製のシェルフ「ストリング・コンティネント」は、あるショップのブログで見つけて、ご主人にバイクを飛ばしてすぐに買いつけてきてもらったものだとか。

「コストが掛かりすぎて69年1年間で以後製造を断念したというシェルフで、側面の金属と、木の組み合わせが自分のイメージにぴったり。この家のためにあるというような出会いだったんです。北欧のデザインの中でも、少しエッジが効いたものが私は好きですね」

ガレージに鎮座する80年代の愛車シトロエンBX、シトロエンXMも、そんなエッジの美しさに魅了されて購入。そのデザインと乗り心地に惚れ込み、度々故障を繰り返しながらも、ドライブを楽しんでいる。


グスタフスベリのカップ&ソーサー。

クロスやランチョンマットなどは、すぐに取り出せるようバスケットに収納。


スティグ・リンドベリの陶器など、お気に入りの作家ものたち。

サイドボードの中の一部。食器は北欧のものが多い。


さり気ないもてなしにセンスが香る

「どうぞお茶でも…」

取材が一段落すると、ドイツ製のミルで豆を挽き、香りのよいコーヒーをいれてくれた。豆は、いろいろ試した結果、今いちばん気に入っている鎌倉の「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」のもの。コーヒーカップは、スウェーデンのスティグ・リンドベリなど、これも奥さんの審美眼で選ばれたものだ。個人輸入をして、オランダから船便で運んだサイドボードに、北欧の食器や作家ものの食器などのコレクションがぎっしりと並んでいる。

「食器類は、60~70年代のヴィンテージが多いですね。でも、コレクションというよりは実用として、普段使いを楽しんでいます」

ヴィンテージの食器たちを惜し気もなく使い、訪れた友人たちをもてなすN夫妻。その暖かさと居心地の良さに、来客が絶えることがない。





愛車はシトロエンXMとBX、ご主人・一巳さん愛用のバイクはBMWK75とホンダXLR250R。いずれも80年代デザインの個性派だ。


設計 矢作昌生建築設計事務所
所在地 神奈川県川崎市
構造 木造
規模  地上2階
延床面積 140.92 m2