Style of Life
家をライフスタイルの実験場にオフグリッド住宅で
新しい生活に挑戦中
地域コミュニティの拠点にもしたい
緑豊かな横浜市郊外の二世帯住宅の隣に、オフグリッド住宅を建てたランドスケープデザイナーの熊谷 玄さん、ケアマネージャーの恵美子さん夫妻。オフグリッドとは、電気・ガス・水道などの都市インフラから供給を受けない、災害にも強いスタイルだ。
「暮らし方を変えられるような家を作りたいと考えていました」と玄さん。
そしてもうひとつこの家でチャレンジしたいことがあったのだそうだ。
「これからここでカフェを始めたいと思っていて、認可も既に取得しています。ケアマネジメントの仕事を通して、地域の人が気軽に利用できるサロンのような場所があればいいなと感じていたので、ここが地域のコミュニティの拠り所になればと思っています」と恵美子さん。
家を使って新しいライフスタイルにチャレンジする……熊谷夫妻らしい住宅との向き合い方だ。去年の12月に竣工して約半年、日々の取りくみがとても楽しそうだ。
電気はソーラーパネルで発電
熊谷邸のオフグリット住宅は、屋根の上にソーラーパネルを設置、ガスは都市ガスではなくプロパンガスを使用。井戸を掘ったが飲料には適さない水質だったため、水は上水道を使用している。
「木材工場から出る廃材を燃料とするペレットストーブも使ってみたいもののひとつでした。ペレットストーブには、電気を使ってファンを回すものが多いのですが、この『CRAFTMAN』はファンを使わない自然吸排気式のストーブです。中が広いのでダッジオーブンを入れることもできます。焼きリンゴを作って楽しんでいます。
プロパンガスを使った床暖房とストーブで、冬は快適に過ごすことができました。夏がどうなるか、楽しみでもあります」
ソーラーパネルの発電量には限りがあるので、照明器具は、必要な人が必要な場所に手で持って歩く、昔の行灯スタイルに。
「照明デザイナーの方に相談をしたら、シガーソケットを使って15Vの電気を使えば節電になると聞いたので、壁にシガーソケットを設置しました。照明器具のプラグもシガーソケット用に交換しています」と玄さん。
冷蔵庫は100Vで使用しているそう。
「今の冷蔵庫は電気の使用量がとても少ないので、問題ありませんでした」と恵美子さん。
「料理、洗濯、入浴などは母屋で行っています。様子を見ながら、徐々にこちらに移動してきたいと思っています。母屋にはTVがありますが、こちらにはありません。なるべく生活感をなくすようにしています。オフグリッドの家を作って、いろいろなことが見えてきました」
住宅設計は「abanba」。
「オフグリッドのアイディアをたくさんいただきました。母屋の2階と床のレベルを合わせているので、将来的には廊下でつないで行き来できるようにしたいとも考えています」
母屋は建築家である玄さんのお父様の設計。アメリカ西海岸を中心に、リチャード・ノイトラ、イームズ、エーロ・サーリネンらによって作られた住宅建築プログラム『CASE STUDY HOUSE』を、日本の環境で作った実験的な住宅だ。
「建増しした2階は、当初は箱型のガラスの面積が大きいものでしたが、様々な問題が起きて今の形になっています。自分の家で様々な実験をした父らしい住まいです」
家を住まいの実験場にする。そのライフスタイルが、熊谷さん夫妻にも受け継がれているのかもしれない。