Style of Life
家造りを楽しむ こだわりを形にした
自分だけのオリジナル作品
閉ざされた箱の中の意外な空間
「外から見えない金庫のような家」が家主・岩佐さんの理想だった。すっきりとシンプルな外観を構えるその家は、確かに窓というものがほとんどなく、閉じられた空間に見える。
「外から見られるのが嫌だったんです。設計士さんは南側に大きめの窓をつけようとしたんですが、それもつけないでほしい、と頼みました。でも非常用のドアはどうしてもつけなくてはいけないということで、ベッドルームにのみ、鉄の扉をつけました」
しかし、中に入ってみると意外なほど明るく開放的な空間が広がっていた。2階のLDKは30畳ほどの広さで、キッチン、和室を分ける仕切りがなく、天井高も約3メートル。部屋のほぼ中央にあるテラスは、屋上までガラス張りの吹き抜けになっていて、明るい光が差し込む。まっ白な壁と相まって、圧迫感のない広々とした空間を生み出している。
「3階のベッドルームにある4畳半のクローゼットは、洋服に合わせて奥行きを考えたり、棚をどう設置したらいいか、センチ単位で考えて設計してもらいました」
靴箱も採寸し、それに合わせてぴったり収まるように収納を設計。1階ガレージの壁面に、靴とともにキャンプ用品、スノボ用品、ゴルフ用品、車用品などをそれぞれコーナーに分けて収納できる棚を取り付けた。これも、どの位置に取り付けるか、センチ刻みでリクエストした。
「設計士さん任せにするのはイヤだったんです。プロでないとできないところ以外は、自分で考えたかった。自分の“作品”と思うほど、この家にはこだわりがあったんです」
リビングのライトなども、自らショールームを回り、大きさ、色、形にこだわって選定。スピーカーを埋め込む位置も自分で考えた。
好きなものに囲まれて暮らす
その空間の中で存在感を放つのが、インテリア・コレクションだ。イームズやパントンの椅子は、ヴィンテージものあり、現行ものあり。家具屋に行く度、出会いを感じたものを購入する。テーブルはランドスケーププロダクツのもの。ガラスの天板を木に替えてもらい、天板下に雑誌を入れられる棚を取り付けてもらったカスタムメイドだ。
「イームズのシェルチェアは脚を組み換えられ、それによって雰囲気が変わるのがおもしろくて、シェルとのバランスを楽しんでいます。テーブルに組み合わせて買った天童木工×柳宗理の椅子は、座面の色を指定できるので、雰囲気に合わせて選びました」
ブルース・ウェーバーのポスターや、コンランの雑貨など、岩佐さんのセンスで統一したリビングは、ギャラリーのような雰囲気。家に帰ると、好みのものを集めたリビングで、カッシーナのソファ、「マラルンガ」に座り、映画を観る時が、何よりも楽しみだという。
「少し雰囲気を変えたいなと思って、この部屋の一面だけ、自分の手で壁に珪藻土を塗ったんです。波打つような模様が出るように工夫して」
凹凸感が出て、どこか味わいのある壁面が、畳の空間とマッチしている。他にも、屋上のテラスに、自分で木のパネルや人工芝を敷きつめたり、ペンキを塗ったり、日曜大工的なことも行っている。1階から2階にあがる階段の途中に飾られたモダンなパネルも、岩佐さんによるお手製だ。
「友達からもらった生地を使って、パネルボードを自作しました。好きなものを見つけるのは、なかなか大変だから、探すよりも作る方が早いと思って」。自作のパネルは2つあり、現在は夏に合わせたものにつけ替えている。
「最近はシンプルな空間にも暖かさがほしいな、と思うようになってきました。日曜大工をするのもそのためですね。そろそろ新たな作品を建てたい、とも思い始めています。今度建てるなら、シンプルをベースに木のテイストを組み合わせるなどしてみたいですね」
岩佐さんの、ものや空間への思いは尽きない。