Style of Life
懐かしい商店街の洗練の家フラットな箱を個性で彩る
クリエイターの住まい
できるだけニュートラルに
昭和の面影を残す、東京郊外の商店街の一角に、1年程前に家を建てることになったグラフィックデザイナーの丸山晶崇さん。
「たまたま土地を紹介してもらい、ここで何ができるかな? と考えたことが始まりでした」。
丸山さんにとって、家づくりはプロジェクト。永住するための家というよりは、住む人によって変わっていく箱を目指したのだそうだ。
「商店街にあるので、閉じた家というのは違うのかなと。現代版の店舗付き住宅がイメージでした。飲食店を併設しながら、居住スペースはなるべくフラットでニュートラルになるよう考えました」。
1階はイベントスペースとしたり、パートナーのイラストレーター糸乃さんが、不定期でカフェを開いたりするスペースに。2、3階を住居とした白い空間はおふたりの美意識が反映され、どこを見てもアートギャラリーのように洗練されている。
スチール窓の趣き
「フロアによって雰囲気を変えたいと思いました。2階のベッドルームは寝るだけなので天井は低くてもいい。その分3階は天井を高く、ロフトもつけて広々とした空間にしました」。開放的なリビングは、大きなスチール窓が青い空を切り取る。
「ふたりで床にオイルを塗ったり、タイルを貼ったり、できるところはDIYでコストを抑えました。でも、譲れなかったのはこの窓ですね。アルミでは雰囲気が出ないし、枠を黒で塗ったとしても太いのでイメージと違ってしまいます」。ほとんど天井に届くような高さのある窓にはいちばん予算をかけたそう。68m2程のフロアに開放感と、レトロな洋館のような趣きを与えている。
ロフトは、遠くから展示会などで訪れる作家さんに泊まってもらうためのスペースに。
「ロフトは天井が低いので、畳を敷いて直接座ったり、寝転がったりと、動線を低く設定しました。普段は昼寝をしたりもしています。ゆくゆくはプロジェクターをつけて映画など観られたらいいかな」。
こだわりがつまったバスルーム
ニュートラルを目指した空間だが、“やってしまった”と思ったのはバスルーム。
「いちばん個性が出ていると思います。最初はユニットでもいいかと思ったのですが、こだわり始めたら止まらなくなってしまいました」。
シャワーブースは独立させてバスタブとセパレートに。床や壁のタイルは友人の協力を得てDIYで貼った。窓は古道具屋で見つけた扉に合わせてサイズを設定。そこにアイアンのバーやフランスの照明がインダストリアルな雰囲気をプラスする。
「普段はシャワーだけで済ますのですが、ゆっくりしたい時はバスタブに浸かって本を読んだり、音楽を聴いたりしています。掃除の面でも経済的にも効率がよいですよ(笑)」。
2階のベッドルームは、グレーの壁とコンパクトな設計が居心地の良さを感じさせる。ここにはたくさん所有する本を収納するため本棚を造作。
「下にいくにつれて大きな本を入れられるように、棚板の高さを変えています。寝るか本を読むかの場所ですが、どちらにも心地よい空間ですね」。
ベッドまわりには仕事でも付き合いのあるアーチストの絵や版画を額装して。昔から古道具屋で買い集めていた雑貨をアレンジして作ったものたちが一体となり、レトロ感があるのに斬新な雰囲気を生んでいる。
アートで埋め尽くしたい
「家って箱だから、住む人によって変わっていいと思うんです。自分はアートが好きなので、数ある作品で個性が出てしまっていますが、それは人によって違ってきます」。ヴィンテージソファーに腰掛け、そう語る晶崇さん。知り合いの作家の作品であるブラケットを用いて取り付けたシェルフには、晶崇さんが好むジャン・プルーヴェの本などが。壁面には、アーチストによる作品が存在感を出している。
「もっと壁を彩りたくて、作品で埋めたいと思っているんです。どんどんやりたいことが出てくるので、徐々に手を加えていこうと思っています」。
ニュートラルな白い箱は、ふたりのクリエイターによって、まだまだ変貌を遂げていきそうだ。