究極の心地よさを求めて祈りに包まれたフランキンセンス・ハウス

究極の心地よさを求めて祈りに包まれた
フランキンセンス・ハウス

アッシジで得た出会い

アーチのような緑の木々が続く坂道を登ると、まるで丘の上に建つ教会のような一軒家が現れる。自らデザインする雑貨やセレクトグッズを扱う『マチルド イン ザ ギャレット』、『フランキンセンス+ショップ』のオーナー・酒井しょうこさんが、長年の思いと経験を活かし完成させたのがこの自邸。

「サン フランチェスコ バジリカのような、小さな修道院がイメージです」。家を建てようとプランニングしているときに、たまたま訪れることになったイタリアの巡礼地アッシジと聖人フランチェスコに強く惹かれたというしょうこさん。「サン フランチェスコ バジリカの前の修道院に2週間泊まって、とても影響を受けたんです。それまではイギリスのハーフティンバーの枯れた感じにしようと思っていたのですが、方向転換しました」。

生まれてすぐに洗礼を受けたしょうこさんは、敬虔なカトリック教徒。環境保護の聖人である、聖フランチェスコの簡素を旨とする精神に触れ、ナチュラルでシンプルなものの美しさに気づいたという。その教えから得たインスピレーションが、家づくりのテーマとなった。


暮らしの中に癒しを与えてくれているテラス。十字架を家のあちこちに、モチーフとして取り入れた。テーブルの上は、レモングラス、オリーブ、ローリエなど、テラスで摘んだハーブで入れた冷たいハーブティー。

暮らしの中に癒しを与えてくれているテラス。十字架を家のあちこちに、モチーフとして取り入れた。テーブルの上は、レモングラス、オリーブ、ローリエなど、テラスで摘んだハーブで入れた冷たいハーブティー。

小高い丘の上に建つ「フランキンセンス+ハウス」。ドアは取り壊される教会から頂いたもの。アイアンの門扉と柵はオーダー品。

小高い丘の上に建つ「フランキンセンス+ハウス」。ドアは取り壊される教会から頂いたもの。アイアンの門扉と柵はオーダー品。

エントランスのレンガはベルギーから輸入したもの。アッシジを思わせる外壁のアースカラーにマッチする。

エントランスのレンガはベルギーから輸入したもの。アッシジを思わせる外壁のアースカラーにマッチする。

教会で使われていたアンティークの椅子、オリジナルの傘入れなどを置いた玄関。実用的でありながらシンプルで美しい。

教会で使われていたアンティークの椅子、オリジナルの傘入れなどを置いた玄関。実用的でありながらシンプルで美しい。

階段は教会のドアに合わせたため幅広になった。イギリスのアンティークの壷などを置き、階段ギャラリーとして楽しんでいる。

階段は教会のドアに合わせたため幅広になった。イギリスのアンティークの壷などを置き、階段ギャラリーとして楽しんでいる。


簡素であることの心地よさ

8年くらい探して見つけた土地は、アッシジのように眺望のよい丘の上にある。まわりは林や公園に囲まれた自然豊かな環境で、遠くに東京タワーや富士山も望める。間取りからインテリア、小物のひとつひとつまで自分自身でデザインした家を、「フランキンセンス・ハウス」と名付けた。

「フランキンセンスは教会でも焚かれる天に祈りを捧げる香りです。心静かに過ごせる気がします」。玄関を入ったところから仄かに香る癒しの芳香に包まれ階段を上がると、リビングとしょうこさんの自室であるテレーズルームが迎え入れてくれた。

「シンプルな美しさを考えるうちに、シェーカースタイルも気になり始めてインテリアに取り入れました。根っこの部分に同じものを感じるんです」。シェーカースタイルの象徴ともいえる壁掛けのペグボードを壁一面に施し、教会のリトグラフやシェルフなどを飾る。「テーブルや椅子も、シェーカーに合わせてデザインし特注したものです」。家具は機能的なデザインとチェリー材の質感が美しい。そぎ落としたシンプルなインテリアが、本質を考える精神と結びついているようだ。

リビングの隣にあるテレーズルームは、自身の洗礼名でもあり、守護聖人と感じている聖テレーズをテーマとした部屋。ここは寝室であり、執筆活動を行う場であり、ピアノを弾く防音ルームでもある。

「この部屋は少しヴィクトリアン調にしました。テレーズの遺品なども飾り、祭壇に祈りを捧げています」。ここにもペグボードを施し、十字架の道行きに因んで、テレーズの人生をフォトフレームを使って表現している。クッション付きのソファーは、実は布団を丸めてアレンジしたベッド。小さなサイズが修道院を思わせ、慎ましく簡素な暮らしの美しさが感じられる。


しょうこさんの部屋は聖テレーズが生きたヴィクトリア時代をイメージ。観音開きの扉を閉めると、静けさに包まれる。修道院を思わせる小さめのベッドは、昼間はソファーに。父親に買ってもらったピアノは黒から茶色に塗装し、今も大切にしている。

しょうこさんの部屋は聖テレーズが生きたヴィクトリア時代をイメージ。観音開きの扉を閉めると、静けさに包まれる。修道院を思わせる小さめのベッドは、昼間はソファーに。父親に買ってもらったピアノは黒から茶色に塗装し、今も大切にしている。

至る所に十字架をモチーフとしたインテリアを配置。ニッチには神父様から頂戴した十字架などを飾り、祈りを捧げている。

至る所に十字架をモチーフとしたインテリアを配置。ニッチには神父様から頂戴した十字架などを飾り、祈りを捧げている。

革ひもでペグに掛けられるハンギングシェルフ。壁にぴったり合うサイズで隙がない。シェーカースタイルのボックスが美しい。

革ひもでペグに掛けられるハンギングシェルフ。壁にぴったり合うサイズで隙がない。シェーカースタイルのボックスが美しい。

ピアノの上は聖テレーズのコーナー。テレーズ像や遺品の入った十字架などを飾っている。

ピアノの上は聖テレーズのコーナー。テレーズ像や遺品の入った十字架などを飾っている。

ペグに吊るすフレームも十字架をアレンジ。真ん中はイコン(聖像)を置く台付き。オリジナルのデザイン。

ペグに吊るすフレームも十字架をアレンジ。真ん中はイコン(聖像)を置く台付き。オリジナルのデザイン。

同じくハンギングシェルフ。ペットベッドの上にあり、愛犬のシーツや衣類などを収納。バスケットは持ち手のところが十字架に。

同じくハンギングシェルフ。ペットベッドの上にあり、愛犬のシーツや衣類などを収納。バスケットは持ち手のところが十字架に。


間取りは動線を考えて

「窓から家の前の林が見える位置に設定したかったんです」。白のタイルと木目で統一されたキッチンは、明るくナチュラルな雰囲気。イギリスから輸入したキャビネットの扉も、シェーカースタイルでデザインされたものだという。「以前より半分の広さになってしまったのですが。でも、すぐに食器を取り出せるし作業しやすいですね」。

間取りを考えるにあたっては、使いやすさも重視した。1階のバスルームは、脱いだものを洗濯し、乾かし、クローゼットへ収納、という動線を確保。バスケットを活用したクローゼットの棚も、入れる物のサイズを考えて設計した。「朝から夜までの生活をシュミレーションして、どの部分が不便かというのを考え抜きました」。

床はアッシジを思わせるイタリアのタイル。猫足のバスタブは、以前から使っていたイギリス製のものを茶色に塗り直した。生活の動線もシンプルに、と計算しながらも優雅な雰囲気を漂わせることも忘れない。

「ドアはちょうどイギリスから輸入しようとしていたときに、たまたま訪れた教会が取り壊されることになり、そこで使用されていたドアを7枚頂けてしまったんです。奇跡のようですよね」。と目を輝かせるしょうこさん。こんな奇跡も、日頃の信仰心のなせる技なのかもしれない。


コンパクトで使いやすいキッチン。イギリスから取り寄せた陶器のベルファストシンクに、真鍮の蛇口、排水口が映える。

コンパクトで使いやすいキッチン。イギリスから取り寄せた陶器のベルファストシンクに、真鍮の蛇口、排水口が映える。

窓から見える林の緑が美しい。キッチンはペグも白で統一した。ここでは時計付きイコン台を活用。

窓から見える林の緑が美しい。キッチンはペグも白で統一した。ここでは時計付きイコン台を活用。


床のアッシジ色のタイルに合わせ、壁のタイルやペグはクリームがかった白にペイント。シンクはシャンプーのできるものを探した。

床のアッシジ色のタイルに合わせ、壁のタイルやペグはクリームがかった白にペイント。シンクはシャンプーのできるものを探した。

バスルーム、ユーティリティはひとつのスペースに。一角にドレッサーコーナーを設け、着替えをすっきり収納。

バスルーム、ユーティリティはひとつのスペースに。一角にドレッサーコーナーを設け、着替えをすっきり収納。

オーガニック服を着る愛犬のトイプードル、キアラちゃん。しょうこさんの服はオーガニックのオリジナル商品。

オーガニック服を着る愛犬のトイプードル、キアラちゃん。しょうこさんの服はオーガニックのオリジナル商品。


癒しを与える生活

現在、しょうこさんは自身のライフスタイルをそのままショップや著書で紹介することがライフワークとなっていて、ショップオーナーの仕事の他、本の執筆にも忙しい。「家の楽しみ方を綴った『酒井しょうこのシンプルスタイル』や、小さなお庭のハーブの楽しみを綴った『ナチュラルスタイル』の他、最近はアッシジの本を出したばかりです。毎日10時間を10カ月間、腱鞘炎になりながら書き上げました。でも朝から頑張って、必ず夕方には甘いものとお茶を頂くんです」。リビングかテラスで過ごすその時間が癒しを与えるのだそうだ。

「見晴らしのよいテラスはいつ出ても気持ちがいいです。読書をしたり、マットを敷いてヨガをしたりして愉しんでいます」。オリーブやハーブ類など、咲き乱れる様々な植栽はオーガニックな生活を実現させるためのものでもある。

「米糠やコーヒーの出し殻をコンポストに入れて堆肥を作り、育てています。植物は生活に役立てられるハーブばかり。サラダにしたり、ポプリにしたり、お風呂に入れたり。セージやタイム、ラベンダーの花をウォッカに浸け込んだうがい薬も作ります」。

この日は剪定をかねて摘んだ冷たいハーブティーでリラックス。美しい植栽の真ん中には、しょうこさんが大切にしている聖フランチェスコの彫像が、シンプルで本質的な暮らしを見守っていた。


清々しい空気に包まれるテラス。向い側には桜の木があり、お花見シーズンも楽しめる。

清々しい空気に包まれるテラス。向い側には桜の木があり、お花見シーズンも楽しめる。

農家で使っていたイギリスのアンティークのキャリー。鉢植えを並べてディスプレイ。

農家で使っていたイギリスのアンティークのキャリー。鉢植えを並べてディスプレイ。

田園調布に ある酒井しょうこさんのお店。1階が「フランキンセンス+ショップ」http://frankincense.co.jp/、 2階が「マチルド イン ザ ギャレット」http://matild.com/。

田園調布に ある酒井しょうこさんのお店。1階が「フランキンセンス+ショップ」http://frankincense.co.jp/
2階が「マチルド イン ザ ギャレット」http://matild.com/

農薬を使わず育てている植物は虫を呼び、良い循環を生んでくれる。環境保護の聖人フランチェスコが見守る。

農薬を使わず育てている植物は虫を呼び、良い循環を生んでくれる。環境保護の聖人フランチェスコが見守る。

その日の体調に合わせてハーブを摘み、ハーブティーに。オーガニックなので安心して使うことができる。

その日の体調に合わせてハーブを摘み、ハーブティーに。オーガニックなので安心して使うことができる。

採光窓には、平和のシンボルでもあるアッシジを思い起こす箱庭を作った。下は1890年の浄水器をコンポストとして活用したもの。

採光窓には、平和のシンボルでもあるアッシジを思い起こす箱庭を作った。下は1890年の浄水器をコンポストとして活用したもの。

「フランキンセンス+ショップ」では、フランキンセンス・ハウスで愛用されているオリジナルグッズやセレクト商品などを販売。

「フランキンセンス+ショップ」では、フランキンセンス・ハウスで愛用されているオリジナルグッズやセレクト商品などを販売。

「フランキンセンス+ショップ」の奥にある「ガーデン+ショップ」。アンティークなどのガーデングッズが揃う。

「フランキンセンス+ショップ」の奥にある「ガーデン+ショップ」。アンティークなどのガーデングッズが揃う。