Style of Life
公園の自然を生かす北欧のライフスタイルを
東京で実現させる試み
北側の窓に広がる、光に当たる木立の美しさ
昨年秋に完成したインテリアデザイナーの小林 恭さん、小林マナさん夫妻のお宅の窓の向こうには、公園の樹々の緑が広がり、まるで森の中にいるように感じられる。
「『マリメッコ』の仕事で毎月フィンランドに行っていた時期がありました。北欧の暮らしは森がすぐ近くにあり、自然を上手に取り入れています。そんなライフスタイルを間近で見て、自分たちもこんな暮らし方をしてみたいという思いが大きくなりました」
最初は鎌倉も含めて土地を探していたそうだが、オフィス兼自宅の利便性を考えると都内がよいと考え直し、都内の公園の近くを探したそうだ。そしてやっと見つけたこの場所は、井の頭公園の豊かな緑に面している。
「緑の風景は、光が燦々と当たっている南側を見たほうが美しいんです。旗竿敷地で、北側に窓を設けなければ公園の緑が見えないという、一般的には好まれないこの土地の条件は、我々には問題ではありませんでした。北側に公園の緑を眺められる大きな窓を作り、隣家が迫る南側の大部分を壁にしています。この壁面に絵を飾ることも考えています」
白い壁に映える北欧らしい色使い
2階が小林夫妻のプライベート空間。リビングのアート作品が飾られている大きなガラスの飾り棚が目を引く。
「前に住んでいた家では、猫が時々作品を床に落としたので、家を建てるならガラスケースには扉をつけようと思っていました。作戦は大成功。作品は落とされないですし、ホコリが溜まりにくいので掃除もラクです」
床に重ねてあるスクエアな色とりどりのクッションは『ミナペルホネン』のファブリック。
「重ねてソファのように使ったり、1枚づつ敷いて畳のように楽しんだり、いろいろな使いみちがあります。表地と裏地が違う色になっていて、使っていくうちに表の生地がすり減ると裏地の色が表れて、また違った表情になるおもしろい生地です」
1階に料理を作るキッチンがあるので、2階にはお酒やコーヒーなどの飲み物のための小さなキッチンを作った。使わない時は扉を閉めれば生活感を消すことができる。扉を開けると自動的に灯りがつき、まるでホテルのミニバーのよう。
1階はオフィス空間
1階にオフィスと打ち合わせやスタッフの食事に使われるスペースがある。回遊しながらそれぞれの場所を行き来できる。
ドアや棚など、多くの場所で使われているのが、コンクリートを打設する時に使われるコンクリート型枠用合板。
「山吹色のものが多く流通しているのですが、ホームセンターでイエローとグレーを見つけて、大量買いしました(笑)」
120mm厚の合板を3枚重ねて360mmとし、合板の断面をデザインとしてあえて見せている。
新築の小林夫妻の家に温かさを感じるのは、その型枠用合板の柔らかな色と、壁の構造合板に直接ペイントした白の質感の優しさのせいかもしれない。
心地よく暮らすために、家の断熱には心を配ったそうだ。天井には通常の3倍ほどの30cmのグラスウールを入れた。電動ブラインドを窓の外側に設置し、熱を家の中に入れる前にカットする。熱交換式の24時間換気システムも導入した。
「秋に越してきたのですが、美しい紅葉が楽しめました。冬は樹々の見通しがよくなり鳥の姿もよく見えます。そして春になり、瑞々しい新緑がとても美しい季節になりました。これから迎える初めての夏がとても楽しみです」