Style of Life
収納のプロの技が光る三次元的な敷地を愉しむ
シンプルモダンな住まい
感性の合う建築家との出会い
世田谷区の人気の住宅地。世田谷通りに向かってゆるやかに下っていく坂道の途中の角地に田村邸は建つ。この土地は、ご主人の慶さんがたまたま車で通りかかり、空き地になっているのを見つけたのだという。「それまでは賃貸マンションに住んでいましたが、子どもが学校に入り、このあたりが生活圏と決まったときに家を持つことを考えました。1年半くらいこの住み慣れた地域で探していて、なかなかいい物件に出会えなくて。トーンダウンしていたときに見つけたのがこの土地です。角地で坂になっているため、開放的な土地だなって一目で気に入りました」(慶さん)。
その後、住宅関係の本を20冊近く読み漁り、自分たちの好みの家を手掛けている設計事務所を3社ほどピックアップ。各社と打合せをしたところ、圧倒的に惹かれたのが「LEVEL Architects」の提案だったという。「幸い夫婦の好みは一緒で、イメージしていたのは、シンプルながら遊び心のあるカッコイイ家。それを伝えたときに、こんな方向がある、こんなことができる、と『LEVEL Architects』さんの話の発展が面白かったんです」と慶さん。妻の絵美香さんも、「1番ワクワクする話をしてくれた設計事務所でした。イメージがふくらみ、ここにお願いしたら好きな家ができると確信しましたね」。
一方、建築家も、「センスの良いご夫妻で、既成概念があまりなく、楽しみ方を知っているんですね。意見交換もスムーズで、こちらも楽しい仕事でした」と振り返る。ご夫妻の感性と、建築家の知恵と経験が相乗効果を生み、満足度の高い家づくりとなったようだ。
高低差のある敷地を活かす
設計するにあたり、「高低差がポイントだった」と建築家は言う。最も高いところから西側に80cm、東側に60cmほど下がっているという高低差の激しい三次元的な敷地を活かし、スキップフロアを採用した。天井が低くてもよいガレージの上に中二階を設け、子供部屋に。その子供部屋からフラットに続くデッキは、リビングに面した1階のデッキへと外階段でつなげた。1階、2階の室内外を自由に回遊できるユニークな構成は、子供たちがぐるぐると駆けまわれ、恰好の遊び場に。活動的で楽しい空間に導いている。また、視線の抜けもよく、さらなる奥行を生むため、実際の床面積よりも広く感じられる。
多彩な素材やギャップで魅せる
田村邸の玄関の扉は引き戸で、引き戸を開けると、薄暗い土間空間がある。窓はなく、トップライトのみの自然光を取り込んだ、まるで洞窟のような空間だ。土間の奥にある、リビングにつながる框扉を開けると一転。南側に大きく開口した、壁一面の窓から日差しがたっぷりと入り、目が覚めるような明るい空間になっている。「ギャップを狙いました」と笑う絵美香さん。遊び心のあるご夫妻らしい仕掛けである。
また、LDKの素材使いにもこだわりがのぞく。天井までの大きな窓には、アイアンフレームの格子を特注した。キッチンカウンターの天板には、コンクリートのような質感が特徴の、左官材のモールテックスを採用。さらに、凹凸感を施した浮造り加工のフローリングやキッチンの一部をレンガにするなど、多彩な素材をセンス良く配することで、クールでスタイリッシュな印象にあたたかみも加わった。ウッディな家具との相性も良く、落ち着く空間に仕上がっている。
整理収納のプロの実力発揮!
「どこを開けても大丈夫ですよ」と、自信満々に言われる絵美香さん。収納や引き出しの中は、収納グッズを駆使して見事に整理整頓されている。それもそのはず、絵美香さんは、整理収納アドバイザーとして活躍する、いわば収納のプロ。クローゼットもキッチンまわりも、プロの技が光る。
「何をどこに入れるか、大きさはどのくらいか、設計前からチェックし、細かく指定させていただきました」(絵美香さん)と、決して多くない収納スペースにキッチリ収めた。その実力は、建築家たち周囲をも「さすがプロ!」とうならせる。
照明や水栓、取っ手など、見た目はもちろん機能性にもこだわってチョイス。「妥協を許さなかったことが、完成した家の満足度をあげていると思います」と絵美香さん。
「月に1回以上は、友人を招いてホームパーティーをしています」と、楽しいことが大好きなご夫妻。いつもすっきり整い、こだわりの物や遊びがさりげなく散りばめられた空間は、居心地がよく、訪れる人をも刺激する。気さくで明るいご夫妻がもてなす田村邸には、ますます人が集まってくるだろう。