Style of Life

収納のプロの技が光る三次元的な敷地を愉しむ
シンプルモダンな住まい

170807tamura_head

感性の合う建築家との出会い

世田谷区の人気の住宅地。世田谷通りに向かってゆるやかに下っていく坂道の途中の角地に田村邸は建つ。この土地は、ご主人の慶さんがたまたま車で通りかかり、空き地になっているのを見つけたのだという。「それまでは賃貸マンションに住んでいましたが、子どもが学校に入り、このあたりが生活圏と決まったときに家を持つことを考えました。1年半くらいこの住み慣れた地域で探していて、なかなかいい物件に出会えなくて。トーンダウンしていたときに見つけたのがこの土地です。角地で坂になっているため、開放的な土地だなって一目で気に入りました」(慶さん)。

その後、住宅関係の本を20冊近く読み漁り、自分たちの好みの家を手掛けている設計事務所を3社ほどピックアップ。各社と打合せをしたところ、圧倒的に惹かれたのが「LEVEL Architects」の提案だったという。「幸い夫婦の好みは一緒で、イメージしていたのは、シンプルながら遊び心のあるカッコイイ家。それを伝えたときに、こんな方向がある、こんなことができる、と『LEVEL Architects』さんの話の発展が面白かったんです」と慶さん。妻の絵美香さんも、「1番ワクワクする話をしてくれた設計事務所でした。イメージがふくらみ、ここにお願いしたら好きな家ができると確信しましたね」。
一方、建築家も、「センスの良いご夫妻で、既成概念があまりなく、楽しみ方を知っているんですね。意見交換もスムーズで、こちらも楽しい仕事でした」と振り返る。ご夫妻の感性と、建築家の知恵と経験が相乗効果を生み、満足度の高い家づくりとなったようだ。


高低差を利用したスキップフロアになっている。階段の上が中二階で、2つの子供部屋に通じる。
高低差を利用したスキップフロアになっている。階段の上が中二階で、2つの子供部屋に通じる。

坂の途中の角地に建つ。ファサード側の窓は小さく少なめ。シンプルな外観がひときわ目を引く。
坂の途中の角地に建つ。ファサードの窓は小さく少なめ。シンプルな外観がひときわ目を引く。

高低差のある敷地を活かす

設計するにあたり、「高低差がポイントだった」と建築家は言う。最も高いところから西側に80cm、東側に60cmほど下がっているという高低差の激しい三次元的な敷地を活かし、スキップフロアを採用した。天井が低くてもよいガレージの上に中二階を設け、子供部屋に。その子供部屋からフラットに続くデッキは、リビングに面した1階のデッキへと外階段でつなげた。1階、2階の室内外を自由に回遊できるユニークな構成は、子供たちがぐるぐると駆けまわれ、恰好の遊び場に。活動的で楽しい空間に導いている。また、視線の抜けもよく、さらなる奥行を生むため、実際の床面積よりも広く感じられる。


リビングの延長にウッドデッキを設けることで、室内外の一体感が生まれる。右奥に見えるのが中二階につながる外階段。
リビングの延長にウッドデッキを設けることで、室内外の一体感が生まれる。右奥に見えるのが中二階につながる外階段。
慈英(ジェイ)くん(7歳・右)と恵琉(エル)くん(5歳)が遊ぶ、中二階のプレイルーム。彼らが作ったレゴの作品がきれいに陳列されている。
慈英(ジェイ)くん(7歳・右)と恵琉(エル)くん(5歳)が遊ぶ、中二階のプレイルーム。彼らが作ったレゴの作品がきれいに陳列されている。
子供たちの寝室。中二階で天井が低めのため、あえて梁を出すことで圧迫感を軽減。
子供たちの寝室。中二階で天井が低めのため、あえて梁を出すことで圧迫感を軽減。
プレイルームから続くデッキ。サッカー練習から帰宅した子供たちが1階デッキ奥の温水シャワーで汚れを落とし、外階段を上がって2階のバスルームへ直行できるようになっている。
プレイルームから続くデッキ。サッカー練習から帰宅した子供たちが1階デッキ奥の温水シャワーで汚れを落とし、外階段を上がって2階のバスルームへ直行できるようになっている。
以前から使用していた「マスターウォール」のソファとテーブルにテイストを合わせ、壁際にソファを造作。
以前から使用していた「マスターウォール」のソファとテーブルにテイストを合わせ、壁際にソファを造作。
変形地に沿って造作したソファは収納も兼ねている。高低差のある敷地を活かし、床下40cmの大容量の収納を確保した。
変形地に沿って造作したソファは収納も兼ねている。高低差のある敷地を活かし、床下40cmの大容量の収納を確保した。


多彩な素材やギャップで魅せる

田村邸の玄関の扉は引き戸で、引き戸を開けると、薄暗い土間空間がある。窓はなく、トップライトのみの自然光を取り込んだ、まるで洞窟のような空間だ。土間の奥にある、リビングにつながる框扉を開けると一転。南側に大きく開口した、壁一面の窓から日差しがたっぷりと入り、目が覚めるような明るい空間になっている。「ギャップを狙いました」と笑う絵美香さん。遊び心のあるご夫妻らしい仕掛けである。

また、LDKの素材使いにもこだわりがのぞく。天井までの大きな窓には、アイアンフレームの格子を特注した。キッチンカウンターの天板には、コンクリートのような質感が特徴の、左官材のモールテックスを採用。さらに、凹凸感を施した浮造り加工のフローリングやキッチンの一部をレンガにするなど、多彩な素材をセンス良く配することで、クールでスタイリッシュな印象にあたたかみも加わった。ウッディな家具との相性も良く、落ち着く空間に仕上がっている。


さまざまな素材が見事に融合し、洗練された空間に。キッチン側は一段下げ、座っている人との視線の高さを意識した。「ホームパーティのとき、キッチンに立ちながら一緒に飲めるというアイランドにこだわりました」(絵美香さん)
さまざまな素材が見事に融合し、洗練された空間に。キッチン側は一段下げ、座っている人との視線の高さを意識した。「ホームパーティのとき、キッチンに立ちながら一緒に飲めるというアイランドにこだわりました」(絵美香さん)
引き戸を採用した玄関。左奥はガレージ。
引き戸を採用した玄関。左奥はガレージ。
引き戸を開けると広めの土間空間。屋内からもガレージにつながっている。
引き戸を開けると広めの土間空間。屋内からもガレージにつながっている。


玄関内部は窓がなく、吹き抜けの上部にトップライトがあるのみの薄暗い空間。
玄関内部は窓がなく、吹き抜けの上部にトップライトがあるのみの薄暗い空間。
浮造り加工を施したチーク材のフローリング。幅が広めのアンティーク調がオシャレ。素足でいても気持ちがいい。
浮造り加工を施したチーク材のフローリング。幅が広めのアンティーク調がオシャレ。素足でいても気持ちがいい。


大きな開口が印象的なモダンなリビング。テレビはなく、白い壁を利用してプロジェクターで投影。映画もゲームも迫力満点に楽しめる。
大きな開口が印象的なモダンなリビング。テレビはなく、白い壁を利用してプロジェクターで投影。映画もゲームも迫力満点に楽しめる。

整理収納のプロの実力発揮!

「どこを開けても大丈夫ですよ」と、自信満々に言われる絵美香さん。収納や引き出しの中は、収納グッズを駆使して見事に整理整頓されている。それもそのはず、絵美香さんは、整理収納アドバイザーとして活躍する、いわば収納のプロ。クローゼットもキッチンまわりも、プロの技が光る。
「何をどこに入れるか、大きさはどのくらいか、設計前からチェックし、細かく指定させていただきました」(絵美香さん)と、決して多くない収納スペースにキッチリ収めた。その実力は、建築家たち周囲をも「さすがプロ!」とうならせる。

照明や水栓、取っ手など、見た目はもちろん機能性にもこだわってチョイス。「妥協を許さなかったことが、完成した家の満足度をあげていると思います」と絵美香さん。

「月に1回以上は、友人を招いてホームパーティーをしています」と、楽しいことが大好きなご夫妻。いつもすっきり整い、こだわりの物や遊びがさりげなく散りばめられた空間は、居心地がよく、訪れる人をも刺激する。気さくで明るいご夫妻がもてなす田村邸には、ますます人が集まってくるだろう。


奥行が深いので、あえてオープンにし、可動式のワゴンで出し入れ自在に。
奥行が深いので、あえてオープンにし、可動式のワゴンで出し入れ自在に。
洗い物は、珪藻土の水切りパッドとラックの上に。水切りカゴがないため、キッチンは常にすっきり。
洗い物は、珪藻土の水切りパッドとラックの上に。水切りカゴがないため、キッチンは常にすっきり。
左のカトラリーケースは無印良品のもの。「これらがぴったり収まるように、スペースをmm単位で指定しました」(絵美香さん)
左のカトラリーケースは無印良品のもの。「これらがぴったり収まるように、スペースをmm単位で指定しました」(絵美香さん)


夫妻の1年中の衣類を収納。掛ける服の長さに合わせ、引き出し部分は段差をつけている。
夫妻の1年中の衣類を収納。掛ける服の長さに合わせ、引き出し部分は段差をつけている。
まるでショップのディスプレイのよう。
まるでショップのディスプレイのよう。
屋根なりの天井が落ち着きをもたらす主寝室。奥がウォークインクローゼット。壁を珪藻土にしてカビを予防。
屋根なりの天井が落ち着きをもたらす主寝室。奥がウォークインクローゼット。壁を珪藻土にしてカビを予防。
子供部屋の収納。「子供たちと一緒に片づけて、子供が片づけやすいところに配置するのがキレイをキープするコツです」(絵美香さん)
子供部屋の収納。「子供たちと一緒に片づけて、子供が片づけやすいところに配置するのがキレイをキープするコツです」(絵美香さん)


2階のバスルーム。窓のある落ち着いた空間は慶さんのお気に入り。「休みの日には音楽を聴きながらのんびり入ることも。お風呂の時間が長くなりました」
2階のバスルーム。窓のある落ち着いた空間は慶さんのお気に入り。「休みの日には音楽を聴きながらのんびり入ることも。お風呂の時間が長くなりました」
アンティークショップを探しまわったアイアンの取っ手たち。「タオル掛けは幅に差をつけることで、掛けたタオルに隙間ができ、乾きやすくなります」(絵美香さん)
アンティークショップを探しまわったアイアンの取っ手たち。「タオル掛けは幅に差をつけることで、掛けたタオルに隙間ができ、乾きやすくなります」(絵美香さん)
1階の洗面所。絵美香さんの好きなショップを参考にしたそう。深みのあるグリーンの壁がポイント。1階も2階も壁付き蛇口で、メンテナンスを考慮した。
1階の洗面所。絵美香さんの好きなショップを参考にしたそう。深みのあるグリーンの壁がポイント。1階も2階も壁付き蛇口で、メンテナンスを考慮した。


多忙な絵美香さんのリラックスタイム。「包まれていると寝てしまうことも(笑)」
多忙な絵美香さんのリラックスタイム。「包まれていると寝てしまうことも(笑)」
田村邸
設計 LEVEL Architects
所在地 東京都世田谷区
構造 SE構法
規模 地上2階
延床面積 96.72m2