Style of Life
グラデーションの家内と外をつないで
街と暮らす住まい
仕事と暮らしをひとつに
都心にもアクセスがいい、静かな住宅街。そこで龍光寺建築設計一級建築士事務所を営む、龍光寺眞人さんと池守由紀子さん、そして二人のお子さんが暮らし始めた住まいを訪ねた。事務所兼住宅の建物の入り口は大きなガラス張りで、いわゆる戸建という感じはしない。「ここはなんだろう? という感じで見ながら通り過ぎる人もけっこういますね」と話す龍光寺さん。以前もこのあたりに家を借りて暮らしていたという。「ただ、仕事場が別だと子どものことも心配で仕事にも集中できなかったので、職住を一緒にしたいと思い土地を探し始めました」。なかなか空きが出ず、2年ほどかかったという土地探しも、やっと古い家屋のある24坪ほどの土地を購入し、自分たちで設計を始めた。そしておよそ8カ月の工事を経て今年完成した。
内と外のいい関係
設計にあたってまず考えたことは、自分たちの生活と街との距離感だったという。「この敷地内で事務所は別棟にする案もあったのですが、そうすると壁が増えてコストもかかるし、何より仕切って別世界をつくるようなことはしたくなかったんです。このあたりに長年住んでいますから近所の人などの雰囲気もわかっているので、街に向けてオープンに暮らした方が気持ち良さそうだな、というイメージがありました」と龍光寺さん。
入り口にガラス張りのサッシを選んだことや、入ってすぐの打ち合わせスペースは土間で外との段差がほとんどないことからも、内と外との境界がいい意味であいまいになっていることを感じる。
「家の中は下から上に向かって徐々にプライベートになっていきます。壁をつくると狭くなるのでなるべく仕切らず、窓は大きく取りました」。ドアを開けると土間の床と高い天井の開放感のあるゆったりとした打ち合わせスペース。その奥の半地下が夫婦の仕事場。土間から階段を上がるとダイニング、さらに階段を上がるとプライベートなリビングや子ども部屋や水周りとなっており、各スペースが壁ではなく階段によって分けられている。
さりげない親しみやすさを
こうして考えられた家には、近所の子どもや友人たちもよく遊びに来るという。そんな時は土間の打ち合わせスペースがパーティー会場に。「近所の子はガラス越しに中が見えるから遊びに来やすいみたいですね。それに若い人は共働きなどで日中家にいる人が少ないから、なんとなく安心感もあるのかなと。自分たちとしてはやっと仕事と生活を一緒にすることができて、子どもも見ながら仕事もするというのは効率としてはあまりよくないかもしれませんが、精神的な面では安定しましたね」と池守さん。
「子どもたちには、私たちの設計した家をいろいろと見せていたので、早く自分の家がほしかったみたいですごく喜んでくれています。でも、家の写真を携帯電話の待ち受け画面にしている僕がいちばん気に入っているかもれません」と龍光寺さんは嬉しそうに話す。