Style of Life

東西方向の抜けを活かす機能性とデザイン性を両立
光が通り抜ける住まい

東西方向の抜けを活かす 機能性とデザイン性を両立 光が通り抜ける住まい

機能性を備えた自由度の高い家

もともと横浜市内の築40年の持ち家に暮らしていたIさん一家。3歳になる長男がのびのびと過ごせるような環境を求めて、土地探しから家づくりをスタート。昨年、理想を叶えた3階建ての住まいを完成させた。
「最初は建て替えも考えたのですが、狭くて車が入らないというネックがあったため、周辺エリアで建売住宅も選択肢に入れて、探し始めました」とご主人。
出会ったのは、戸建て分譲として販売される予定だった3階建てを前提とした分筆敷地。夫妻はこの土地を購入し、注文住宅を建てることにした。
夫妻が設計を依頼したのは、土地を購入した不動産屋からの紹介で知った設計事務所「IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)」の井上亮さん。
「他のハウスメーカーにも依頼をしていたのですが、いろいろな制約があり、提案されたプランには違和感がありました。井上さんのプランは自由度が高い上に機能性、デザイン性も備わっていたところに惹かれました」と夫妻は声を揃える。

玄関にはウォークインのシューズクロークを設置。広々とゆとりある空間を確保している。
玄関にはウォークインのシューズクロークを設置。広々とゆとりある空間を確保している。
廊下から西側の和室を見る。窓から差し込む光によって、空間が心地良い明るさに。
廊下から西側の和室を見る。窓から差し込む光によって、空間が心地良い明るさに。
モダンテイストな設えの和室。「桐箪笥を置くことも考慮して、家全体のバランスを考えた和室にしたいと思っていました」(奥さま)。
モダンテイストな設えの和室。「桐箪笥を置くことも考慮して、家全体のバランスを考えた和室にしたいと思っていました」(奥さま)。
家の中央に配置した階段によって開放感と明るさが生まれた。寸法の調整にこだわり、階段幅は広く取りたいという夫妻の希望を叶えた。
家の中央に配置した階段によって開放感と明るさが生まれた。寸法の調整にこだわり、階段幅は広く取りたいという夫妻の希望を叶えた。

光が通り抜ける開放的な空間

1階と3階に水回りやバルコニーを割り振り、2階を明るく開放的なLDKとしているIさん邸。
最大の特徴は、敷地が東西に2面接道した抜けがあること。井上さんはこの東西方向の抜けを活かし、光が通り抜ける開放感な空間づくりにこだわった。
「3階建てにすると、駐車場の間口が狭くなりがちなのですが、車を入れやすいように広く取っています。あわせて玄関も利便性を考慮し、広々とした空間を確保しています。また、1階部分が暗くならないように、奥の和室から入る光が玄関や駐車場に抜けるようにして、明るい空間を目指しました。さらに中央に吹き抜けを兼ねた階段を設置したことで、居住空間の広さと明るさを確保しています。抜けた空間があることで閉塞感がないのが特徴です」(井上さん)。

機能面では、ガス入りのペアガラスや断熱性能の高い低炭素住宅を採用。また、空調は第一種換気を設置し、内外の気温差が大きい場合でも、換気で失う熱量を少なくすることができる。耐震面では、最高等級である「耐震等級3」を取得している。
「開放感を維持しつつも、耐震のために壁の枚数を増やして厚くするのが大変でした。他にも斜線の制限など厳しい制約のなかで、どこを広くし、どこを閉じるか、かつ収納やロフトのスペースをどこに作るかなど、最大限に空間が使えるように検討していきました。そのため、本当に余っているところがないくらい、すべてを詰め込んだ感じです(笑)」(井上さん)。

吹き抜けを兼ねた階段と東西方向の抜けによって、開放的で明るい2階LDK。床材にはアルダーを採用し、温かみのある雰囲気に。「Iさんがもともと持たれていた家具や家電製品のテイストと合うような床材を選びました」と井上さん。
吹き抜けを兼ねた階段と東西方向の抜けによって、開放的で明るい2階LDK。床材にはアルダーを採用し、温かみのある雰囲気に。「Iさんがもともと持たれていた家具や家電製品のテイストと合うような床材を選びました」と井上さん。
収納が多く使い勝手の良い「GRAFTEKT(グラフテクト)」のキッチンを導入。
収納が多く使い勝手の良い「GRAFTEKT(グラフテクト)」のキッチンを導入。
開口部からの光が、可能な限り薄く華奢なつくりにしたという階段のすき間から差し込み、家全体を明るくする。
開口部からの光が、可能な限り薄く華奢なつくりにしたという階段のすき間から差し込み、家全体を明るくする。
ご主人が特に気に入っているというリビング。青い壁紙とマッチするワインレッドのソファは井上さんセレクト。天井部にはスピーカーを配し、迫力のある音響で映画鑑賞を楽しんでいるという。
ご主人が特に気に入っているというリビング。青い壁紙とマッチするワインレッドのソファは井上さんセレクト。天井部にはスピーカーを配し、迫力のある音響で映画鑑賞を楽しんでいるという。
将来的にご長男の勉強用スペースとして活用するために設けたワークスペース。自然の温もりを感じられるように木の素材で設えた。
将来的にご長男の勉強用スペースとして活用するために設けたワークスペース。自然の温もりを感じられるように木の素材で設えた。

コロナ禍でもストレスのない暮らし

Iさん夫妻がこだわったのは内装だけではなく、外壁も汚れが目立ちにくい素材を使用することを井上さんに要望した。
「家の前がバス通りのため、周りを見てみると排気ガスなどで汚れてしまっているお家も多かったんです。井上さんに相談したところ、外壁の素材として、SOLIDO(ソリド)を提案してもらいました」と奥さま。井上さんは「もともとは汚れないコーティングのある素材を検討されていたのですが、そうすると見た目が良いものがなかったんです。そこで、ある程度汚れが目立たない、あるいは汚れても気にならないという方向で素材を選びました」と振り返る。

この住まいでの暮らしが始まって、もうすぐ1年が経とうとしているIさん一家。コロナ禍においてもストレスを感じることなく過ごすことができているという。
「心地良く過ごすことができています。特にリビングはとても気に入っているスペースです。天井も高いので、ソファに座ると、窓から隣の家が見えなくなり、外からの視線を気にすることなく、くつろげます」とご主人。奥さまも「外出自粛の期間中は子どもと粘土やペーパークラフトで遊んでいました。前の家だったら、多分大変だったと思います」と話す。

裸足で駆け回るお子さんを笑顔で見守りながら、暮らしぶりを語る夫妻の様子からも、新たな住まいでの充実ぶりが伝わってくる。理想を叶えた心地良いこの家で、これからも家族の歴史を重ねていくことだろう。

屋根の形状を活かした勾配天井が特徴的な3階寝室。南側にベランダを設けている。
屋根の形状を活かした勾配天井が特徴的な3階寝室。南側にベランダを設けている。
ご主人の書斎。将来的には子ども部屋として活用する予定。
ご主人の書斎。将来的には子ども部屋として活用する予定。
Iさん邸外観。外壁には汚れが気にならないSOLIDO(ソリド)を採用。「汚れても経年変化による風合いが楽しめればいいなと思います」(Iさん夫妻)。
Iさん邸外観。外壁には汚れが気にならないSOLIDO(ソリド)を採用。「汚れても経年変化による風合いが楽しめればいいなと思います」(Iさん夫妻)。

Iさん邸
施工 株式会社鬼塚工務店
意匠設計 Inoue Yoshimura studio Inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)
構造設計:川田知典構造設計
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上3階建
延床面積 約110㎡(駐車場除く)