Style of Life

工房併設の住まい 木の温もりと開放感にあふれる
のびやかなLDK空間

工房併設の住まい 木の温もりと開放感にあふれる のびやかなLDK空間

工房を兼ねた理想の家づくり

本業の看護師の仕事のかたわら、登山用品の製作・販売を行う佐山さんが目指したのは、奥さんと1歳のお子さんの家族3人が心地よく暮らせる住居と自身のブランド「SAYAMA works」の工房を兼ねた家。2019年末から家づくりをスタートし、今年5月八王子市に理想を叶えた住まいを実現させた。

佐山さん夫妻が設計を依頼したのは、ディンプル建築設計事務所を主催する堀泰彰さんだ。
「堀さんとは、2018年のお正月に登った東京都最高峰の山・雲取山の山荘で出会いました。そのときは、お互いに素性を明かさず、日本酒を飲みながらお話ししただけだったのですが、その後SNSを通じて交流をもつようになりました。HPで拝見した堀さんの手がけた事例がどれも素敵だったことに加え、 “山”という共通の趣味があったため、イメージも共有しやすいのではと思い、家づくりをお願いしました」(佐山さん)。

正面外観。左側が住居、右側が工房の入り口となっており、中からは玄関土間を通じて行き来できるようになっている。
正面外観。左側が住居、右側が工房の入り口となっており、中からは玄関土間を通じて行き来できるようになっている。
東側外観。連続する2つの切妻屋根によってリッジライン(山の尾根)を表現した。
東側外観。連続する2つの切妻屋根によってリッジライン(山の尾根)を表現した。
白と木を基調としたシンプルなデザインの内装。
白と木を基調としたシンプルなデザインの内装。
1階洗面スペース。白と黒のコントラストがシンプルながらも洗練された印象を与える。
1階洗面スペース。白と黒のコントラストがシンプルながらも洗練された印象を与える。
1階の主寝室。窓からはたっぷりの光が差し込む。
1階の主寝室。窓からはたっぷりの光が差し込む。
階段ホールから2階を見上げる。視線の先には、LDKとつながるテラスが見える。
階段ホールから2階を見上げる。視線の先には、LDKとつながるテラスが見える。

切妻屋根がつくる開放感のあるLDK

家づくりにあたり、佐山さんと堀さんは土地探しからスタート。住居とともにSAYAMA worksの工房兼ショップを併設するため、どちらの用途でも両立できることをポイントに土地を選んだ。
「災害リスクなどを考慮しながら、交通アクセスのよさも重視し、高台に立地するこの場所になりました。国道に面していますが、車の往来が激しくなく落ち着いた雰囲気だったので、住居としても、店舗としても理想的な場所でした」(佐山さん)。

プラン作成において、夫妻が要望したのは、「のびやかに過ごせる生活空間」。佐山さんは「夫婦ともに身長が高いので、以前の住まいでは窮屈に感じることが多かったんです。堀さんには身長に合わせたスケール感、そして風通しのよさや開放感のある空間を要望としてお伝えしました」と語る。堀さんは夫妻の要望をもとに、1階に主寝室、浴室や洗面室などの水回り、工房を設置、2階にメインの生活空間となるLDKを設けたプランを作成。
ポイントとなったのは、佐山邸を印象づける連続する二つの切妻屋根だ。「リッジラインをイメージしたこの二つの切妻屋根は45度の角度で重なっており、内部空間にもそのまま生かされています。そのため、LDKは間仕切らずにつながりのあるワンルームでありながらも、ゆるやかに分節されています。また、天井にも高さが生まれ、視線が抜けるおおらかで開放的な空間が生まれました」(堀さん)。

光が通り抜ける開放感のある2階LDK。
光が通り抜ける開放感のある2階LDK。
東側のキッチン方面を見る。「道路に面した東側には、視線の抜けを意識して大きな窓を設けています」と堀さん。
東側のキッチン方面を見る。「道路に面した東側には、視線の抜けを意識して大きな窓を設けています」と堀さん。
家族の交流の中心となるリビング。「遊ぶスペースも広くなったので、子どもも楽しそうに過ごしています」と佐山さん。
家族の交流の中心となるリビング。「遊ぶスペースも広くなったので、子どもも楽しそうに過ごしています」と佐山さん。
垂木現しが美しい天井。「なるべく自然の雰囲気が感じられるように、木の質感のある空間を目指しました」(堀さん)。
垂木現しが美しい天井。「なるべく自然の雰囲気が感じられるように、木の質感のある空間を目指しました」(堀さん)。
将来的には子ども部屋として使用する予定の洋室。立派な現し梁が空間にアクセントを与える。
将来的には子ども部屋として使用する予定の洋室。立派な現し梁が空間にアクセントを与える。

念願の実店舗をオープン

佐山さんがSAYAMA worksを始めたのは2016年。もともと登山が趣味だった佐山さんは、当時盛り上がりをみせていたガレージブランドの波にのり、一からミシンを覚え、サコッシュ作りから登山道具の製作をスタートしたという。
「はじめは仲の良いアウトドアショップの店員さんからのオーダーだったのですが、次第に別の人からもオーダーされるようになり、オリジナルブランドの開設に至りました。2017年頃からはバッグの製作もはじめ、山岳レースとして有名なトランスジャパンアルプスレースの選手の方にも実際に使用していただいています」(佐山さん)。

“山”を通じて出会った堀さんとともに、理想の住まいを実現させた佐山さん一家。この住まいでの暮らしが始まってから約半年が経つ。「家族3人のびのびと暮らすことができています。堀さんと打ち合わせを重ねながらつくりあげていった、という過程があるからこそ、この住み心地が生まれたのではないかなと思っています」(佐山さん)。
また、今年11月からはSAYAMA worksの実店舗としての営業を本格的にスタートした。
「これまでWEBストアを中心に展開していたSAYAMA worksの製品を直に手に取っていただける実店舗のオープンは念願だったので、とても嬉しいですね」と微笑む佐山さん。
これからも「家族のやすらぎの住まい」と「SAYAMA worksを支える工房」を両立したこの家で佐山さん一家の豊かな暮らしが紡がれていくことだろう。

1階に設置したSAYAMA worksの工房兼ショップ。展示会などのイベントも計画しているという。
1階に設置したSAYAMA worksの工房兼ショップ。展示会などのイベントも計画しているという。
軽量で強度の高いティッシュケースや収納ポーチなど、機能性の高いアイテムが豊富なラインナップで用意されている。
軽量で強度の高いティッシュケースや収納ポーチなど、機能性の高いアイテムが豊富なラインナップで用意されている。
壁面には有孔ボードを採用。佐山さんが機能面・デザイン面を徹底的にこだわったというバックパックなどがディスプレイされている。
壁面には有孔ボードを採用。佐山さんが機能面・デザイン面を徹底的にこだわったというバックパックなどがディスプレイされている。

佐山邸

設計 ディンプル建築設計事務所

所在地 東京都八王子市

構造 木造2階建