Style of Life

薪ストーブのあるピットリビング 外とのつながりがくつろぎを生む
“共有”の空間と時間を作る家

薪ストーブのあるピットリビング 外との繋がりがくつろぎを生む “共有”の空間と時間を作る家

思いつきから始まったこだわりの詰まった家づくり

マンション住まいだった鵜久森夫妻が戸建てを建てようと思い立ったのは突然だった。「賃貸で毎月お金を払うなら家を建てたほうがいいなという話になったのがきっかけです」と話す夫の将隆さん。住んでいた地域に条件の合う土地を見つけ購入し、施工会社探しが始まった。そこで出会ったのが千葉県を拠点に新築、増築、リノベーションを手掛けている木ごころだった。「施工事例が良かったのはもちろんですが、複数社行った中で木ごころさんが1番丁寧に対応してくれたので決めました。最初の提案も間取りだけでなく、3Dモデルを作ってくれたりイメージしやすかった。家づくりへの情熱もすごくて、ここなら最大限やってくれそうだなと」と将隆さんは振り返る。
木と鉄を組み合わせたインダストリアルな空間づくりを目指した家づくり。一番苦労したところを尋ねると「全て」と答えるご夫妻の言葉通り、随所にこだわりが散らばっている。

ピットリビングや片持ち階段、吹き抜けの効果で圧迫感のない軽やかな空間のリビング。
ピットリビングや片持ち階段、吹き抜けの効果で圧迫感のない軽やかな空間のリビング。
炎がよく見えるようにと、窓が大きいホンマ製作所の薪ストーブを選んだ。
炎がよく見えるようにと、窓が大きいホンマ製作所の薪ストーブを選んだ。
手前のリビングとダイニングキッチンが緩やかにつながる。中庭から入る日差しが心地よい。
手前のリビングとダイニングキッチンが緩やかにつながる。中庭から入る日差しが心地よい。

出迎える開放的なピットリビングと薪ストーブ

玄関を入ってすぐ目に入るのは開放感のあるピットリビングと薪ストーブ。「冬に薪ストーブを焚いて、ここで寝転ぶのが一番好き」と笑顔で話す妻の麻記子さん。当初はペレットストーブを検討していたが、調べていくうちに薪ストーブに行き着いた。「薪ストーブは炎が美しいんですよね。よく2人で炎を見ながら座っています」と将隆さん。ピットリビングの段差は座りやすいようにと30cmを要望。段差には収納棚を設け無駄がない。
ピットリビングに加え、3階までの吹き抜けや片持ち階段が空間を軽く演出し、家に入った時の開放感が心地よい。片持ち階段は木ごころに無茶を言ったと振り返る将隆さん。「普通、鉄を入れるところを、木だけにしてもらいました。階段下を収納に使う事も考えましたが空間がもったいないし、オブジェにしたいと思って」。

「住宅街でも気をつければ薪ストーブを使えますよ。本当におすすめです」と将隆さん。
「住宅街でも気をつければ薪ストーブを使えますよ。本当におすすめです」と将隆さん。
厚みのある木製の片持ち階段。数センチ出した壁に階段を埋め込んだ。
厚みのある木製の片持ち階段。数センチ出した壁に階段を埋め込んだ。
同時に複数人が利用できるようにと玄関は広め。右側に収納スペースがある。
同時に複数人が利用できるようにと玄関は広め。右側に収納スペースがある。
玄関のアクセントになる朱色の壁はご夫婦の提案で自ら塗った。塗装工場に行き、色のサンプルをもらい、塗り方を指導してもらったという。
玄関のアクセントになる朱色の壁はご夫婦の提案で自ら塗った。塗装工場に行き、色のサンプルをもらい、塗り方を指導してもらったという。
玄関を挟んでリビングの反対側に浴室がある。全体に温かみを出すため天井を木張りに。
玄関を挟んでリビングの反対側に浴室がある。全体に温かみを出すため天井を木張りに。
道路境界線から2mあるセットバック部分を生かし坪庭にした。ライトアップされた楓を見ながら湯船に浸かるのがご夫妻揃ってお気に入り。
道路境界線から2mあるセットバック部分を生かし坪庭にした。ライトアップされた楓を見ながら湯船に浸かるのがご夫妻揃ってお気に入り。

夫妻で作って食べて過ごすキッチンが中心の家

ご夫妻が最もこだわったのはキッチン。2人とも飲んだり食べたりするのが好きで、麻記子さんは夫の誕生日にフランス料理のフルコースを振る舞うほど。そんなご夫妻がデザインをお願いする上でテーマとなったのは“キッチンが中心の家”だった。「長い時間いるキッチンを中心にして、孤立せずつながっているようなイメージがいいとお願いしました」と麻記子さん。結果、キッチンは緩やかなゾ-イングによって、リビングとつながる食事の場というより、リビングとつながる1つの居場所として、より広い空間として認識できる場となった。
造作キッチンには強いこだわりがある。一緒に料理をすることが多いため、同時に水場を使えるようシンクを2ヶ所設けた。高さも2人が作業しやすいよう何度もシミュレーションをして決めている。
さらに麻記子さんの提案でキッチンスペースの床を15cm下げた。「夫が料理せずに座っている時も、料理をしている私と目線が合って会話がしやすいようにしたいなと思って」。違うことをしていても同じ空間にいる人が自然とつながる工夫がされている。

床から天井まである窓は室内に陽を送るだけでなく、キッチンに立つ人に開放感を与える。
床から天井まである窓は室内に陽を送るだけでなく、キッチンに立つ人に開放感を与える。
「孤立しない一番気持ちの良い空間にしたかった」という麻記子さんの要望通り、陽の入る明るい空間になっている。
「孤立しない一番気持ちの良い空間にしたかった」という麻記子さんの要望通り、陽の入る明るい空間になっている。
天板は木、デコリエ、ステンレスの3素材で作られた。特に厚さ5mmあるステンレス無垢板は、将隆さんが近所の工場に出向いて制作してもらった特注品で思い入れが強い。
天板は木、デコリエ、ステンレスの3素材で作られた。特に厚さ5mmあるステンレス無垢板は、将隆さんが近所の工場に出向いて制作してもらった特注品で思い入れが強い。
ここで豆を挽き、ピットリビングで淹れたコーヒーを飲みながらくつろぐ。
ここで豆を挽き、ピットリビングで淹れたコーヒーを飲みながらくつろぐ。
食器棚は電動式で開閉が便利。料理好きならではのこだわり。
食器棚は電動式で開閉が便利。料理好きならではのこだわり。
リビングとキッチンに面した中庭。年中、屋内に陽が入るよう中庭と道路を隔てる壁の高さが調整されている。
リビングとキッチンに面した中庭。年中、屋内に陽が入るよう中庭と道路を隔てる壁の高さが調整されている。

“共有”を重視する閉塞感のないプライベート空間

階段を上がると、吹き抜けを中心に回遊できる空間が広がる。仕事をしたり読書をしたり思い思いの時間を過ごす共有空間はご夫妻の希望だった。「多く部屋を作るよりも、共有スペースを増やしてほしいとお願いしました。壁に設置した棚も誰が何を置いてもいいという考えで。妻の本を僕が読んだりして会話が生まれたり。そういったふれあいのきっかけにもなるかなと」と話す将隆さん。各部屋の収納を少なくした分、共有スペースでの収納を多くしたのは、共有を増やす意図に加え、物が散逸しないようにという考えもある。
鵜久森家は寝室を除き、窓にカーテンがない。道路に接する北と南側に窓を極力設置しない代わりに、天井のはめ殺しや中庭を設けることで、住宅街にありながら、充分な採光をしつつ閉塞感を感じさせないプライベートな空間を作り上げた。
住む人、訪れる人、誰もが同じ空間を共有したいと思わせる魅力が鵜久森邸にある。

天窓から室内に陽が入り、天気が良い日は、陽が落ちるまで電気をつけなくていいほど。将隆さんが立つ先に寝室があり、階段は屋根裏につながる。
天窓から室内に陽が入り、天気が良い日は、陽が落ちるまで電気をつけなくていいほど。将隆さんが立つ先に寝室があり、階段は屋根裏につながる。
寝室の中心にはオーク材で作られたキングサイズ以上の造作ベッドがある。右奥には季節外れの服を収納するスペースを設けた。
寝室の中心にはオーク材で作られたキングサイズ以上の造作ベッドがある。右奥には季節外れの服を収納するスペースを設けた。
2階には寝室とトイレの他に、使用していない部屋があり将来どのように使うか検討中。
2階には寝室とトイレの他に、使用していない部屋があり将来どのように使うか検討中。
吹き抜け側に作られた読書用の机。「こっちで読むと足をかけられて楽なんです」と笑顔で話す麻記子さん。
吹き抜け側に作られた読書用の机。「こっちで読むと足をかけられて楽なんです」と笑顔で話す麻記子さん。
北と南の両側に道路がある土地の特徴を活かすため玄関を西側に。「両方向から出入りができて、敷地に入ってから玄関までのアプローチを長く取りたかった」と将隆さんのアイデア。
北と南の両側に道路がある土地の特徴を活かすため玄関を西側に。「両方向から出入りができて、敷地に入ってから玄関までのアプローチを長く取りたかった」と将隆さんのアイデア。

設計 株式会社 木ごころ
所在地 千葉県船橋市
構造 木造軸組工法
規模 地上2階
延床面積 108㎡